第36話 アリシアvsフリージア

「おい、何て面してんだよ」


「あら、これは懐かしい顔ですわね」


 生徒会選挙まであと3日。

 そんな中、アリシアの姿は波打ち際にあった。


「他国とはいえ、姫様が1人じゃ危ねぇぞ」


「あら、意地悪なこと言いますわね。

 ところで、どうしてここが分かりましたの? フリージア」


「そんなの簡単だよ。小さい頃、お前とはよくここで一緒に夢を語り合ったからな」


 恥ずかしいからか、フリージアは目を合わせない。


「お前が悩んでたら大体、ここに来りゃ会える」


「へぇ。フリージアあなた、意外とロマンチストですのね」


「はぁ? うっせぇよ」


 押し寄せる波は、アリシアの前まで行っては止まり、行っては止まりを繰り返している。


「まぁ、いいから取れよ」


 そう言うと、フリージアは木剣を1本、アリシアの横に投げた。


「はぁ……私の晴れないこの気持ち、あなたが晴らしてくれるのですか?」


 雲に隠れた太陽は、程よく世界を照らしている。


 ちなみに、この太陽は人口太陽と呼ばれており、リベルタ国の最高傑作だ。


「ま、まぁな。

 こ、これでも一応、と、と、と、友達……だからな」


 照れた顔ながら、フリージアは剣を構える。


「はいー? 最後の方がよく聞こえなかったですわ」


 そして、そんなフリージアを見て、アリシアはバレないよう小さく笑う。


「チッ、二度と言わねぇからな……。

 ってか、さっさと立てや!」


「うふふ、可愛いフリージア」


 立ち上がったアリシアは、八相の構えで対峙する。


「私とフリージアは、ずっと前から親友ですわよ」


「なっ……! は、恥ずいわっ!」


 フリージアが油断したその瞬間、アリシアは地面を蹴った。


「あら? 珍しく隙だらけですわね」


「こ、この野郎、ほんとに姫か!?」


 アリシアの剣は、フリージアの手前で止まった。

 いや、違う。


「ギリセーフ」


 鬼力を纏ったフリージアの足が、正面から剣を受け止めたのだ。


「本当にあなたは、どんな身体の作りをしてますの?」


「へっ、特訓の末見つかった重大なバグに過ぎんわ!」


 フリージアが力強く押すと、アリシアは剣を引いた。


「おいおい、少し弱くなったんじゃねぇか?」


「うふふ、面白いことを言いますわね。

 まぁ確かに、あなたに手加減は不要ですわ」


 改めて、2人は剣を向け合う。


「鬼力解放ですわ」


「鬼力解放だ」


 2人の重たい鬼圧は、学園全体を僅かに揺らす。


「……んっ!? この鬼圧、間違いない……!」


 直後、生徒会室のドアが勢いよく開いた。


「シュリ先輩、今のって……!?」


 シュリとミエルは焦った様子で生徒会室を

 飛び出す。


「「アリシア会長の鬼力!!!」」


 その頃、海は激しく荒れていた。


「さぁ、いつでもいいですわよ」


「おーけい。精々頑張れよ、アリシアっ!」


 2人の鬼力がぶつかり合い、突風が吹き荒れる。


「グライリッヒ流剣術、狂乱の宴」


 実はこの技、アリシアがまだ小さい頃に、フリージアから得た発想で生まれた技である。


 狂乱の宴は、1度で2度の衝撃を相手に与える一風変わったアリシアの剣技。


金盞花きんせんか


 実はこの技、フリージアがまだ小さい頃に、アリシアから得た発想で生まれた技である。


 金盞花は、独特なステップで受け流しては攻めを繰り返すフリージアの剣技。


「なんだか、小さい頃を思い出しますわね!」


 (フリージア。あなたは昔から本当に優しいですわね)


「だろ? 沈んだ心には運動が1番だ!」


 (アリシア。お前は昔からほんとに……強すぎんだろうが!)


 金盞花の花言葉。

 それは、『変わらぬ愛』、『静かな思い』、『別れの悲しみ』、『寂しさ』である。


「うっかり我を忘れてしまいそうですわ!」


「おいおい、それだけは勘弁な!」


 それから2人は、ひたすら剣を交わしあった。


「はぁ、はぁ……綺麗な花びらですわね」


「ふぅ、ふぅ……そうだな」


 そして、気づけば30分が経過していた。


「そろそろ、終わりにしませんこと……?」


「ああ、もう動けそうにないわ……」


 2人は剣を置き、砂浜に寝転がっている。


「うふふ、本当に懐かしいですわね」


「ああ、そうだな。それに、あれ見てみろ」


「ええ、ずっと見てますわよ」


 空を指さすフリージア。


「そりゃ疲れる訳だよ」


「全く、今日は曇り予報でしたのに」


 隠れていた太陽は、いつの間にか優しい光でラゼルを照らしていた。


「もうすぐよ!」


「ま、待ってください……!」


 そして、ここでようやく、シュリとミエルは海辺に着いた。


「あっ、フリージア会ちょ……!」


「ちょっ、ちょっと!?

 シュリ先輩、しーっ、ですよ」


「えっ……?」


「あれ、見てください」


「……うん、そうだね。ミエル、戻ろっか」


「はい」


 そこには、手を繋いで気持ちよさそうに眠る、2人の姿があった。

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