第33話 決闘
次の日、1年廊下に行くと、Bクラスの前に人だかりが出来ていた。
初めはωを討伐した頭鬼を見に集まっているのかと思ったが、近づいてみるとどうやら違うらしい。
「うわっ、生徒会メンバーじゃん……だるっ」
「ア、アリシア会長!?……とシュリ先輩!?」
露骨に嫌な顔をするガヴィと、興奮した様子のハヴァ。
ここまで反応が違うと、普通に笑えてくる。
「なーにー、これ?」
「……シュリがいるってことは、生徒会の人たち……」
「ふーん、なんか強そうだね!」
「おい、暴力禁止だからな?」
「もーう、分かってるよ!」
夜鬼の声が聞こえたのか、シュリは頭鬼たちの方を見る。
(は・や・く・逃・げ・て)
そして、シュリの口は確かにそう言っている。
「なぁ夜鬼、もしかしたら戦えるかもしれないぞ?」
そう言うと、頭鬼はニヤリと笑った。
「えっ本当!? やったー!」
何か面白くなりそう。
頭鬼の脳はそう判断したのだ。
「……私は頭鬼に任せる……」
「まぁ、ここは一旦僕も乗っておくよ」
「な、なら私も」
ちなみに、影鬼と陰鬼の2人は、仲良く鬼望モールでお買い物中である。
「このワンピース可愛いの」
「確かに、影鬼にぴったりね!」
「ほんと? な、なら、今すぐ買ってくるの」
2人のイチャイチャはこれくらいにして、本題戻ろう。
「決まりだな」
すると直後、金髪の女子生徒が1人、頭鬼たちに近づいてきた。
その奥では、シュリが頭を抱えているのが見える。
「初めまして。生徒会長のアリシアです」
「初めまして。頭鬼です」
「ボクは夜鬼だよ!」
「……白鬼……」
「死鬼でーす!」
「それで、生徒会長自ら挨拶に来るなんて、何用ですか?」
これだけ生徒が集まっている時点で、生徒会長が1年生の廊下にいるのは相当珍しい。
これは明らかに何かある。
「はい、単刀直入に申し上げますわ。
私と決闘していただけませんか?」
「はぁ……やっぱこうなっちゃうよね」
驚きの声が上がる1年廊下。
しかし、頭鬼の答えは決まっている。
「はい、もちろんいいですよ。でも、戦うのは俺じゃないです」
「……はい?」
「こいつです」
「へへへ、よろしくね」
夜鬼はアリシアに握手を求める。
「ええ、構いませんわよ」
アリシアは優しく夜鬼の手を握った。
「「「ええええええええええええ!」」」
そんな訳で、夜鬼とアリシアの決闘が決まった。
「では、20分後に闘技場で」
「分かりました」
「楽しみにしてるねー!」
20分後、夜鬼とアリシアは闘技場で剣を向け合う。
「夜鬼さん、いえ、ここでは夜鬼様とお呼びした方がいいでしょうか」
「何それ、全然意味分かんなーい」
客席はすでに、多くの生徒で賑わっている。
「呼び方とかどうでもいいからさ、早くやろうよ!」
夜鬼の目にはもう、目の前の戦いしか見えていない。
真の戦闘狂とは、夜鬼のような者のことを言うのだろう。
「そうですか。
それでは夜鬼さん、ご指導のほどよろしくお願い致します」
「うん、よろしくねー!」
夜鬼は頭上に3つの光を灯した。
「これが消えたらスタートね!」
「ええ」
どういう意図がある決闘なのか、正直よく分かっていない。
ただ、これは学園トップクラスの猛者と戦えるチャンス。
学園のレベルを知るにはこれ以上ない機会だ。
「審判は俺がやろう」
そういえば、先程からメルサーの鋭い視線が頭鬼とアリシアに向けられている。
おそらく、生徒会長権限とか言って無理やり強行したのだろう。
「ルールは鬼術、体術、何でもあり。
ただ、殺すのは禁止な」
その直後、メルサーは息をつき、視線を逸らした。
(ふーん、アリシアのことを心配してたのか。これは何かあるな)
頭鬼は顔を覆って笑った。
「ルールの方、しっかりと把握致しましたわ。
ですが、間違えて殺してしまったらごめんなさいね」
「こちらこそ!」
殺気と殺気のぶつかり合い。
それはまるで、殺し屋同士の戦いのようだ。
「気にすることはありませんわ。
全力でやり合いましょう」
2人は瞬きのタイミングすら揃え、一切の隙を見せない。
「では……」
「じゃあ……」
「「始めようか(ましょうか)」」
掛け声と同時に、2人は地面を蹴った。
「剣は苦手なんだけど、特別だよ?」
「あら、とてもそんな風には見えませんわ」
今の一瞬で、グラウンドに大きな窪みが出来た。
「えへへ、嬉しいなー」
「私も全力で戦えて嬉しいですわ」
鬼力を全身に纏い、狂ったように剣を振るう2人。
「グライリッヒ流剣術、
神々しい光竜がアリシアの剣を包み込む。
「この技はずるい気がして嫌いなのですが、今日は特別な日ですので」
「うん、最高だよ……! じゃあボクも、鬼聖融合鬼術、
どうやったのかなど、詳しいことはさっぱり分からないが、夜鬼は鬼術を剣に組み込んだ。
「ボクのも綺麗でしょ?」
「ええ、すごく綺麗ですわ……!」
光り輝く鬼術円が夜鬼の剣を回る。
「これくらいならまぁいいか」
鬼力の圧に押し潰されそうなグラウンド。
しかし、頭鬼は1歩も動かない。
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