第九紹介:みじかめグレネード

 皆が現実を生きていることは当然じゃない。



 正直に言えば簡単に答えられるような物語なんてないのかもしれない。



 上から目線で決めつけたくなんてない。



 搾取さくしゅする人間の無責任なやり方に嫌気をさしているのは皆がそうだ。

 迷惑メールにスパムサイトを否定ひていして高いだけの啓発本だけは肯定こうていなんて意味がわからない。



 現実を生きている人間の多くは表に上がらなくても今を支えている一人である。



 ◇ ◇ ◇



 昔から憧れている職業にくか、学生として長くだらだら過ごすか、または一人誰にも見られない世界で暮らすか悩んでいた。



 飲食店のバイトなんてむいてないとわかった時点でやらなければ良かった。



 いつもくだらないと避けていた行動が今回は運悪く注文を運ぶ時に出てきてしまった。



 いやなんだよなあ。

 すぐに辞める場所で仕事が出来てしまってオシャレやらなんやら朝っぱらから強制されている感覚で仕事するの。



 それも過去の話だけど。

 これもひとつの手助けならもう少し待遇たいぐうを改善してほしかった。



 見た目でよく海外の人と間違われる。

 モテるけどストレスに弱いからもう少し大人しく生きていたかった。



 年齢もそこそこ重ねてみんな社会人一年目になった二〇二四年。



 純粋な気持ちで生きているとどこかかたよった世界で生きてしまっているなと気がついてバイクやら電車やら使って出かけていく。



 人間とことん辛いことがあると逆に立ち向かおうと準備をするために充電しようとするのかもしれない。

 こんなこと昔なら本に出して印税いんぜい稼げたかもなあ。



 その時代はまだ子供だったから別に気にしていない。

 そうでなくてもやりたくなんかない。



 条件付きの愛や条件なしのリスペクトとかみんな上から目線過ぎる。



 少し飲食店でバイトして今は別の仕事を引っ越して続けているだけの青年に何か言われたくないのは分かる。



 でもその過程で様々な世代と良くも悪くも関われたのは友達とずっといるより自信になった。



 仕事がみんな出来るわけでもしたいわけじゃないことも痛いほど知った。




 みんな戦ってる、と綺麗事きれいごとは言わない。

 見えないところで不遇ふぐうな扱いはどうしても受けるし、それは選ばれたものは回避出来てしまう。



 自分は見た目でも得をしていることをそのバイト先で知ったから引っ越した。

 今じゃ普通扱いだ。



 特別性が欲しくないといったら嘘になるけど、もう少し目標を高く持ちたいな。



 ずっと。

 ずっと何かをやらされているやり、していく方が良い方向へ行くためのステップになると思うから。



 この少ない時間は成功者の弾丸だんがんより弱いかもしれない。



 それでも負けるつもりはない。

 才能も能力もそんなものはない。



 どこかで誰かをはげますのなら、それは軽いつぶやきか一緒に気晴らしするくらいでスッキリしたこともあった。



 もうその時いた友達は連絡は取れないけど。

 彼も英雄だった。



 地味とか派手とか関係あるのかな。

 これだけみなが辛い思いをしているのに。



 だからこそ生きていたい。

 弱さは悪なんかじゃないから。

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