幕間 四幕目「依存」

『紅葉のお陰で助かった』

「……それ言うためだけに私の睡眠を妨害したの?」

 深夜零時。

 ようやく公務を終えて寝ようとしたところで同じ相手から本日二度目の着信。

『こういうのは直接言うほうがいいと思ってな』

「そう。それでいつ式を挙げるのかしら?」

『なんでそうなる』

「あの会場、私の部屋から見えるの忘れたの?」

『……はっず』

 まさか会って三日ほどの相手を抱きしめるとは。

 私が思っているより順調なのか。

 それとも隼人の垂らし度が上がったのか。

 あるいは両方か。

「話は以上かしら?」

 何にせよ順調なようで一安心。

『いやもう一つだけある。お前アリシアの境遇知ってただろ』

 まったくなんでこういうときだけ鋭いのかしら。

「立場上知ってるわよ」

 友好国の王家事情を知らずして留学生を受け入れるわけがない。

「まさか紅葉……」

「邪推しないで。単に相性がいいと思っただけ」

 誰かのためじゃないと生きていけない少年と特別な誰かを求めた少女。

 やっぱりお似合いね。

『俺はお前との約束を破棄するつもりはないからな』

 隼人はそれだけを言い残し一方的に電話を切った。

「そんなこと言われなくても知ってるわよ……バカ」

 彼は死ぬまで私を守り続ける。

 問題だったのは今はもう私の『傷ついたらクビにする』という枷がなくなったこと。

 私が泣こうが彼は止めれないし、私も心のどこかで彼に縋ろうとする。

 あの三年間はお互いにとってかけがえのない時間であり。

 依存するほどの強力な過去だ。

 だから婚約者という新たな枷を嵌めることにした。

 隼人が他に大事な存在ができれば私は大丈夫。

 やはり私は面倒くさい女ね。

 自分で突き放すことができなかったために他人を巻き込んだ。 

「例の件は来週か……」

 それまでにある程度は公務を終わらせないと。

 それこそ睡眠時間が危うい。

「まぁ、なんとかなるでしょう」

  考えても仕方ない。

  親友と新しく友達になれそうなお姫様の幸せを祈りつつ眠りについた。

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