第12話 パーティじゃないか

(慎重に……)


 そう考えているうちに、ハイオークが叫ぶ。


「ブオオオオ!」


 その叫び声と共に、部下のオーク達がフィンの元へ向かって走り始めた。


(僕が操っていることに気付いたのか!? どうすべきだ? オークだけでも狙うか? それじゃあハイオークまで倒せない。分からない)


 フィンは混乱し、頭が真っ白になる。


(やっぱり僕は役立たずなのか? ずっとゴーレムにばかり執着していたから?)


 襲い来るオーク達を見て、フィンは覚悟を決める。


(違う! 僕は殺されても、ハイオークだけでも道連れにする!)


 ドルトムントを動かそうとした瞬間、背後から知った顔が走って来た。


「おらああああああああ!」


「ヒーローの登場じゃけえ」


 ヨイチとルナがフィンに襲いかかるオークを斬り倒す。


「あれは、無職とルナだ! あの大食らいは強いぞ!」


 二人の登場に声があがる。


「雑魚は俺達が狩ってやる。ボスはお前がやれ。ドルトムントなら……ドラゴンだって倒せるんだろ?」


「……はい!」


 フィンは二人の顔を見て安心している自分に気が付いた。


「行け、ドルトムント!」


 その命を受けてドルトムントが巨体を活かした大きな一歩で距離を詰める。


「ブオ……」


 危機感を覚えたハイオークは本能的に逃げ始めた。


(速さはドルトムントの方が速い。だが、間に合うか?)


 フィンが不安を覚える。


「必殺・レンガ投げ!」


 ヨイチの投げたレンガが、ハイオークの背中に直撃する。 

 倒れることはなかった。だが、バランスを崩し、一瞬動きが止まる。

 その隙にドルトムントの渾身の一撃が叩き込まれる。


「ブッ!」


 その一撃は、ハイオークを一撃で葬り去った。


「うおおおおおおおおお! フィンがやりやがったあああああああ!」


 周囲から歓声があがる。

 こうして突然起こったオーガの騒動は幕を下ろした。


「薄情な人達だと思っていましたが、来てくれたんですね!」


「当たり前だろう? パーティじゃないか」


「ヨイチさん……」


 ヨイチの言葉に、フィンの瞳が涙で潤む。

 続々とギルドからも応援が現れる。

 ギルドの職員も討伐の報告を聞いてやってきたようだ。


「ヨイチさん、ありがとうございます! 本当にオーク倒せるくらい強かったんですねえ。後で特別依頼の報酬を渡します」


 ギルドの受付嬢がヨイチに頭を下げる。


「あっ。ハイオークもうちで倒したんで、そちらもちゃんとお願いしますね」


「はい。今回のことでランクも上がると思うので楽しみにしてくださいね」


「はーい」


 淡々とやり取りをするヨイチ。


「え? 依頼? 僕が心配で助けに来てくれたんじゃ?」


「当たり前だろうが、こんな化物仕事以外で戦うかよ。死ななくて良かったな、フィン」


 ヨイチはそう言ってフィンの肩を叩く。


「本当じゃ。分け前はうちが五割じゃ」


「馬鹿言え。3割だ。飯屋のツケいくらあると思ってんだ」


「帰るけえ」


 二人はさっさとフィンを置いて帰っていった。


「いや、いいんですけどね……」


 フィンは何かを失った訳ではないのに、二人から何かを返してほしくなった。

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