第1話 起床

……

「……おーい」


声が聞こえるが眠気には勝てない、毛布を腰から胸もとまでに引っ張り上げる。


「……早く起きなきゃ遅刻するよ…」


肩を揺さぶられるがこうまでされると逆に起きたくなくなるってもんだ。

「もう…起きないならこうだよ……?」

スルスルと服と肌がこすれる音がする


まさか!急速に脳が覚醒しだした、だがそんな自分にかまうことなく布が床に落下する音が聞こえる。


「お、おい…何してんだよ」

「起きない君が悪いんだよ…女にこんな格好までさせて」


鼓動が早まる…だがむこうが起こすためにその気なら(ジジ)こっちも意地だ


「でもそんなんじゃこっちは起きないぞ…」

「ふーん、いいよこっちから行くから」


ズシリと腰に重みがかかる(ショ)、瞬間甘酸っぱいイチゴの香りが鼻腔をつく

「どうなっても知らないからな!」

欲情を抑えきれなくなった自分は女のほうをとっさに向き気づいた

女体ってどんなだっk




ブゥン…


[お食事の時間ですよ]

「っけ。ておい!タイミングが悪すぎるよマザー!」


首元のケーブルが巻き取られ自動的に現実から生命維持世界に引き戻される。

周りの人達は栄養を自動供給に設定しているからこんな不意のタイミングで起こされることはないのだが、自分は自身の管理用AIにお願いして、”いっしゅうかん”に一度というタイミングで経口摂取にしてもらえるようにお願いしていた。


[本来、経口摂取は効率が悪いのですよ?ましてや現実であればアーカイブから様々な食事を楽しめるというのに…]

「いいんだよマザー、この黒色のよくわからない液体が喉を通る感触が好きなんだ、それに」


トプトプと流れ続ける黒い液体を指に付着させる

「現実だとみんなが言ってる”絵”っていうものが描けないからね」


生命維持世界は自分が名付けた世界だ

現実で過ごすために存在する世界、高さと横幅が自分の背丈二人分、奥行きは三人分はありそうな部屋にチューブが何本か垂れている。

その狭い部屋に絵を描き、マザーに評価してもらう、そんな時間がたまらなく好きだった。

[これは……データベースにありませんが何を描かれたのでしょうか]

「女だよ!他夢共有スペースにあったのを見たんだ!本当は15歳以上じゃないと見れないけどコッソリ見せてもらってさ!で、どう?うまく描けてると思うけど…」

感想を求める

[適齢物以外には認知にセーフティーをかけていますが…まさかここまで……いえ、うまく描けていますよ。]

やっぱり!足をちゃんと6本にして角も描いたのが評価されたのだろう。

[さ、そろそろ清掃のタイミングですよ、また一週間後に会えますからね]

接続用のケーブルがベッドから出てくる

この時間も終わりだ


「じゃあ!またいっしゅうかんごにね!」

[ええ、いってらっしゃい]


ケーブルが首に刺さる瞬間視界にもやがかかる、さぁ現実に帰ったら次は何を見ようかな。


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自由家畜の見る夢は ヤスサケ @ahurotanaka

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