翼が無くても飛べるはず

「なんですか? 刑事さん?


 まだ、牛を入れちゃダメなんですか?」


 宇上は一抹の不安を覚えながらも、能登羽に話しかける。


「……ええ、入れちゃいけません。


 あなたが村田さんを転落死させたトリックに、牛が巻き込まれてはいけないでしょう?」


 宇上は動揺した。


 能登羽は村田を殺したトリックに気が付いている。そう確信したからである。宇上は胸に手を当てる。


「何を言っているんですか?


 僕が犯人? どんな証拠があって、そんなこと?」

「証拠はありません。」


 能登羽はそう言い切る。


「どういうことですか?」

「今は証拠はありません。


 ですが、あなたの共犯者に、証言を取れば、きっと自白してくれるでしょう。」

「……話が見えないなあ? 


 一体どういうことです?」


 能登羽は一度深呼吸をした。


「宇上さん、こんな話を聞いたことありますか?


 牧場で飼っていた牛が夜に一匹ずついなくなる。それを不思議に思った牧場主は、夜に眠らず、牛泥棒を捕まえようとする。


 そして、深夜、睡魔に襲われていた牧場主は、天空から伸びる明るい光で目を覚ます。」

「……その話がどうしたんですか?」

「それでは、結論から申し上げましょう。


 あなた、宇宙人と友達ですね?」


「!!!!!」


 宇上は声も上げられないほど、動揺していた。


「この草原で転落死する方法。


 それは、UFOで被害者を吸い上げ、上空で落とすことです。


 そうすれば、この何もない草原で、人を転落死させることができます。そして、この方法を使えば、風にも影響されない上、被害者の抵抗も無駄です。」

「……でも、証拠はないですよね。」

「いいえ、宇宙人がここにいたという証拠はあります。


 牧場に描かれたミステリーサークルです。


 牧場に綺麗に折れた草の跡がありました。それはとても自然にできたものではない。


 そして、人間が作ったようなものでもない。


 あれほど広大で、緻密に作られたミステリーサークルは、絶対に宇宙人の仕業です。」


 宇上はその言葉に笑みをこぼす。


「……あなたは信じてくれるんですね。」

「ええ。


 NOT BIAS!


 私は全ての可能性を信じています。」

「そうですか。」


 宇上はそう言って、首元から服の中に手を入れた。中からは、UFOのペンダントが出てきた。


「ペンドラー、ペンドラー、ペンドラー、ペンドラー、ペンドラー、ペンドラー、ペンドラー……」


 宇上はペンダントを上空にかざして、ペンドラーと繰り返した。


 すると、青空から流れ星が落ちる。流れ星は段々とこちらに近づいて来る。能登羽は思わず瞬きをしてしまった。


 すると、能登羽の目の前には皆が想像するようなメタリックな円盤型のUFOがあった。


 少し宙に浮いたUFOからは、光出てきて、そこからは黒目が大きく全身灰色のグレイ型の宇宙人が出てくる。


「ワレ、ウチュウジン。」

「あなたがそのUFOを使って、村田さんを殺しましたね。」

「ソウデス。ゴメンナサイ。 m(._.)m」

「宇上さん、あなたも罪を認めますね。」

「……はい。」


 宇上はそう言うと、足から崩れ落ちた。


「それでは参りましょう。」


 能登羽は宇上にそう声をかけた。宇上はゆっくりとその場から立ち上がる。


「せっかくだから、このUFOで向かいましょう。


 神宮司君! 運転して!」

「ええー!? 普通免許しか持ってないですよ!」

「大丈夫だよ。この宇宙人が教えてくれるよ。」

「オシエルヨ!」

「優しい宇宙人だぁ!!」


 そして、能登羽達は、UFOに向かって、警察署に向かったのだった。


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