第7話 笑顔が絶えない職場です、のブラック感は異常

『仲間募集

 剣士と武闘家あり。笑顔が絶えないパーティです。

 シフト :要相談

 募集条件:なし                』


「なんか書き方がブラック臭いんじゃが!」


 俺の作った張り紙を見て、ルナが言う。

 確かにヘローワークに延々と残っているバイトとかこんなイメージあるわ。

 募集条件なしが逆に怪しさ増しているっていうか……。

 だが、条件までつけると誰も来ないのが目に見えている。


「お前の大食らいが知れ渡っているからだぞ」


「ヨイチが無職だからに決まっているじゃき」


 醜く押し付けあう二人。

 だが、何も生むものはない。精々借金くらいである。


 既に張り紙をして五日が経とうとしているが、まだ一人すら来ていない。

 昔から居る奴等からはうちのパーティは終着点とすら言われている。

 二人でも何かしらの仕事をしなければ、ルナの食費すら賄えん。働くか。


「あの……パーティ募集の張り紙を見て来たんですが」


 背後から声がかかる。

 来た! 俺は逃がすまいと高速で振り向く。


 そこには綺麗なローブを纏った金髪の若い男である。

 顔は整っており、どこか品を感じる。


「フィンと申します。剣士と武道家と聞いて。あらゆる魔法を使える魔導士のジョブですのでお役に立てるかと」


 魔導士!

 魔法使い系のジョブは貴重である。


 魔力適正がないとなることもできないため数が少なく、パーティに一人居ると大変助かると聞いた。

 やはり俺の才能は分かるやつには分かるんだよなあ。フィン君。君、見る目があるぜ。


「ヨイチは剣士じゃなくて、無——」


「お前は黙ってろ!」


 俺はルナの口を抑えると、バナナを投げる。

 ルナが食べている間に話を進めよう。

 こいつは逃がしちゃあいけねえ。


「フィン君、うちも何人も面接している状態でねえ。今選考中なんだよ」


「そうなんですか」


 周囲が笑っているが、気にせずに進める。


「だが、君のその物腰や佇まいから将来性を感じた。是非パーティに入って欲しい」


 将来性なんてさっぱり分からん。


「本当ですか!」


「ああ。うちのパーティは契約制なんだ」


 俺はそう言うと、契約書を取り出す。そこには最低半年間は契約を破棄できないと記載してある。

 すぐに抜けられちゃ困るんだよ!


「契約書とは、珍しいですね」


 フィン君が訝しげな表情を浮かべている。

 やりすぎたか?

 いや、ここはそのまま騙しきるぞ!


「パーティに慣れるのにも時間がかかるだろう? お互いすぐに相手を切らないために、ね」


「なるほど、分かりました!」


 そう言って、フィン君は契約書にサインをした。

 契約書とった!

 これで逃がさねえぜええええええええええええ!


「今日は軽くでいいから、実力を見せてくれないかい?」


「分かりました!」


「わしはルナじゃ。よろしゅう」

 ルナと二人の時は不安だったが、まともそうな奴が入って良かった。


 俺達はリエン街を出て、魔物の居る森へ向かった。

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