堕落

生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としている。


僕は23歳の時点で一人暮らしをしていた。

貯金も収入もなかった。

仕事を──人に指図され、労働──社畜なんてまっぴらごめんだった。


"生活保護"僕は手を染めた。


「貯金残高が8万円ですか。まだ申請する事は難しいです」


僕は散財した──。


「家賃の額を証明出来るもの、全ての銀行口座の残高証明、現金、印鑑を持参して下さい」


僕は取り調べ室みたいな部屋で財布から小銭を出し、職員は1円単位で現金を数え、7〜8枚の申請用紙に記入していった。


家賃が3万3千円、約10万円から差し引いてそれが生活費。

そして担当ケースワーカーが決まった。

高松市役所の中には個室の職業安定所のようなものが併設されている。


「どの職種にしますか?就労指導というものがあるので何か仕事をしながらその収入が保護費に満たない場合はその額を支給します」


生活保護の誤解は沢山世の中にあるのですが、先ず、"働けない場合"を除き必ず何かしらの仕事はしないといけないのです。

見つからない場合は職業安定所で求人を探しました、というサインをしてもらい、それをケースワーカーに提出し、また市役所で仕事を探すという面倒事をやっていた。

僕は求人票からテキトーに選び、わざと落ちるような面接をし、凌いでいたがネットで調べるうちに良い策を見つけた。


心療内科で鬱っぽいと言って薬を処方してもらい、通い詰め、就労不可という証明を医者にさせた。

これをケースワーカーに提出すると就労指導から解放されるーーされた。


「おっしゃぁー!これで最高無敵。汗水垂らして働いて自分の自由な時間もまともにないヤツばっかだけどバカじゃねぇの笑。生活保護受給者っていうレッテル──つまりプライドが邪魔して時間貧乏な人生送ってる。せっかく福祉制度の整った先進国に生まれたんだから使わないと損だろ。

仕事のストレスで自殺?バカじゃねぇの?辞めちゃえば良いじゃん嫌なんだったら。頭悪すぎ虫湧いてる草生えるw

とりあえず酒買おう、んでもって朝から飲んでダイレックスで安い肉買って焼肉でもすっかなー。

親に通知が行くからちょっと嫌だったけど、やったもん勝ち。もう受給してるだもん。

しっかし遊ぶ相手居ねーなあ。みんな昼間働いてるもん。あー、馬鹿らしい。結婚して子供産んだ金かかったり、好きな車のため、家、服、趣味、こんな資本主義の資本家が労働を活性化させる為に用意したかりそめの娯楽に貴重な時間を労働に費やしてホント正気かよ世の中」


僕はアルコールと病院で処方された睡眠薬を繰り返し身体が疲れていた──。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る