第11話 金にならない仕事はしない主義
それから俺達三人は、リエン街で様々な雑用をして生計を立てていた。
今日にいたっては家の掃除であり、今依頼を終え冒険者ギルドに戻る途中である。
「もっと派手な依頼を受けたいもんじゃなあ。御飯も満足に食べれんけえ」
「文句言うんじゃないよ。俺はまだEランクなんだからそんな凄い依頼は受けられん」
受けてもこのパーティで勝てるのかは疑問である。
「派手な依頼ならドルトムントも活躍できるのですが」
「ならもっと駆動時間延ばせやあああああ! 十秒で役に立つかああああああ!」
雑用ではあのでかさでは使い道がなく、十秒じゃ魔物討伐依頼でも一体倒せれば良い方である。
「あの大きさだとあれが限界なんです」
「あんなでかさ要らねえだろ。二メートルくらいにしとけ」
「そんなのは古代ゴーレムじゃありません!」
変にこだわりが強い……。
そんな時、背後から必死な顔で走る男がやってきた。
「街の北部にオークの群れが現れた! どうやら森から来たらしい。お前等逃げろ!」
「えっ、北部に!? 皆、助けに行きましょう!」
フィンが北を見て叫ぶ。
「なに!? よし、逃げるぞお前等」
「金にならない仕事はしないけえ」
俺とルナは話を聞き、すぐさま撤退を開始した。
◇◇◇
「なんて逃げ足が速いんだ……」
二人の一瞬の逃げ足に、フィンはあっけに取られていた。
「パン屋のご主人が危ない。行かないと!」
フィンはいつもお世話になっているパン屋のために北部に向かった。
北部に向かうにつれ、悲鳴が聞こえてくる。
北部からは煙が浮かんでおり、遠くからでも被害が伺えた。
心配になる気持ちを抑えて、パン屋の元へ走る。
幸運なことに、まだパン屋は破壊されておらず残っていた。
建物の中には、鉄の棒で武装して警戒する主人の姿があった。
「無事だったんですね! 早く逃げましょう」
「フィン君、来てくれたのか。ありがとう。気持ちは嬉しいが、君はもう逃げなさい。私は……まだやることがある」
「そんな! もうすぐそばまで来ているんですよね!?」
「この店は私の宝なんだよ。最後はこの店と一緒に……」
主人は覚悟の決まった声色で言った。
「分かりました。私が止めます」
フィンは今までの恩を返す時が来たのだと、そう考えていた。
フィンはそのまま騒ぎのする北部を目指して走る。
するとすぐ、オークの群れと戦っている冒険者達の姿が見えた。
二十を超えるオークの群れを従えるのは一回り大きいハイオークである。
周囲には既にいくつものパーティがやられていた。
「追加の応援が来てくれたぞ!」
一瞬歓声があがるが、フィンの顔を見て顔を歪ませる。
「駄目だ! ゴーレムオタクのフィンだ!」
「フィン、逃げろ。お前のオモチャじゃ勝てねえだろう?」
「オモチャじゃない。ドルトムントです! 召喚魔法(サモン)・泥戦士(ドルトムント)!」
フィンの言葉と共に、ドルトムントが街の一角に召喚される。
(時間はないけど、頭だけを潰せば勝てるはずだ)
ハイオーク達も突然の巨体に動きが止まっている。
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