第七紹介:共存できない

 趣味を楽しみあっていた。



 でも好みで語る以上は止まっても進んでも会話が成り立たなくなる物でしかない。



 だれかのわがままに付き合ったその次の日、自分はその人間の連絡先を消した。



◇ ◇ ◇



 人間は霊長類の中で得意な筋肉を持つ異形いぎょうなのかもしれない。


 何かの本でそんな専門的ではない知識を得たっけ。

 大学やら専門学校にいかないとスキルアップもサバイバルも出来ないなんてどの世界の人間もじつは進歩することも進化することもない動物なんだなと分かる。



「ほらほら。確実に理由がある悪意のある人間を倒したぜ。みてみろこのつらを! 」



 シャチならともかく人間がそんなことするなよな。

 ほんと関わりが悪い人生ばかり。

 それでも腐れ縁で彼とは一緒に〝シゴト”をしているが。



 泣いてあやまってる人間も人間だ。

 さんざん弱いと決めつけた相手から搾取さくしゅして好みでかたよった本を並べるだけで役に立たない訓練を福祉という名で使っていて金額だけやたら高い自己啓発やら声のでかい自称障がい者やフェミニストを使って俺の友まで利用しておいて事務所をかまえておいてさっきまで俺達をガキだと暴言を言った。



 公的機関の中には密かに地域から『ほんとうの悪と汚れを取り除いて欲しい』と依頼いらいされていて……これ以上は言えない。



 突然権力者ややたらしぶとくて体罰をしてくる教師とかが消えたり不幸になったりした時に俺達のような組織がり出されたとだけ言っておこう。



 他はどうか知らないが俺達は強者を依頼されて倒しているだけで殺しまではしていない。



 今回も彼がやりすぎているとはいえ始末対象しまつたいしょうを攻撃しているのはこちらへの正当防衛と機関からの許可がおりたからだ。



 まったく。

 昔の特撮ヒーローと今の特撮ヒーローのいいとこ取りをした厳正で公平性がありどこか人間と言うより神の裁きのような苛烈かれつっぷりと手厚い待遇たいぐうには恐怖しか感じない。



「そいつはもうじき送還そうかんされる。放っておけ」



「ノリ悪いなあ。俺達にしか出来ない暴力だぜ? 」



「俺達は人間だ。頼むからやり過ぎないでくれよマジで。お前まで染まったらどうするんだよ」



 我が身可愛さじゃない。

 命令と正当性があれば攻撃をしてしまう彼がまるで振興宗教にハマってこのまま去ってしまうのではないかと考えてしまうさみしさがあるのだ。



 少なくとも俺達は幸せじゃない。

 配属されてたまたま同席だった彼。



 それでも人見知りでなんの体力もなかった俺をここまで強くさせてくれた。



 他のタッグからも高待遇の裏で内部争いや命令によってくらいを下げられたメンバーから命を狙われることもある。



 職権乱用しょっけんらんようなんて俺達にはできない!!



 正義なんてもう時代遅れだ。

 いくら趣味でもなるべく持ちたくない。



 SNSでエコーチェンバーになっている人間と忖度そんたくしながら生きて意味不明なルールで仲間を追い出す連中の真似を俺達がしていたら。



 このシゴトの配属だって若いうちのスキルアップだと労働が大嫌いな俺が藁をも掴む思いで入っただけのものに過ぎない。



「いつも嫌ってるくせに心配か。ならこの程度でやり過ぎだと思わないでくれ」



 彼は敵意てきいはないが強い口調で俺を止めた。



 家では気さくな彼が今後変わってしまうかもしれない。



 彼は俺と違って世直よなおしと自己満足が同時に満たされる快感がこのシゴトにはあると目を輝かせていた。



 そんな狂気でしかない彼は俺に過去を語ろうとしない。

 むしろ他の人間なら関わりをやめる。



 でもどうしてかな。

 共存できないのに共存したい。



 いずれ次の配属先が決まる。

 俺はもう辞退じたいするが、表舞台を歩いて彼に攻撃されてもきっと恨むことはない。



『彼は本当のヒーロー』だとシゴトを通して知ってしまったから。



 きっとこのままたがいを守り続ける。

 全てを言葉にせずとも世界が全ての人間が持つ人生を容認ようにんしない限り。



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