第12話 捕まった犯人の正体

「なんでいつもこう……もおおお!」


 夜空に向かって叫びながら、ナナセは必死に商業区のレストラン「マリーワン」まで走った。店に到着する頃にはスタミナもなくなり、ふらふらの状態だ。


 ナナセから連絡をもらったルインは、先に店に着いていた。ナナセを見つけるとルインは駆け寄ってきた。

「ナナセ、大丈夫?」

「……うん、大丈夫。走ってきたから……ちょっと……ゲホッ」

「タケルさんに話は聞いた。マリーワンさんに鍵も借りて来たよ」

 ルインはナナセにポータルの鍵を見せた。

「ありがとう。マリーワンさん、鍵を貸してくれたんだ」

「うん、タケルさんの名前を出したらすぐに渡してくれた。使い方も聞いておいたから、すぐに行こう」

 ルインは既にマリーワンと話をして鍵も手に入れていた。彼女の手際の良さに感心しながらナナセは頷いた。


 二人でポータルの光の中に入る。目の前にはノヴァリス島の地図が浮かんでいる。ルインがヒースバリー居住区を地図の中から選ぶと一瞬で視界が真っ白になり、その後真っ暗になる。そして次に明るくなった時はもう目的地に着いていた。


「わあ……」

 二人は思わず息を飲んだ。ここはヒースバリーの居住区。キャテルトリーの居住区とは全く違い、まず入り口に巨大な門が建っている。居住区自体が高い塀に囲まれていて、侵入者を固く拒んでいた。


 門の前には門番らしきガーディアンが立っていた。二人は門番の所へ向かう。

「あの、この先へ行きたいんですけど……」

 ナナセが話しかけると、ガーディアンは直立のまま首をぐりんとこちらに向けた。

「ムギンを拝見します」

 二人は慌ててムギンを出した。ガーディアンは自分のムギンを二人のムギンと合わせ、情報を照合している。


「はい、確認ができました。お通りください」

 すると大きな門の扉が軋む音を立てながら開いた。

「すごい、警備が厳重だね」

 ナナセはルインに呟きながら歩く。


 門の中は別世界だ。夜なので全ては分からないが、等間隔に照らす街灯から見える建物はどれも大きく、庭も広いことが分かる。キャテルトリーの居住区も立派だが、ここはナナセの想像を超えている。


 すれ違った住民が、ナナセ達をじろじろと見ながら通り過ぎていく。

「なんだか、私たち場違いみたい」

 ナナセはルインに小さな声で呟いた。


「ナナセ、さっきまでファミリーハウスにいたんでしょ?」

「うん……実は大変だったよ。新しい仲間が入ったんだけど、あ、リスティっていうヒーラーなんだけどね。今夜は彼女の歓迎会だったのに、途中で抜けなきゃいけなくなっちゃって」

 ナナセは苦笑いしながら、視線をムギンの地図に落としている。

「ふーん……歓迎会ね」

「うん、とてもいい子でね。みんなもヒーラーが仲間になってくれてすごく喜んでるみたいで……せっかく歓迎会をして盛り上がってたのに、私が水を差しちゃった」


「ナナセも歓迎会をしてもらったの?」

 ルインの何気ない質問に、ナナセは言葉が詰まった。

「……ううん、私はしてもらってないよ。でもいいんだ、私はヒーラーじゃないしね」

「同じ仲間なのに? 何故?」

 再びナナセの言葉が詰まった。


「……仕方がないよ。ヒーラーってそれくらいファミリーにとって必要な存在みたい。リーダーはずっとヒーラーを探していたみたいだし……ルインもひょっとしたら、うちのリーダーに声をかけられたことがあるかも」

「そういえば、何度か知らないドーリアにヒーラーですかって話しかけられた。ファミリーに入らないかって。もう入ってますって嘘ついて逃げちゃったけど」

 ナナセは思わずアハハと大声で笑った。

「あいつら、なんだか目がぎらぎらしてるし、押しが強くて嫌な感じ」

「彼らもヒーラーが欲しくて必死なんだろうけど、ちょっと怖いよね。ルインは……この後どこかのファミリーに入るつもりはあるの?」


 できれば自分と同じファミリーならいいのに、とナナセは思っている。ルインはずっと部屋に引き籠っていたから、外に出たばかりの彼女にファミリーの話をするのは早いだろうと思っていた。


「私は一人が好きだから。そういうの興味ないんだ」

「そっか、それもありだよね。別に入らなくても生きていけるしね」

 少し残念に思いながらも、ナナセはルインに同意した。正直なところ、ナナセも未だにファミリーの良さというものがいまいち分かっていない。気の合う仲間で集まるだけなら、ファミリーという形にこだわる必要があるのかと思っている。



「あ……ここだ」

 ナナセはムギンの地図と建物を交互に見ながら指を指した。その先には大きな屋敷があった。

 二人が屋敷の玄関に着くと、扉に鍵がかかっていなかった。

「入っていいのかな?」

 ナナセは恐る恐る建物の中に入り、ルインもそれに続いた。広い玄関ホールの奥に見える部屋の扉が開いていて、そこから光が漏れている。二人はその部屋へ向かった。


 部屋の中を覗くと、赤いロングヘアのタケルが仁王立ちをしていて、その前に地面に座り込むローブ姿の男が見える。男の横にはフォルカーがいて、男の手をしっかりと掴んで拘束している。そして彼らを見守るように、もう一人知らない女性が立っていた。


「タケルさん!」

 ナナセが声をかけると、タケルは視線を目の前の男から逸らさぬまま「おう、来たか」と低い声で言った。

「遅い時間に悪かったな」

 フォルカーは二人に詫びた。優しい声だがそれに反して、拘束している手に力が入っているのが分かる。

「いえ、大丈夫です」

 ナナセはフードを被りうつむいている男をまじまじと見た。

「フォルカー、顔をよーくこの子らに見せてやれ」

 タケルの声は恐ろしく冷たい。フォルカーは頷くとフードを静かに外した。


「……リュウさん、いえ、本名はレオンハルト、ですよね?」


 ナナセは目の前に座り込んでいる男に話しかけた。男の顔は間違いなく、あの時出会ったリュウだった。


「……へえ、あんたか」

 レオンハルトは顔を上げ、ナナセの顔を見て観念したように吐き捨てた。そしてナナセの隣に立つルインの顔を見た。

 ルインはレオンハルトの顔をじっと見る。無言のまま少しの時間が流れた。


「どうだ? ルイン。何か思い出したか?」

「……」

 フォルカーの問いかけに答えず、ルインはじっと睨むようにレオンハルトを見ている。

「ルイン?」

 ナナセは心配そうな顔でルインに尋ねた。


「……マサキ、確かあなたマサキって名乗ってたよね」

「ルイン! 思い出したんだね」

 ナナセはフォルカーと頷きあう。

「まだ水路に入る前の所までしか思い出せないけど……でも、あなたが怪しいと思ったのは覚えてる。だけどあなたは自分をヒーラーだと言ったから……私はヒーラーになりたかったし、ヒーラーが誰かを騙すとは思わなかったから、疑っちゃいけないと思った……」

 ルインは眉間に皺を寄せながら、声を少し震わせて話した。


「なるほどね、それでルインを上手く騙して地下水路に連れていき、その場に置き去りにしたってわけか」

 タケルはレオンハルトを睨みつけている。

「置き去りにしたつもりはないけどね。俺は先に帰ったけど、別に一人で帰れるだろうと思ったし」

「そんなわけねえだろが!」

 タケルの声が一際大きくなると、とうとう黙って話を聞いていた女性が口を挟んだ。


「タケルさん、とりあえず落ち着きましょう。この方たちに自己紹介もまだですし」

 女性はナナセとルインをちらりと見た。

「あ? ああ、そうだったな。ナナセ、ルイン、彼女はこいつの所属するファミリーのリーダーだ」


「初めまして、私はエマ……『ライトブリンガー』のリーダーです」

 エマは戦闘服ではなく、長いドレスのような洋服に身を包んでいた。長い髪をまとめ、背筋を伸ばして立つ姿は凛としていて知的な印象がある。

 ナナセとルインは慌ててそれぞれ自己紹介をして頭を下げた。


「お二人から話を聞きました。協力を依頼され、レオンハルトをここへ呼び出したのです。彼を騙すようなことをして申し訳ないと思ったのですが」

 レオンハルトは恐ろしい顔でエマを睨みつけている。そんな彼の顔を見て、エマはため息をついた。

「レオンハルトのしたこと、ライトブリンガーのリーダーとして謝罪します。申し訳ありませんでした」

 エマは丁寧にナナセとルインに向かって頭を下げた。

「いえ、謝らないでください! エマさんが悪いわけじゃ……」

 慌てるナナセ達に、エマは首を振る。


「レオンハルトが私達の前に姿を現さなくなって長い時が経ちましたが、それでもまだ彼はうちのファミリーメンバーなのです。レオンハルトを放置したのは私の責任でもあります。もっと彼の問題に真剣に向き合うべきでした」

「問題……?」

 ナナセとルインは首を傾げた。

「勝手なことばっかり言いやがって」

 レオンハルトが悪態をつくと、フォルカーが拘束している手を更に締め上げ、レオンハルトは思わず「いててて!」と顔を歪めた。



「レオンハルトはライトブリンガー創設メンバーの一人でした。ヒーラーとして日々、私たちと魔物狩りに励んでいました。私たちはとてもいい関係だったのですが……ある時、新しくヒーラーの新人が入ってきてから、彼は変わったのです」

 エマは目を閉じ、ため息をつくと話を続ける。


「新人ヒーラーはとても才能に溢れていて、メンバーともすぐに打ち解けました。彼はめきめきと上達し、上級ヒーラーになりました。正直言って、ヒーラーとしての才能はレオンハルトより上でした。メンバーもレオンハルトより彼と組みたがるようになり……」

 レオンハルトは「チッ」と舌打ちをした。

「ヒーラーが増えるのはいいことですから、私はその段階であまり気にしていなかったのです。ですが、それが間違いでした。レオンハルトは新しいヒーラーの邪魔をするようになりました。嫌がらせをしたり彼の持ち物を壊したり。危険な場所で彼を一人置き去りにしたこともありました。そして、そのヒーラーの名前は『マサキ』と言います」


 マサキという名前を聞き、ルインは思わずレオンハルトを見た。レオンハルトは相変わらずエマを睨んだままだ。


「私はレオンハルトに注意をしました。彼が反省し、考えを直してくれたらまた以前のように仲良くやれると思っていたのです。でも……レオンハルトには伝わりませんでした。彼は私達の前から姿を消したのです」


 黙って話を聞いていたタケルが口を開いた。

「それでライトブリンガーから姿を消した後、こいつは召喚師に転職したんだな」

 エマは頷き、厳しい顔でレオンハルトに向き直る。

「レオンハルト、もしもあなたが召喚師になった理由が、誰かを陥れる為だとしたら……私はあなたを許せません」

「何が許せない、だ。気取りやがって、俺をライトブリンガーから追い出したのはあんただろ」

 レオンハルトはエマに食ってかかった。

「……何を言ってもあなたには分かってもらえないようですね。少し頭を冷やすべきだ、と私はあの時確かに言いました。でも私はあなたを追放したかったわけじゃない」

「追放したと一緒だろ! みんなの前であんなこと言われて、俺に恥をかかせやがって!」


「はい、ストーップ!!」

 タケルがエマとレオンハルトの間に割って入った。


「あんたらのファミリーにも色々あるんだろうけどさ、今日はこいつを冒険者ギルド総本部に連れていく為に来たんだ。こいつの犯したルール違反はあくまで『新人狩り』だ。ファミリーの問題はそっちでやってくれ。ナナセ、ルイン! 最後にこいつに言いたいことは?」


 ナナセはルインに視線を送り、頷くと一歩前に出た。

「なぜ、私たちを狙ったんですか? どうしてあんなことをしたんですか?」


 レオンハルトは大きなため息をつくと、顔を上げた。

「あのね、お前らは邪魔なの。分かる? 俺らの世界は俺らだけで充分回ってるわけ。新人が入ってくると俺らの居場所がなくなるでしょ? これ以上新人なんかいらないんだよ」


 ナナセとルインはあっけに取られた。新人なんかいらない、そんな理由で自分達を陥れたのかと。


「はあ? お前何言ってんの?」

 タケルが意味が分からないといった顔をした。

「お前らだってそのうち分かるさ。新人だと思って甘い顔してたら、あっという間にお前らも居場所を取られるんだよ。そうなってから後悔しても遅いんだからな?」

「そもそも俺はこいつらと居場所を取り合ってるつもりはねえし、こいつらが育てば俺達だって楽になるんだぜ。なんでそれが分かんねえの?」

 タケルはレオンハルトの勝手な言い分を理解できないと首を振った。


 不貞腐れるレオンハルトの前に、ルインが立った。

「私の言いたいことは一つだけです。もう二度と、顔を見たくない」

 ルインはきっぱりと言い切り、ナナセと目を合わせた。

「私も、もう二度とこの人の顔を見たくないです」

「よし、それがお前らの要求だな。じゃあ今から冒険者ギルド総本部に行くから、お前らも一緒に来い」

 タケルはレオンハルトの腕を持ち、無理やり立たせた。

「総本部……?」

 ナナセとルインは揃って首を傾げた。



♢♢♢



 ヒースバリーの中央に建つ巨大な白い塔。街のどこからでも見えるほどの高さがあり、ヒースバリーのシンボル的な存在だ。この塔は、ノヴァリス各地にある冒険者ギルドの中心的存在で、総本部と呼ばれる場所だ。他のギルドと役目はほぼ一緒だが、この世界「レムリアル」のルールを破ったドーリアにどんな処分を下すか、最終的な判断を下すのが総本部の重要な役目である。


 塔の前は広場になっていて、キャテルトリーにあった大きな像と同じものがここにもある。フードで顔が隠れた者の像。これは「レムリアル」を創造した者と言われている「構築者モシュネ」の像だ。


 ナナセはルインと一緒に、タケル達に連れられ冒険者ギルド総本部にやってきた。タケルとフォルカーはレオンハルトが逃げ出さないよう、両側から腕をしっかりと掴んでいる。レオンハルトはすっかり観念した様子で大人しくなっていた。レオンハルトも上級冒険者のはずだが、そんな彼もさすがに、タケルとフォルカー二人に挟まれたら何もできない。


 ナナセは物珍しそうに、キョロキョロと視線を動かしていた。

「ぼーっと歩くな、俺たちから離れるなよ」

 タケルがナナセに注意をした。口を開けながら辺りを見ていたナナセは、少しタケル達から遅れを取っている。ナナセは慌ててタケルを追った。


「上の階に行くからな」

 タケルは白いドアの前に立ち、自分のムギンをスイッチのような所にかざした。少し待つとドアが開き、小さな箱のようなものに入っていく。そこはエレベーターだった。音も立てずに上昇し、あっという間に目的の階に着いた。


 ドアが開くとタケル達は慣れた様子で歩き出した。ナナセ達は不安そうな顔で彼らの後を追う。真っ白な長い廊下をひたすら歩き、壁沿いに並ぶ白い扉をいくつも通り過ぎ、ようやく目的の部屋の前に立った。



「よう、連れて来たぜ」

 部屋に入ると、タケルはレオンハルトを前にぐいっと突き出した。レオンハルトはよろめきながら、タケルを軽く睨む。


「あなたはいつも突然ですね、タケル」


 中にいたガーディアンを見て、ナナセは他のガーディアンと違うと思った。体は白いが身に着けている服が違い、黒いコートと黒いヒールのブーツが印象的な、女性型のガーディアンだった。


「連絡してる暇がなかったんだよ。さあ、こいつが例の『新人狩り』の犯人だ」

 ガーディアンはレオンハルトをまじまじと見ている。

「なるほど、探していたドーリアを見つけていただきありがとうございます。この『レムリアル』では新人冒険者というのは、大切に育てなければならない存在なのです。新人狩りはこの世界で決して許されない行為の一つです」

 ガーディアンの淡々とした口調が怖さを引き立てている。レオンハルトは気まずそうに眼を逸らした。


「それで、そこにいるお二人が被害者ということですね?」

 ガーディアンの視線がナナセ達に移ると、ナナセとルインは慌てて頷いた。

「今回のことではご迷惑をおかけしました。レムリアルで生きる者の使命として、古きドーリアは新たなドーリアを導き、共に手を取り合うということを忘れてはなりません。ですがドーリアの中には使命を忘れ、私欲に走る者もいるのです」

「は、はい」

 ナナセ達はピンと背筋を伸ばし、ガーディアンの話を聞いていた。


「この者の処遇は、審問会で決定されます。決まり次第ご連絡いたしますので、しばらくお待ちください」

「しんもんかい……?」

 ナナセとルインは不思議そうに目を合わせた。

「この男の処分をどうするか決めるんだ。俺たちドーリアから代表で選ばれた何人かで話し合い、ガーディアンが審問会で出た意見を元に、最終的な判断を下す」

 フォルカーはナナセ達に説明した。


「審問会の連中に言っといてくれ。こいつらは『二度とレオンハルトの顔を見たくない』とさ」

「そうですか。タケルの話に間違いはありませんか? お二人に伺います」

 ガーディアンに尋ねられたナナセとルインは、背筋を再びピンと伸ばし「間違いないです」と揃って答えた。

「ありがとうございます。この後、審問会に提出するお二人の意見書を作成させていただきますので、少し時間を頂戴してもよろしいですか?」

「は、はい」

 背筋を緩める暇のないナナセとルインは、緊張気味な顔で返事をした。


「悪いな二人とも、面倒くさいだろうけど協力頼むわ。おいブラック、こいつらがキャテルトリーに戻る為の『ポータルの鍵』を渡してやってよ」

 タケルは黒い服を着たガーディアンを「ブラック」と呼んでいるようだ。

「承知しました。ではお二人にこちらをお渡ししておきます」

 ガーディアンはナナセとルインにポータルの鍵を渡した。



 その時、ブラックがいつの間に呼んだのか、ドアが急に開いてぞろぞろと真っ白なガーディアンたちが部屋に入ってきた。彼らは素早くレオンハルトを取り囲み、部屋の外へと連れ出していく。


「ちょっと待て、どこへ連れていくんだよ、おい!」

 焦ったようなレオンハルトの声があっという間に遠ざかり、彼らは部屋から出ていった。


 ナナセとルインは神妙な顔でレオンハルトが連れていかれるのを見ていた。

「なんだお前ら、辛気臭い顔しやがって! これで犯人は捕まって一件落着したんだぞ! 家に帰ったらさっさと風呂に入って寝ろ」

 タケルは豪快に笑い、ナナセとルインの間に入って強引に肩を組んだ。

「……そうですね」

 ナナセとルインはお互い目を合わせて苦笑いをした。

「それじゃ、俺達は先に戻る。ブラック、この二人を頼む」

「お任せください、フォルカー」

 ブラックはフォルカーに頷いた。


「タケルさん、フォルカーさん。色々と力になってくれてありがとうございました」

「お二人のおかげです。ありがとうございます」

 ナナセとルインは改めてタケルとフォルカーに礼を言った。


「気にすんなって。じゃあまたな、二人とも」

 タケルは笑顔で手を上げ、フォルカーは頷き、二人とも部屋を出て行った。

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