ヒーローランキング最下位の俺、今日も力を隠して呑気に生きる

チドリ正明

第1章 堕落したヒーロー

第1話 昼夜逆転はいつものこと

 真赤な夕日を浴びて目が覚めた。


「……周回ゲーに沼ってついつい夜更かししちまった」


 俺はボサボサの銀髪を揺らしながらもベッドから這い出ると、一つ欠伸をして壁にかけられた時計を眺めた。


 時刻は既に夕方の五時。

 夜通しで昼までゲームを続ける不摂生な日常を過ごす俺からすれば、特に違和感のない時間だった。


 数時間後には夜も更け始めるし、今日も特に予定はない。

 ただ流石にぶっ通しでモニターを見続けたせいか、少しだけ目が疲れたような気がする。


 心苦しい決断になるが、今日のところはゲームをせずにのんびり過ごすとしよう。


「……」


 俺はテレビをつけてニュース番組を観ることにした。

 ぼんやりとした頭を働かせながら適当に情報を聞き流す。


『またも快挙です。ここ数日世間を騒がせていたモンスターの大群が、昨日ヒーローギルドから派遣されたヒーロー連合によって討伐されました。連合のリーダーであり、ヒーローランキング第9位の月光のミカヅキさんの活躍が大きかったようです。続いては昨今のモンスターの討伐状況について、分布図でご説明いたします———』


 長々と興味のない内容だったので、俺はすぐにリモコンを手に取りチャンネルを変えた。


「立派なこった」


 俺は役に立つ週間天気とか、当たるかわからない占いとか、幼児向けの可愛いアニメとかが見たいのに、どのチャンネルも世界中で蔓延るモンスターとの戦いの模様が報じられ、ヒーローたちの激闘が映し出されるだけだった。


 たった今別の番組にチャンネルを変えたのにも関わらず、こっちもこっちで似たような内容だ。

 

 ピッ……俺は二度目のチャンネルチェンジをした。


『ヒーローチップス! 発売中! ヒーローギルドに所属する全てのヒーローがカードになって君の手に! コンプリートしてくれよな!』


 今度は謎のCMだ。

 見覚えがあるようなないような、有名そうな雰囲気を醸し出したたくさんのヒーローが、画面の中でポーズを決めている。


「……コンビニ行こ」

 

 いよいよ見る気が失せた俺はテレビを消すと、そこら辺に転がっていた黒いスウェットに履いて外へ出た。ちなみに、部屋の中では基本的に下着一丁のスタイルである。

 おまけに部屋の鍵なんてわざわざ閉めたりしない。盗られて困るものはパソコンくらいしかないが、配線が入り組んで絡まっており簡単には盗られない。


「腹減った」


 外を歩くと腹の虫が鳴いた。

 寝起きで腹が減った。


 ヒーローギルドから金が振り込まれるのは明日か……。

 今月はソシャゲに課金しすぎて金欠気味だし、財布の中には千円札が一枚と小銭が少々、深夜の間食のことを考えるなら、五百円以内にセーブせねばいかんな。

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