快楽主義の片鱗

途方にくれていた──。

探すと"職業訓練給付金"というものがあるらしい。

職業安定所に出向くと、無料で学校に通いながらなんと月10万円の給付金が入るという夢のような制度がこの国にはあるのだ。


「うわぁー、ここみんな高校出たての18歳の子ばっかり。ひとり俺と同じ制度使って通う20歳のやつもいるらしい。クラスは12人で女子が2人。やってけるかなー。」


「私、貞操観念緩いんだよね」


「へぇ〜、そうなんだ」


なんの事か分からなかった。

僕は23歳で車も持っていた。

僕はクラスの女子、18歳の子とバーで酒を飲んだ後、ドライブしていた。

海辺に着き朝まで語り明かしていた。

無料で入学した専門学校の勉強は難しく、いつしかその女の子とLINEでやり取りするようになっていた。


「下の名前でよんで!」

「ぎゅーして!」


彼女はクラスでマドンナ的存在でクラスの男子達は皆、一目置いていて、多分みんな惚れていた。

彼女は成績優秀、気配りも出来、優等生で完璧だった。

正直そのギャップに驚いた。

僕は好きになってしまった。


「俺、みゆちゃんの事好きになっちゃった」


「うん……私、彼氏とかはあんまり欲しくないだ……」


後日僕はその子と酒を飲みながらSEXをした。

要はセックスフレンドとしての相手だったのだ。

僕とは正反対の真面目な彼女がそんなにも淫乱だとは──なんとも女は怖い。


「うわー!席替えで隣の席じゃん!

クラスの皆んなはこんな関係って知らないもんなー。なんか変なドキドキがあるなあ。

今日も昼飯は1階の多目的ホールで一緒に食べる感じだし。いやぁ最高じゃん給付金制度!」


浮かれていた──人生そう上手くはいかない。

その子からのメッセージが返って来なくなった。

いつもの一緒に昼休みを過ごす習慣も無くなっていった。

気まずくなった──クラスで同じ空間に居る事がどうにも耐えられなくなっていた。

他の男子達とも打ち解けられた頃、僕は自主退学を選んだ。

これで収入はなくなり無職となる。

どの仕事も長くは続かない。


"最高で最低な生き方"を僕は選ぶことにした──。


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