第28話 貴族のお仕事
家を借りて早一か月、のんびりライフが待っていると思った。
だが、人は働かないと生きていけないのだ。
俺達は三人で貴族の家に向かっていた。
「なんで俺が馬の面倒見ないといけないんだよ」
「仕事がないんだから仕方ないでしょうが。貴族相手なんで報酬は高いですよ」
貴族の邸宅に辿り着き、案内された先にはどこかエロそうな顔をした白馬が立っていた。
気品よりスケベさが勝ってやがる。
「なんだ、この馬。こいつ男は乗せないとかごねるタイプの馬だろ」
俺の言葉を聞いた白馬が、こっちに尻を向けると馬蹴りを放つ。
その蹴りは俺の顔面をすんでの所でかすめた。
あ、危ねえ……!
「余の大事な馬になんて態度じゃ。打ち首にするぞ」
その言葉の元を振り返ると、立派な服を着たデブが立っていた。
「あれがベリー子爵です」
フィンが俺の耳元で囁く。
「あの体じゃこの馬乗れねえだろ。売った方がいいんじゃ……」
俺はフィンの耳元で囁く。
「処されたいか?」
どうやら聞こえていたようだ。
「ベッシは余に似て気品があるから、お前のような貧乏人には分からんのだろう。我が家の歴史は長く——」
「俺のようなイケメンが乗れば、この馬の少しは凛々しく見えるだろ。見てろ、見事な馬捌き」
俺はとりあえず白馬に乗る。
すると次の瞬間、白馬が走り出す。
「うおおおおおおおお! ちょっとストップ!」
俺の言葉も聞かず、白馬は走り出した。
◇◇◇
「おう、姉ちゃん。俺と飲まねえか?」
「困ります……」
ナンパの声がリエン街に響く。
リエン街においてナンパなど日常茶飯事であるが、ナンパを受けた少女は珍しい服を纏っていた。
黒を基調としたフリルやレースのあしらわれた、お姫様のようなドレス。
ワインレッドのリボンがワンポイントについたその姿は現代ならゴシックロリータと言われる服装である。
そんな可愛らしい服を纏うのはサラサラの金の長髪をパッツンと切りそろえた褐色肌のダークエルフ。
驚くほど整ったその美貌にゴシックロリータのドレスは不思議とよくかみ合っていた。
少女は手を掴まれ困惑している時、疾風の如く現れた白馬がナンパをしていたおっさんを撥ね飛ばす。
「うおっ! すまん、おっさん! 俺は貴族・ベリー子爵だあああ!」
ヨイチは全ての罪をベリー子爵に擦り付け、そのまま白馬で走り抜けた。
「ベリー子爵……?」
少女はそんなヨイチを見て、小さく呟いた。
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