第二紹介:食いっぱぐれがない

 充実した人間を見る度におりから出られない地獄を憎む。



「お前たちは」が口癖くちぐせで「関わりたくない」が本音になる。



 あなたたちは誰かを真剣ににくんだことはありますか?



◇ ◇ ◇



 がはっ!


 通りすがりに腹を殴られることがあるなんて。

 それいらい光也みつやは身体をきたえはじめた。


 特になにかかわることがあるかわからない。

 近くの選挙ポスターに見たくもない顔があっても見ないふりをし、飲食店か書店がたつかと思ったらわけのわからない特定非営利団体とくていひえいりだんたいとかいう金の亡者もうじゃ達がいる建物に新興宗教カルトをみるような目で軽蔑けいべつしている。



 この街もすっかり強者バカまるだし温床おんしょうになってしまった。



「たすけ…て…く…れ…」



 そしてターゲットを乱暴にトラックに投げ捨てて光也みつやの仕事は終わる。



 別にころしたわけじゃなく気絶させたからいいだろう。



 フィクションでの始末屋しまつやは簡単に殺したりするが実際は気絶させて回収かいしゅうすればいいだけ。



 依頼いらい内容も単純。


『この世から消して欲しい人だからどうか』



 という身勝手なもの。

 理不尽りふじんな内容は却下きゃっかして光也みつやはなるべく正当性せいとうせいのあるターゲットをいたぶる。



 恨みは不条理ふじょうりだからしっかりと線引きする必要があるからだ。



 本物狩ほんものがりの光也みつやは日常に溶け込みターゲットを気絶させて運ぶ。



 人間は簡単に倒れないから気絶も楽じゃない。

 仕事を達成し終えた時の爽快感そうかいかんは酒よりまさる。



 今日もSNSに流れる何億稼いだだの仲間がいっぱいだの嘘の投稿に誰にも見られないところで中指を立てる。



 大量にターゲットが倒れているトラックに乗りながら今日もレッドブルを飲む。



 それが光也みつやの仕事だからだ。



【完】

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