安全地帯

簡単だった──。

香川県と長野県──県が、役所が違えば、ケースワーカーが違えば──差が出る。

平等であるべき法は、案外と曖昧だ。

2DKの外国人ばかりが住む、夏場になると共用スペースでBBQが始まる、如何にも外国の料理の香りのするアパートでの生活保護の暮らしがスタートした。

心療内科で就労不可の証明をもらい、やり、衣食住には困らなかった。

昼間から酒を飲んだ、飲んだくれた──。

フルニトラゼパムの錠剤を粉末状に砕き、オブラートで摂取してみたり、鼻炎薬のスプレーの中身を抜き、水に溶かしたフルニトラゼパムを代わりに入れ、鼻から吸引してみたり、ツイッターから現在では処方される事のない希少な薬を違法に入手してみたり。

酒を飲んだ状態で、マジェスティ125(コマジェ)を運転し、縁石に乗り上げ、僕は宙に舞った。

オンナとの関係もいい時とわるい時があり、精神的に参った。

衣食住に困らぬ生活基盤を手に入れたのに満足はしなかった。明日の暮らしもままならぬ者も居るのに。贅沢なのか精神を病んでいるのかーー。

生きる事になんの意味も価値も目的も楽しみも、何も見出せず2年と数ヶ月が経った。


"オーバードーズ"僕は生きている人間たるものの一線を超えてしまった。

フルニトラゼパム、レボトミンを100〜200錠、否、もっと、か──。

ストックしてあった、中でも作用の強い錠剤をスポーツドリンクでありったけ流し込んだ──。


「もう生きた、死ぬほどに。新たな世界、未知の領域、死後の、臨死体験くらいせねば見れない景色。それが堪らなく見たく、感じたい」


合鍵を渡していた彼女に見つからないよう内側のドアのチェーンを掛けて僕はオーバードーズした。

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