第24話 ゴーストハウス
「家借りたいけえ」
ある日、突然ルナが言い始めた。
現在俺達三人は格安宿のタコ部屋で雑魚寝である。
「そんな金ある訳ねえだろ」
「もう雑魚寝は嫌じゃ。あそこ狭いけえ」
それは確かに分かる。現代っ子の俺もかなりしんどい。
「とは言え、三人分のお金を考えると、借りても変わらないのでは?」
一理あるのか?
俺は首を傾げるも、前世ですら相場を知らない俺はフィンの言葉を信じギルドに勧められた不動産屋に向かうことを決めた。
「こんな大金出せるかあああ!」
俺はリエン街一軒家の相場を見て、頭を抱える。
まだ三人雑魚寝の方が安い。
「帰るぞ、ルナ、フィン」
「お客さん、ちょうどいい物件がありますよ」
そう言って不動産屋に紹介された物件は相場の半額以下である一軒家である。
「ヨイチさん、明らかに安すぎませんか?」
「バカヤロー、これが適正価格だ。見に行くぞ」
「では、早速行きましょう」
不動産屋に連れられて辿り着いたのは、少し古いが綺麗目な一軒家。
「綺麗じゃなあ」
「良いところじゃねえか」
俺は想像より立派な家に笑みがこぼれた。
「では、私はここで。中は開けておきましたので」
不動産屋はそそくさと帰っていった。
「そっそく中に入るか」
中に入ると少し埃っぽいが、タコ部屋より百倍立派である。
「うわああああああああああ!」
フィンの叫び声が聞こえた。
「なんだ、ゴキブリでもいたか?」
俺はフィンの元に向かうと、腰を抜かしたフィンがある部屋の奥を指さしている。
そこには少しだけ存在感の薄い男が立っている。年は四十程ほどのそこらへんに居そうな感じのおじさんである。
「あれ、透けてますよ?」
俺は謎の男に声をかける。
「どう見ても幽霊でしょうがああああああ!」
フィンが叫ぶ。
「ばかやろー、失礼だろうが! すみませんねぇ、うちのものが」
男はいいんですよ、とジェスチャーする。
「フィン。世の中にはこれくらい存在感が薄い人もいるんだよ!」
「薄いというか、透けてるんですけど! 足もないんですけど」
フィンが指さした先を見ると、確かに男には足がなかった。
「ばっか! 足ない人だって世の中にはいるの! 最近はそう言うの敏感なんだから!」
俺はとりあえず怒鳴っておく。
ん? なんか肩が重くなったような。
「ヨイチさん……憑いてますよ?」
フィンが青い顔で言う。
背後にはにっこりと笑う男が憑いているように見える。
「気のせい、気のせい……って、重いんだよコラー!」
俺の裏拳は男に当たることなく空を切る。
「やっぱり透けとるけえ」
ルナも口を空けて固まっている。
そして、なぜか男は段々大きくなっている気がする。
「なんか大きくなってません?」
「逃げろおおおおおおお!」
俺達は逃げた。必死で逃げた。
俺達は違う部屋に隠れる。
「どうするんじゃあれ?」
「あの不動産屋、幽霊が憑いていること隠してやがったな。どうするも何もねえだろ。早く逃げねえと。大声あげたら喉乾いた。何かねえか」
すると、コップに入った水を渡される。
「フィンにしては気が利くじゃねえか」
俺はそう言って、水を一気に飲み干す。
「え? 僕じゃありませんよ?」
「何言って……」
俺は無言で横を見る。
するとそこにはにっこりと微笑む幽霊の姿があった。
「うおおおおおおおおおおおおおお! 悪霊退散! 悪霊退散! フィン、今すぐ十字架買ってこい!」
俺はパニックになりながら指で十字架を切る。
「あのぉ……話聞いてもらってもいいですか?」
一方、幽霊は流ちょうに言葉を発した。
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