第18話 セイス・デモニアス
シュリがいなくなり、静かになった室内。
リビングの大きな窓から見える空は、夕焼け色に染まり、一日の終わりが近いことを知らせている。
「はぁ、美しい」
分鬼はそんな綺麗な空を正面から眺めるため、ソファの一部を切り離し、1人窓際に座った。
「それって、僕よりも美しいのかい?」
「ああ、当たり前なことを聞くな」
「なっ!……こほん。
隣、座ってもいいかい?」
死鬼は心が折れそうになったが、持ち前の強靭なメンタルですぐさま持ち直した。
「好きにしろ」
「じゃあ有難く」
死鬼は分鬼の隣にクッションを持ってくると、あぐらをかいて座った。
「確かに、これは僕よりも……。
って、いやいや、僕とは違った素晴らしい魅力があるね!
……ふぅ、危なかった……」
負けを認めないこの姿勢こそ死鬼の良さであり、欠点と言える。
一方、頭鬼と白鬼はリビングの中央に立っていた。
「もう呼んでもいいかな?」
「……うん、いいと思う……」
「よし、出てきていいぞ」
頭鬼が声をかけると、長く伸びた分鬼と死鬼の影に穴が空き、そこから黒髪おさげの女の子が1人現れた。
熊の髪留めと花柄の着物を身に纏う彼女は、小柄で愛らしい見た目をしている。
「ようやく出番なの」
この大和撫子な彼女も頭鬼たちと同じ、鬼の1人「コードネーム:『
「あれ? 相方は一緒じゃないのか?」
「はぁ、冗談でもあいつと相方なんてやめて欲しいの。私とあいつじゃ格が違うの」
影鬼は自慢げにそう言った。
「……この前、2人でお茶してたくせに……」
「うっ……。
今はそんなことどうでもいいの。
多分あいつなら、ソファの下なの」
影鬼が言った次の瞬間、ソファの下からスルスルっと金髪ツインテールの綺麗な女の子が飛び出してきた。
「全く待たせすぎだっつーの!
危うく寝ちゃうところだったじゃない!」
赤いリボンで髪を結び、無地のクロップキャミソールでオシャレにへそ出し。
見えそうで見えないギリギリを責めた黒のミニスカもとても魅力的である。
そんな若さ溢れる魅惑のボディと、明るい雰囲気を併せ持つ彼女もまた鬼の1人、「コードネーム:『
「さぁ、今日も始めようか」
頭鬼がそう言うと、空を眺めていた分鬼と死鬼の目から光が消えた。
「影鬼、いつもの頼む」
「お任せなの」
影鬼は家具などに出来た影を右手に集め、大きな円を描いた。
「ちょちょいのちょいなの」
そこに影鬼が自身の鬼力を注ぐと、瞬く間に異空間へと繋がるワームホールが完成した。
「今日の子は奴隷商人だ。
楽しい鬼ごっこになるといいな」
頭鬼を先頭に、白鬼、分鬼、死鬼、陰鬼、影鬼の順に中へ入ると、ワームホールは静かに姿を消した。
ここでひとつ、アッセンデルトで有名なとある噂話を紹介しよう。
アッセンデルトには、『6人組である』ということ以外、何の情報も掴めていない最凶最悪の殺し屋集団が存在する。
各国は彼らを国際指名手配し、多額の懸賞金をかけているが、毎年数千を超える犯人不明の事件が発生するだけで、未だ何の成果も得られていない。
そんな経緯から、彼らはこう呼ばれている。
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