第13話 ドルトムント改良計画

「オークの報奨金があるはずじゃけえ。食わせろ」 


「寝言は寝て言え。ツケの支払いだけでなくなったわ」


 ルナのお代わりの交渉をヨイチはすげなく断る。


「ランク上がったのに、仕事は変わりませんねえ」


 三人のランクはオーク討伐の功績によりDランクに上がった。

 だが、生活は特に変わっていなかった。


「デカブツを活かせる仕事がなさすぎるからな」


「この間役に立ったじゃないですか!」


「あれ以来役に立ってねえだろうが! 町中の雑用であんなデカブツ使えるか! あのデカブツをパワーアップさせるしかねえか」


「パワーアップですか?」


「俺達が最強のロボットを作ってやる」


 三人はドルトムント強化のため街の外の森へ向かった。


「とりあえずドルトムント出してみろ」


「分かりました」


 ヨイチの言葉を聞き、フィンはドルトムントを召喚する。


「どうですか! 美しいでしょう?」


 ドルトムントを見て惚れ惚れとするフィン。

 そのドルトムントの元へ歩き出すルナ。


「まずこんなでかくて重いからすぐに動けなくなるんじゃけ。時代は軽量化じゃ」


 ルナはそう言うと、ドルトムントの片腕をもいだ。


「ドルトムントおおおおおおお! なにやってんですかああああああああああ!」


 フィンが悲鳴をあげる。

 だが、ルナはフィンを無視してドルトムントを見つめる。


「背中の翼も飛べないけえいらんじゃろ」


 ルナはそう言って、翼をもぐ。


「ああああああああああああああああ!」


 フィンがただ叫び声をあげる。


「片腕だけだと流石にバランス悪くねえか?」


 ヨイチが片腕の翼を失ったドルトムントを見て言う。


「そうですよ!」


「仕方ないのう」


 そう言ってルナは残りの腕ももいだ。


「違うだろおおおおおおおおお!」


 フィンは泡を噴いて倒れた。

 ヨイチは両手と翼を失ったドルトムントを見つめる。


「ここまで来たら頭もいらねえだろ」


 ルナはその言葉を聞き、頭を取る。

 そこには両腕と顔と翼をもがれたロボットだった何かが残った。


「僕の愛しいドルトムントが……」


 気絶から復帰したフィンが泣きながら残った足を抱き締めている。


「動かしてみろ」


 フィンが死んだ顔でドルトムントを動かす。

 その稼働時間十八秒。


「伸びたじゃねえか!」


「両腕なくて戦えるわけないでしょうがあああああああああああ!」


「フィン、教えてやる。脚は手の三倍力があるらしい。ドルトムントはこれから足技の達人になるんだ。お前達ならできるさ」


「……頑張ってみる!」


 フィンは両腕を失ったドルトムントを動かす。

 が、すぐにバランスを崩し転倒してしまった。


「やっぱ無理か」


 ヨイチはぽつりと呟いた。

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