第24話 謎の少女

「えーっと、どれどれ。俺のクラスは……」


「……あそこ……」


 白鬼の指さすAクラスには、6人の名前が並んでいた。


 ちなみに、シュリ、アリシア、フリージアと戦った、リビア、ガヴィ、マウントの3人は、お隣のBクラスに割り当てられたようだ。


「わーお、Aクラスか!

 なんかエリートっぽいじゃん!」


「確かに悪くないの」


「まぁまぁね!」


「でもほんとに、みんな一緒でよかったね!」


 その時、5人は一斉に分鬼を見た。


「えっ、なになに!?

 私なにかおかしなこと言った!?」


 5人が分鬼を見たのはなんとなくであり、そこに深い理由はない。


 ただ、元の分鬼に戻ったという事実に適応するためには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「うーん……でも、明らかにまとめられてる気がするの」


「そうよね。

 あたしと影鬼は、今日が初見のはずだし……」


「まぁまぁまぁまぁ、とりあえず行こうよ!」


 疑問は残るが、一先ず校舎に向かう6人。


「ここ、かな」


 靴から上履きに履き替えた頭鬼たちは、『A』という札が掛けられた教室の前にいた。


「うわっ、なんか入るの緊張するな。

 死鬼頼むよ、こういう目立つ系得意だろ?」


「い、いや、ぜ、全然得意じゃないよ……結構まじで」


 情けない男組。

 そんな2人を差し置き、白鬼は堂々と扉を開けた。


「……お先……」


「うおっ、まじか」


「す、すごいよ!」


 しかし、白鬼が扉を開けた次の瞬間、大量の生徒が教室から飛び出してきた。


「……あーれー……」


「な、なにが起きてるか分からないの……!」


「ちょっとなに……!?」


 気づけば、頭鬼たちは囲われていた。


「見たぜ、入学試験の映像!」


「いやー、まじで同じクラスになれて嬉しいよ!」


「あっ、あの、彼女っているんですか!?」


「ねぇ君、彼氏いる?」


「ほんとかっこいい!」


「まじでかわいい!」


 それはそれは、実に多種多様な反応だった。


「あの、俺ちょっと一旦……失礼します!」


 まさかのまさか、頭鬼は壁を走り、1番にその場を離れた。


「……あっ、頭鬼逃げた……」


「ぼ、僕を置いてくなんて許さないよ!」


 すかさず後を追う白鬼と死鬼。


「やばっ、私も早く逃げないと」


 きょろきょろと辺りを見渡す分鬼は、この状況に少し混乱しているようだ。


「仕方ないの」


「あっ、ちょっと!」


 影鬼は分鬼を抱え、影の中に姿を消した。


「なっ……!」


「今、完全に消えたよな……?」


「ああ……」


 1人取り残された陰鬼は、急いで近くの陰を探した。


 (まずい……あたしも早く逃げなきゃ……)


 しかし、多くの人に囲われているため、陰らしい陰が見つからない。


(あれ? もしかして、完全に詰んだのでは……!?)


「その時だった!……ってやつなの」


「影鬼!」


 突如背後から顔を出した影鬼に引っ張られ、陰鬼は影の中へと姿を消した。


「ふわぁー……。めんどめんど」


 その直後、赤い仮面を身につけた怪しげな男が現れ、生徒たちに声をかける。


「はいはーい、みんな何してんの。

 ST始めるよ」


「「「はーい」」」


 男の寝癖に触れることなく、生徒たちは席に着いた。


「あれ? そこらへん穴開いてるな。

 まさか休みか?」


 窓際1番後ろにある3人席が2つ、綺麗に空いている。

 どうやら、頭鬼たちの席は後ろらしい。


「いや、その、なんというか、さっきまでいたというか……」


「多分、私たちのせいで逃げちゃったというか……」


 下を向く生徒たち。

 しかしそんな中、たった一人だけ、天井をじっと見つめる不思議な女子生徒がいた。


「はぁ……。ここに入れば、ヒューマノイドと戦えるんじゃなかったの?」


 そう呟く彼女の首元には、針で縫ったような痕がいくつもあった。

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