エピローグ
――本当にこれでよかったのか?
あぁ、当然だ。
俺は自分の意志でアリシアに傍にいてほしいと望んだ。
――後悔はないか?
いつか人には終わりがやってくる。
それが明日なのか数日後なのか数十年後なのかはわからない。
やりきれないことも多く。
きっと後悔のない人生はない。
ただそのときが来たら何か一つでも。
『大切なモノがあった』
そう言えたら少なくとも納得はできると思う。
――誰かのため、そんな綺麗事を続けるのか?
それは間違いだ。
周りからはそう見えるかもしれないが俺は誰かのために生きてきたわけじゃない。
"自分がそうあるべきだ"もしくは"自分がこうであれば"と悩みながら生きてきた。
自分の人生を他人へ委ねることはできない。
流されている自分も結局は自分が選択したことだ。
――アリシアのことはどう思う?
あいつはたぶん人との深い関係に飢えていたんだ。
両親以外の家族にはいないも同然に扱われて。
家臣たちは見て見ぬふり。
紅葉と同じく民と接する機会もなかっただろう。
俺はそれらの代わりにはなれないが。
めいっぱいの優しさと『ここにいていい』という言葉を贈ることはできる。
――お前の望みは独りでしか叶わないはずだ。
そうだ。
今までは紅葉のたった一つの要求を達成できていた。
けど、これから先は上手くいくかわからない。
あいつの涙を見ないなために枷を外したが違う枷をはめられた。
それはつまり彼女は望んでいないという意思表示。
外すことはできない。
――アリシアを傍にいさせるのはそのためか。
バカを言うな。
そんなこと関係なく俺があいつに傍にいてほしいだけなんだ。
剣の腕の才能があり。
努力家であり。
食えないやつかと思えばただの甘えたで。
そんな魅力的な女の子がどうしようもない俺を選んだ。
今まで以上に苦しいこともあるだろう。
しんどいこともあるだろう。
ただそれ以上の幸せや喜びがあれば。
アリシアを納得させられる。
自問自答を何度も繰り返した。
俺はまだ異性に対しての好意をわかっていない。
アリシアは……どうなんだろうな。
ただ心配はしていない。
最初は王家のしきたりに振り回され、相手を知り、今は互いを求めている。
一度でも変われたならこれから先も変わることはできる。
後は自分の人生を楽しめばいい。
もちろん、アリシアと共に。
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