第5話 え? 僕のせいなんですか?
「あの女……獣人か?」
クドーが部下に尋ねる。
「やたら強いんですが、大食らいでギャンブルもするせいでうちに金借りてるんです」
「ほう……強えのか」
クドーは獰猛そうに歯を見せて笑った。
◇◇◇
翌日、俺は冒険者ギルドで安い定食を食べていた。
濃い味付けで労働後の体に染みるのだ。そして、安い。
いつもだとルナが馬鹿みたいにいくつも定食を食べているんだが、今日は見当たらないな。
「よう、無職。ルナを探しているのか?」
顔見知りの冒険者が声をかけてきた。
「探してねえよ」
「ルナの奴、クドーファミリーに借金のカタに捕まっちまったらしい」
「まじかよ」
相変わらずリエン街は治安が悪いな。まあ、あいつなら大丈夫だろ。
「なんでも最近トラブルがあった際、クドーに目をつけられたらしい」
「へえ、そうなんだ」
トラブル……まさかな。あの程度トラブルなんて言わねえよ。
「土木作業中の出来事だって聞いたぜ」
他の奴の言葉の後、皆の視線が俺に集中する。
「あれは野生のゴリラだから、捕まえられねえだろ」
ルナを捕まえるには、十人じゃそこらじゃ不可能だ。
「それが、相手も本気で数十人連れてきてたらしい」
「……分かったよ!」
俺は飯を食べ終わると、席を立つ。
「おい、無職。行かない方がいいぞ! 下っ端はともかく頭のクドーは元C級冒険者らしい」
「……まだ貸しを返してもらってないからな」
俺はそう呟いた。
◇◇◇
リエン街の裏路地。そこには十人を超えるギャングが倒れていた。
「畜生、十五人はやられたぞ。とんだバケモンだぜ」
クドーが地面に唾を吐く。
その目線の先には、猛獣用の檻に入れられたルナの姿があった。
「クドーのアニキ、このガキどうするんですか?」
「綺麗どころで強い獣人を探している変態貴族が居てな。高く売れるって訳よ」
「おなかが減って動けないだけじゃ。飯さえ食えばお前らなんてぼこぼこにしてやるけえ」
ルナは資金難からご飯を満足に食べることができず、ぐったりとしていた。
「なんだ、活きがいいな。いくら吠えてももう終わりだ。お前のような野良を助けに来るほどこの街は甘くない」
「そんなこと、知っとるわ」
その時、背後の物音を察知し、金髪の男クドーが反応する。
「こんな裏路地に……誰だ?」
「あいつは!?」
ルナが大声を上げる。
その目線の先には、ぼろ服を纏ったお爺さんが立っていた。
「「「誰だ?」」」
お爺さんを含めた皆が首を傾げる。
「この爺、殺しますか?」
部下の一人が、爺さんの首根っこを掴む。
「ひいいい!」
お爺さんの叫び声が響く。
「止めとけよ。今時流行らねえぜ、人攫いなんてよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます