第35話 変装術

 翌朝、ナナセはいつもより早起きをした。

 今日は黒の手の初任務である。まずは自宅の調合台でファミリーハウスに納める分の薬を作った。

 十分な量の薬ができたら、机の上に置かれたパンを急いでかじって簡単すぎる朝食を済ませ、ファミリーハウスまで走る。そこに誰もいないことにナナセは少し安堵した。


 昨夜遅くにファミリーハウスに顔を出したナナセは、再びあの「妙な空気」を感じていた。挨拶はしてくれるものの、やはりみんなよそよそしい。いつも通り話しかけてくれるマルも、カフェでの仕事が忙しいのか姿が見えない。セオドアとノブもどこかへ行っているようで、ずっと会えないままだ。

 リスティもゼットもベインも、ここにはいない。リスティにできるだけ毎日ファミリーハウスに顔を出すように、と言われていたが肝心のリスティはどこにいるのか分からない。

 他のメンバーはリスティがいないと会話もなく、室内は火が消えたように静かだ。ナナセはチェストを開けて薬の在庫を確かめると、早々にファミリーハウスを退散したのだった。

 ナナセは急ぎ足で魔術ギルドへと向かう。ルインは先に訓練所に行って訓練を受けている。


 ナナセとルインはヴィヴィアン達と共に上級を目指し、魔術の習得と訓練に励んでいる。魔術の種類は沢山あるのだが、訓練所では基本的な魔術だけを学ぶことになっている。魔術書は値が張る為、全てを覚えるのは上級になってからでいいというのが、ギルドの考えだ。

 ハリシュベルで「太り過ぎたカエル」を倒した時、他のメイジに爆破魔術を持っている者がいた。爆破魔術は非常に強力なのだが、魔力の消費も激しく扱いにくく、しかも魔術書は高額。その為メイジの間ではあまり使われていないようだ。

 ナナセはできれば爆破魔術を覚えたいと考えていた。カエルの魔物のように、強力な魔術がないと対抗できない場合があると知った。

 友人のヴィヴィアン達も同じ考えのようで、その為には早く上級メイジになる必要がある。爆破魔術を始め、強力な魔術は殆どが上級にならないと覚える資格がないからだ。


 ヴィヴィアン達と魔術を学んでいたナナセは、少し離れた所で一人訓練をしていた。そこにルシアンが近づいてきて、ナナセが訓練する様子を見ている。

「力が入り過ぎていてターゲットがぶれていますね……『石化術』は魔物の『芯』を狙うのが重要です」

「はい、ルシアン先生」

 ナナセは再び訓練人形に狙いを定め「石化せよ!」と石化術を放つ。訓練人形は不規則に動くので魔術を当てづらい。二度、三度と繰り返し、ようやく石化術が成功した。

「よくできました。今の感覚を忘れないように、訓練を繰り返してください」

「分かりました」

 再びナナセは手を伸ばしてロッドを構えた。そこにルシアンが近づき、そっとナナセの腕に手を添えながら耳に顔を寄せる。


「タケルから聞いています。今日からルインと初任務ですね。頑張ってください」


 ナナセはハッとしてルシアンの顔を見た。ルシアンは表情を変えぬまま、黙って頷く。

「……はい」

 ナナセは頷き、動揺を悟られないように前を向いた。


(ルシアン先生も、黒の手だった……!)


 何故ルシアンが黒の手に入ったのか。彼とじっくり話したいところだったが、ルシアンは何事もなかったようにナナセから離れた。



♢♢♢



 訓練所を出たナナセとルインは、その足でレストラン「マリーワン」に向かった。

 道中の話題はもちろん、黒の手のメンバーだと明らかにされたギルド長ルシアンのことである。


「ルシアン先生も黒の手……だなんて、びっくりだよ」

 ルインは話を盗み聞きされないよう、小声でナナセに話す。

「私も驚いたよ。魔術ギルド長なのに」

「意外と身近に『黒の手』がいたんだね」

 ひそひそと話しながら、二人は「マリーワン」へと急いだ。


 店に入るとマリーワンに外に出るように合図され、二人は店の外に出て裏口へと回った。

 裏口から出てきたマリーワンは、二人の姿を見ると手招きをする。

「はい、ポータルの鍵よ」

 マリーワンは白い袋を一つずつ、二人に手渡した。袋の中にはパッと見て10本ほどの鍵が入っている。

「こんなにたくさん……ありがとうございます」

「こんなのすぐになくなっちゃうわよ。メンバーが使う鍵は私を通して渡すことになってるから、鍵が足りなくなりそう時は私に連絡をちょうだいね」

「ありがとうございます、マリーワンさん」

「それじゃ、頑張ってね。マリーツーによろしく」

 軽くウインクをすると、マリーワンは裏口のドアから中へと戻って行った。




 店を出たナナセとルインは、早速ポータルの鍵を使った。ポータルは最大二人まで一度に運べるので、鍵の節約の為にナナセの鍵で二人一緒に移動した。

 行先はヒースバリー商業区だ。ヒースバリーで最も賑やかな通りを抜け、通りの一番端にあるのが美容室「マリーツー」だ。

 派手な色で塗られた外壁のその店は、遠くからでもすぐに分かった。ガラス張りの窓から中の様子がうかがえる。店の中も外側に負けず劣らずの派手さだ。入り口には「閉店」と札がかけられていて中には誰もいないようだ。ナナセはルインと顔を見合わせ、頷くと緊張ぎみに扉を開けた。


 店の中はがらんとしていて薄暗かった。ナナセが「すいませーん……」と声を上げると、店の奥の部屋から女性が慌てて飛び出してきた。

 その女性はマリーワンと背格好が似ていたが、目の形や髪型などは違っていた。茶色でふわふわした長い髪のマリーワンと比べ、彼女はストレートの黒髪を肩の辺りで揃えている。マリーワンはちょっと垂れた愛らしい瞳だが、目の前の女性は猫の瞳のようだ。


「あなた達、ナナセとルインね? 待ってたのよ!」

「こんにちは、はじめまして……」

 挨拶をしようとした二人を無視するように、その女性は二人に近づくとじろじろと無遠慮に見始めた。


「ふむ、ふむ、なるほど……ナナセはドーリアの女性の平均身長ね。身長も体型も平凡そのもの! 変装術にこれ以上適した体はないわ……完璧!」

「あ、あの……」

 戸惑うナナセに構わず、今度はルインをジロジロと観察し始める。

「ルインはもう少し小柄なタイプね。うん、うん、これはこれでいいわ。小柄な女はノヴァリスでは人気だもの……うん、問題ないわ」

 体型をチェックされているルインは不快な表情を浮かべている。


「あ! ごめんなさい自己紹介が遅れたわね。私はマリーツー、マリーワンの双子の妹よ。あなた達のことは姉から聞いてるわ。変装術を受けに来たのよね? 任せてちょうだい! 私が完璧な術を施してあげる」

 マリーツーは早口で自己紹介をした。ナナセとルインが「よろしくお願いします」と頭を下げると、マリーツーは二人の背中をぐいぐいと押して店の奥へと促した。店の奥にはもう一つ部屋があり、二人はその部屋の中へと通される。

「変装術は『ヒミツ』の術なの。二人とも、黒の手のメンバー以外には話さないでね」

 マリーワンは指を口に当て、不敵な笑みを浮かべた。


「さて、早速始めましょうか! まずは説明するわね。これを見て」

 そう言ってマリーワンは茶色のキャスケットと青いスカーフの二つを取り出した。

「変装術はこの二つにかけるわ。あなた達がこれを身に着けると、他人からは別人に見えるってわけ。身に着けている一日だけはずっと術がかかっている状態だけど、帽子とスカーフを外せばその場で元通り。あなた達にも普段の生活があるでしょ? だから変装術は任務中だけにしてね。ここまではいい?」

「はい、大丈夫です」


「さっきはあなた達の体型をジロジロ見ちゃって悪かったわね。変装術はあくまで顔を変えるだけだから、体型までは変えられないの。だから平均的な体型の子の方が変装術に向いてるってわけなのよ。フォルカーなんて全然ダメよね、山みたいに大きくて目立っちゃう」

 マリーツーは早口で説明しながら、机の上に帽子とスカーフを乗せ、本棚から一冊の本を取り出すとページを開いた。


「あれ、魔術書かな」

 ナナセはルインに耳打ちした。マリーツーが持つそれはナナセ達が使う魔術書に良く似ている。


 マリーツーは開いたページの所で、指をゆっくりとなぞった。すると指の先から光が放たれ、マリーツーの顔を怪しく照らす。


「やっぱり、マリーツーさんはメイジなのかな」

「多分」

 ルインがナナセに耳打ちすると、ナナセもその通りと言わんばかりに頷く。訓練所で変装術という魔術があるとは聞いたことがない。ナナセもルインも、初めて見る魔術に興味津々だった。


 マリーツーが魔術書をなぞる指を包むその光は、やがて彼女の体に取り込まれていった。

 そのままマリーツーは指を帽子に向ける。帽子は一瞬でぼうっと青白い光に包まれた。あまりの眩しさにナナセは一瞬目を閉じた。そして再び目を開けると、そこには何も変わっていないように見える帽子があった。

 変装術が成功すると、魔術書のページが光を放ち、消えていった。これはナナセが魔術を学ぶ手順と一緒だ。ただナナセとルインが学ぶ魔術は、一度覚えてしまえば何度でも使える。マリーツーの変装術は使うたびに本から魔術を引き出しているようだ。何故ならマリーツーは続けてスカーフに術をかける為に、もう一度同じ手順を繰り返したからだ。


「……はい、終わり! じゃあ二人とも、身に着けてみて」

 マリーツーから手渡された帽子とスカーフを、二人は恐る恐る受け取った。茶色の帽子はナナセ、青いスカーフはルインが身に着ける。帽子を被った後、スカーフを巻いたルインの顔を見たナナセは、驚いて声を上げた。

「ルインじゃない!」

 目の前にいたのは、肩まで伸ばした茶色の髪を二つに分けて結び、何の特徴もない顔立ちの女性だった。

「ナナセだって、ナナセじゃないよ!」

 ルインもナナセの顔を見て驚いている。

「ここに鏡があるわ、見てごらんなさい」


 マリーツーは得意げな顔で、壁に掛けられた鏡に二人を誘導した。鏡を覗いたナナセは、ルインの驚いた顔に納得する。茶色のボブだった髪は黒髪ロングヘアになってい

て、顔は全く知らないものに代わっていた。ルインと同じように特に目立つパーツのない、平凡としか言いようのない顔だ。

「あっ!? 声……?」

 ナナセは反射的に喉を押さえた。声も自分のものとは違う。ルインの声もいつもの声と違う。ナナセは急な変化に戸惑っていた。


「すごいでしょ? 顔だけじゃなく、声も違って聞こえるのよ。だからそれを身に着けている限り、あなた達の正体が見破られる心配はないってわけなの。これから任務の時は、私の美容室に寄って変装術をかけてから行ってね。ちょっと面倒臭いけど」

「すごいです……こんな魔術があるなんて」

 ナナセは鏡を見ながら顔をぺたぺたと触っている。

「でしょ? だから『ヒミツ』なのよ。あとは二人に別の名前を渡すわね……ナナセは『セナ』でルインは『ルーン』よ。なかなかいい名前でしょ?」

 顔が違っているのだから今の名前を使えるわけもない。ナナセとルインはただ頷くしかなかった。


「それから変装中に着る服も渡すわね。服装でばれちゃうと困るから……。ここで着替えて行った方がいいわ」

 マリーツーは二人に服を手渡した。ナナセは白いシャツと足首まである長いスカート、ルインは紺色のワンピースだ。どちらも非常に地味でよくあるデザインである。二人はローブをその場で脱ぎ、もたもたと着替えを済ませた。


「じゃあ二人とも、初任務頑張ってね! 私の本業は美容師だから、髪型を変えたかったり化粧品を買いたくなったらいつでも来てね。アイシャドウにチークにリップに……なんでもあるわよ。もちろん代金は払ってもらうけど!」

「ありがとうございます。マリーツーさん」

 ナナセとルインが頭を下げると、マリーツーはまじまじと二人の顔を見つめた。

「中級の子二人をメンバーに入れたって聞いた時は心配だったけど、タケルが見込んだ子達だもの。きっと上手くやれるわよ」

 そう言うとマリーツーは初めて笑顔を見せた。ナナセとルインもマリーツーに微笑み「頑張ります」と返した。


 二人はその場でポータルの鍵を取り出し、マリーツーに別れを告げるとキャテルトリーへと戻った。



♢♢♢



 ノヴァリス自警団のキャテルトリー分団の詰所は、冒険者ギルドがある中央区の外れにある。

 どこの街でも詰所は冒険者ギルドからさほど離れていない場所にある。キャテルトリー分団の詰所は広場から伸びた道沿いをしばらく歩いた先にあり、目立たない場所にひっそりと建っていた。

 詰所は小さな建物で、円錐形の屋根が特徴だ。壁も屋根も全て白く、冒険者ギルドの塔と同じ色をしている。

 彼らの制服として使われている白く塗られた金属鎧は、団長のユージーンのこだわりらしい。ガーディアンと同じ色を使っているのは、自分達がガーディアンに認められた組織だと主張する狙いがあるのだろう。


 詰所の奥には大きな白い建物があり、そちらは団員の宿舎になっている。団員は部屋を与えられ、食事や制服など全て支給されている。彼らの主な任務は住民のトラブル対応。一見頑丈に見える白鎧はハリボテで、魔物狩りには役に立たない。魔物の対応は冒険者とガーディアンに任されており、彼らが武器を取ることは殆どない。



 ナナセ改めセナと、ルイン改めルーンの二人。どこからどうみても「平凡なドーリア」の彼女らは不安そうな表情で詰所の前に立っていた。

「……それじゃ、行くよルーン。打ち合わせ通りに」

「分かった、セナ」


 詰所は住人達が相談などをする為に訪れる場所だ。一応常駐している団員がいて、相談に訪れた者の話を聞くことになっている。

 詰所の扉は開け放たれていた。セナとルーンは恐る恐る中に入る。小さな建物に見えたが中はそれなりに広い。部屋を二つに区切るように、真ん中に大きなカウンターテーブルがあり、手前に椅子が数脚置いてある。カウンターの向こう側にはいかにも面倒臭い、と顔に書いたような男が一人いて、まさに今他の住民の相談に乗っているようである。

「少し待とうか」

 壁沿いにベンチが置かれてあるのを見つけ、セナはルーンを促してベンチに腰かけた。


「そんな……なんとかなりませんか」

 相談をしているのは背中に盾を背負った女性と、小柄な男性の二人組だ。

「だからさ、自警団は魔物狩りの手伝いはできないっていう決まりなの。アナタもしつこいねえ。ギルドで手伝い募集をしたらいいでしょ? みーんなそうしてるんだから」

 団員はうんざり、といった表情だ。指でトントンとカウンターテーブルを叩いている。

「でも、手伝ってくれる冒険者が見つからなくて……」

 女性は困ったような顔で隣の小柄な男性に目をやる。その男性は顔が幼く、少年のような容姿だ。

「今日中に中級になれないの?」

 少年は頬を膨らませ、不満そうに女性に返す。女性は「大丈夫よ」と少年の肩に手を置いた。

「とにかくね、何度頼まれても俺達自警団は冒険者の手伝いをしちゃいけないの! そんなに手伝いが欲しかったら……」

 自警団員は急に声を潜め、女性に何かを言った。

「えっ、そんな……無理です」

「それならもう帰ってくれる? ほら、後ろに順番待ってる人らがいるんだから」

 女性と少年は振り返り、セナとルーンを見た。セナ達はなんだか気まずそうに目を逸らす。女性は諦めたようにため息をつき、少年に立つよう促した。

「また、ギルドでバーティ募集してみましょう。今日こそは見つかるわ」

「見つかんないよ、どうせ」

 少年はポツリとこぼし、椅子から立ち上がると早足で詰所を出て行った。

「あ、待って……」

 女性は慌てて少年を追いかけていった。


「やれやれ……さあ、次の方どうぞ。ここに座って」

 団員はセナとルーンに声をかけた。二人は門前払いを受けた女性と少年が気になったまま、団員の前に腰かけた。

「さて、相談があるんだろう? 手短に頼むよ、そろそろ交代の時間なんでね」

 一言目から相談など聞く気がなさそうな言葉を吐きつつ、団員はセナ達に話をするよう促した。


「え、えーと……魔物狩りをしていたら他のパーティに暴言を受けて……」

 セナはハリシュベルでのマユマユとのトラブルをアレンジして団員に話をした。もちろん場所も相手も適当である。


「うーん……そういうトラブルはよくあることだから。自警団になんとかしろって言われてもねえ……当人同士で解決してもらわないと」

 やはり、ハリシュベルで出会った自警団員と同じことを話している。

「でも、話し合いで解決しなかったらどうしたらいいんですか?」

 ルーンが団員に食い下がると、団員は再び面倒臭そうな顔をした。

「そりゃ、どうにもならなくなったら我々自警団が仲裁に入りますよ。だけどねえ、単なる喧嘩でしょ? あんたらの相談なんて結局そんなもんなのよ。やれ誰かに怒られたとか、貸したものが返ってこないとか……。自警団は便利屋じゃないの、分かる? そのトラブル相手とよく話し合って、また何かあったらここに来てください。はい、じゃあよろしく」

 団員は話を勝手に切り上げると、机の上に置いてあるカップを手に取りぐいっと飲んだ。彼はこれ以上話をするつもりがないようだ。二人は無言で椅子から立ち上がり、詰所を出て行った。




「セナ、あいつの顔を記録した?」

 詰所を出た所で、セナとルーンは立ち話をしている。

「もちろん」

 セナはムギンを取り出してルーンに見せた。そこには団員の顔が写っている。セナとルーンが順番待ちをしている時にこっそり撮影していたものだ。

「記録するように言われたからしたけど……何か役に立つのかな、これ」

「こういうのを沢山集めておけってことなんじゃない? 一人だけなら個人の問題でも、みんな同じなら自警団そのものに問題があるってことになるじゃない」

「そっか、なるほど」

 セナはムギンをポケットにしまい、顔を上げるとルーンが何かを見ていることに気づいた。


「どうしたの? ルーン」

「ねえ、あれってリスティじゃない?」

 ルーンが視線を送った先を見たセナは、思わずあっと声を上げそうになった。


 ベージュ色のふわふわした長い髪を揺らせ、真っ白な毛皮のマフラーで顔周りをふんわりと包み、レースで装飾されたスカートを履いているその姿は遠目からでも目立つ。思わずその場から逃げ出そうと反射的に後ろを向いたナナセだったが、ルインからそれをたしなめられた。


「大丈夫だよ、ナナセ。今の私達を見ても彼女は気づかない。慌てたら逆に怪しまれるよ」

「そうだった……ごめん、ルイン」


 二人はすっかりセナとルーンになりきっていたが、リスティを目撃した動揺で一瞬ナナセとルインに戻りそうになっていた。心を落ち着け、深呼吸をすると二人はリスティの後を追った。

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