第7話 生徒会長と風紀委員長

 するとその直後、白制服に金バッジを付けた長い金髪の生徒と銀バッジを付けたオレンジ髪ポニーテールの生徒が大噴水広場にやってきた。


 金髪の生徒は背中に剣を、オレンジ髪の生徒は腰に太刀を携えている。


 何やら強そうな雰囲気を醸し出す2人だが、着いてそうそう納得いかないといった様子。

 

「あらあら、どうして呼んでもないのに来られたのですか?

 風紀委員長のフリージアさん」


 (彼女、胸が小さいからってわたくしに嫉妬してるんですわ)

 

「あれあれ、おっかしいなー?

 これはどう考えても風紀委員の仕事だろ。

 なぁ、アリシア生徒会長」

 (胸だけじゃなく、態度まででかいんだよお前は)


 ぎこちない笑顔を浮かべ、バチバチと火花を散らす2人。


「えっ?」


「はぁ?」


 気づけば、そこにあった人だかりは、綺麗さっぱり無くなっていた。


「……こほん」


「……あー」


 それからというもの、一分、二分と時間だけが流れ、そろそろ五分が経とうとしている。


 (フリージア、まだ粘りますの?

 はぁ、この私がわざわざ挨拶してあげたというのに……本当、どうしようもない人ですわね)


 (アリシアのやつ、まだまだいけるって顔しやがって。

 チッ。しゃあねぇな、もう少しだけ付き合ってやるよ)


 このように頑固な人同士で睨み合いを始めると、お互い引きどころが分からなくなり、どんどん長引いていくので注意が必要となる。


 そんな困った2人の元に、一件のWINEが届いた。


「WINE!」


 いつもなら特に気にならないWINEの通知音。しかし、ただひたすら睨み合っていた二人にとってそれは、死角から投げ込まれた爆弾と同様の破壊力を持っていた。


「キャッ!」


「ヒャァ!」


 びっくりした2人は思わず女の子らしい可愛い声をあげてしまい、その恥ずかしさから、自然と視線を逸らす。


「こほんっ!」


 ただ、それからすぐ、アリシアは何事も無かったかのようにポケットから水色のスマホを取り出すと、綺麗な作り笑顔でこう言った。


「フリージア、一旦内容を確認しませんこと?(どなたか分かりませんが、グッドタイミングですわ!)」


 アリシアの言葉を受け、フリージアもポケットからオレンジ色のスマホを取り出すと、拙い笑顔で答える。


「そ、そうだな……! もしかしたら急用かもしれないし。(ふぅ、助かったぜ!)」


 2人の睨み合いを終わらせたWINEには、こう書かれていた。


『お二人さん、仲良しなのはすごーくいい事なんじゃが、ナンバーズが倒されたことには気づいとるんじゃろうな?』


「「……ん? ええええええええええええ!?」」


 一呼吸おいて、2人の驚く声が学園中に響き渡る。


「た、確かに私たち、ここに来てからというもの、全く周りに目を配ってませんでしたわね……」


「た、た、た、た、た、確かにな……。

 こ、こ、こ、こ、こ、これはみんなを集めて緊急会議を開いた方がいいんじゃないか!?」


「で、ですわね!?」


 それからすぐ、2人は大噴水広場に来た時の何倍もの速さで、校舎の方へと走っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る