第13話 入学試験シュリ
まずはシュリ試験官から見ていこう。
シュリの最初の相手は、小柄な黒髪ショートの女子生徒だ。
「いいよ、いつでも!」
「お、お願いします! はぁ!」
鬼力を身に纏い、大きな踏み込みで一気に間合いを詰める新入生。
対して、シュリはその場から全く動かない。
「おりゃぁぁああああ!」
新入生の右足がシュリの顔に迫る。
(行けるっ!)
しかし次の瞬間、シュリはニヤリと笑った。
「甘すぎるよ!」
敢えて隙を作ることで意図的に打ち込ませた大振りな蹴り。
シュリは狙い通り、部分的に鬼力を纏わせた左腕で足先を弾く。
(やばっ……!)
そして、すかさずがら空きの腹に右拳を打ち込む。
「……うっ……」
基礎がしっかりとした、実に綺麗な戦い方である。
(おおおおお! 決まったぁぁあああああ!)
当の本人はとても満足そうだ。
しかし、少し離れたところから様子を見ていたメルサーはため息をついていた。
「はぁ……シュリのやつ、また油断しとるのう」
当然、新入生もその隙を見逃さなかった。
「鬼弾!」
地面に鬼弾を撃ち込み、即座に体勢を立て直した。
「あっ、私また油断を……って、まずっ!」
新入生は戻る勢いを利用して、頭で顎を狙う奇策に出た。
基礎がしっかりとしたタイプのシュリとは異なり、臨機応変に対応できるタイプの新入生。
そんな意外性のある攻撃に、流石のシュリも一瞬冷静さを欠いた。
ただ、流石は生徒会副会長。
「よっと」
身体を大きく後ろに反らし、瞬時に攻撃をかわした。
(え、嘘……。かわされた…?)
そして、シュリはそのまま地面に寝転がると、落ち着いて足を払った。
「なっ、なんで……」
攻撃をただかわすのではなく、カウンターにつなげる一連の流れ。
基礎を応用した発展もシュリの持ち味の1つである。
「はい」
すぐに起き上がり、新入生を抱きかかえるシュリ。
「危なー!
本当にいい攻撃だったよ!」
その光景はまるで、姫をお姫様抱っこする王子のようだ。
そんな、強くて、優しくて、かっこいいシュリの姿に、新入生は心を奪われてしまった。
「先輩……好きです!」
「えっ!? 急にそんなこと言われても、困っちゃうな……」
「お友達からで大丈夫ですから!」
「う、うん。そうだね、友達になろっか、あはは」
「やったー!
私はリビアと言います!
先輩はそうですね……『リビちゃん』とお呼びください!」
「わ、分かったよ……またいつかね」
「違います!」
「えっ」
「今呼んでください!
今呼んでくれないなら……」
「呼んでくれないなら?」
「寮の部屋、一緒にしてもらいますから!」
(それだけはまずい!)
当然、彼女にそんな権限や力はない。
ただ、そういう可能性があることをチラつかせることに意味があるのだ。
(わくわく! どきどき!)
きらきらした瞳でシュリを見つめるリビア
「……ビァ」
小さな声で名前を呼ぶシュリ。
「ん? 聞こえなーい」
「……リビア……!」
「んー?」
「リビア!」
「はい、シュリ先輩!」
次の瞬間、最高の笑顔で抱きつくリビア。
(先輩が、先輩が、私の名前を呼んでくれました!)
しかし、そんなリビアとは正反対に、シュリは心の中でため息をつく。
(はぁ……疲れた)
試験官として模擬戦には無事勝利したシュリだったが、新入生の押しには完全敗北だった。
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