大草原の殺人

大草原での殺人

「なんだよ、宇上? こんな大草原に呼び出して?


 鬼ごっこでもするのか?」


 村田がそう言うと、宇上は村田の方へと振り返った。2人が佇んでいる草原は、見渡す限りの大草原で、視界を遮る建物も木もない。地平線が見えるような広大な土地だ。


「鬼ごっこがお好みか?」

「いいや、子供じゃあるまいし。」

「……そうだな。子供じゃないもんな。


 ……でもさ、覚えてるか?


 俺達が小学5年生だったあの夏の日。」


 村田は笑い出す。


「ああ、あれか。 俺は今でも信じちゃいないぜ。


 お前は信じていたみたいだけど、あれはお前の勘違いだ。


 ……あり得るわけがない。」


 宇上は村田の馬鹿にするような口調に怒りを覚えたが、拳を握って怒りを抑え込む。


 だが、宇上は心の中で笑っていた。


 なぜなら、あの時、宇上を馬鹿にした村田の目の前で、あのことを信じさせてやれるからだ。


「なあ、もしもの話で聞いて欲しいんだが……


 今、この場所で、僕はお前を殺そうとしたとする。」

「随分、物騒だな。」

「仮の話だ。


 その時、僕はお前をどう殺すと思う?」


 村田は宇上の質問をしばらく考えた。


「どうだろうな?


 俺は空手を小さい頃からやっていて、お前は小さい頃から武術をかじっちゃいない。


 だから、絞殺とかは揉み合ったら、お前に勝ち目はない。だから、ナイフで刺殺とか、バールで撲殺とか言ったところかな?


 この大草原で、毒殺や焼殺は似合わないだろう?」


 村田はまさか殺されるはずがないと思っている余裕の表情だった。


「そうだな。


 刺殺や撲殺の類で、一撃必殺が妥当な殺し方だろうな。」

「そうだろう?」

「でもな。 


 僕が今からする殺害方法は、今お前が言った殺害方法ではなく、お前が今一番考えていない殺害方法だ。」

「……どういうことだ?」

「じゃあ、予告してやろう。お前の死因は……



 転落死だ。」

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