第2話 未解の物
その声の意味は花子には分からないが、その音色には何かしらの馴染みがあるみたい。
まるで生物の声ではなく、スピーカーから発せられる電子音のようだ。
花子は気を引き締め、慎重に音の発生源を見極めた。どうやら、左前方から聞こえてくるようだ。
そこを見ると、薄暗い隅に青白く光る何かが床に転がっている。
花子は鋭利な骨片を踏まないように注意しながら、川を渡り、その光る物体のそばにやってきたら…
「タブレット?!」
その全貌を見た瞬間、花子の心にはこの言葉が浮かんできた。
花子はしゃがんでその物体を詳しく観察した。
明らかに光を放っているのは正面の画面である。怪しいことに、そのスクリーンは非常に画面占有率が高くて、高技術の製品だと言える。
彼女はそのタブレットを手に取ろうと試みると。
すごく軽い。これは花子が最初に感じたことだった。
「これは明らかに地球の技術よりも高度だ。この世界は一体どうなっているんだ?」
花子の心にはこの世界への興味が深く根付いていたため、未来への恐怖を忘れるほどだった。
「サリルヒ~イイジウイ、ユノマリク」
タブレットは引き続き奇妙な音声を発している。
画面には理解不能な文字が並んでいるが、中央には手のひらのアイコンが表示されており、指紋認証かもしれないと彼女はそう思うようになった。
花子は確信が持てなかったけど、試しに手のひらをそのアイコンにかざしてみた。しかし、ほぼ瞬間的に、画面は赤く点滅し出した。
彼女は驚いてすぐに手を引っ込め、暫く画面は元の状態に戻った。
花子の前世の記憶からすれば、これは認証失敗を意味しており、再試行を続けるとタブレットがロックされる恐れがある。
彼女は試行を諦め、代わりに画面上の文字を調べ始めた。
「この世界に多民族が存在するなら、この認証画面には言語オプションがあるかもしれない。」
実は彼女の心の中には地球上の言葉があるのではないかという贅沢な願いさえあるが、明らかに非現実的な願望である。
確かに画面には多くの選択肢が表示されているが、その文字は全て円や三角形などの
とりあえず、彼女は一つ一つの選択肢を試すことにした。
「これは多分認証方法、これはアカウント選択?これは画面のテーマ選択?」
花子は試しながら独り言を呟いた。
たぶん、自分もますます独り言を言うようになっていることに気付いていないだろう。
「これがそうかもしれない。」
花子が右上の選択肢を試したとき、画面全体の文字が変わった。
「この世界には十数種類の言語があるようだ。」
彼女は画面上の十数個の選択肢を見ながらそう呟いた。
正確に数えてみると、その言語は総計で十五種類あるみたい。
しかし、その十五種類の言語の中には花子が理解できるものは一つもなかった。これは予想していたことだが、やはりとても辛いものだ。
目の前に多くの謎を解く鍵があるのに、手に届かないのは悔しい。
「くそぉ……」花子は自暴自棄な声を上げた。
「くそっ、ここで終わりなのか?」
彼女は自分の本性を解放するようにため息をついた。
放棄しようとしたとき、花子は選択肢の最下部に未選択の空欄があることに気付いて、好奇心が引き起こされた。
彼女がその空欄を選択すると、画面上の文字がすべて消え、残ったのは枠とアイコンだけだった。
同時に、タブレットから奇妙な生物の鳴き声が聞こえてきた。花子はその声を人間の喉では出せないものだと感じる。
また、残ったアイコンをクリックすると同様に奇妙な声が発せられる。
「この言語は文字がなく、音声だけなのか?」
花子は大胆に推測した。
彼女は画面上を素早くタップし続け、タブレットの発する音声はますますカオスになった。
「ははは……」
花子は思わず笑い出した。
残念ながら、ここには彼女の笑顔を楽しむ人はいない。末世の世界に降臨した聖女の純粋な笑顔を誰が拒むことができないはずなのに……
短い楽しみの後、花子はタブレットを脇に挟んだ。
無限の時間の中で、この物体を解明する方法を見つけることができると彼女はそう信じている。
次に何をすべきか?
空腹の腹が答えを彼女に教えてあげた。食べ物を探さなければならない。
この暗い川の反対側は袋小路のようで、花子は元の道を戻ることにした。
「不死の体って実際にこんな不便なものだか。」
彼女は歩きながら愚痴をこぼした。
「そうだ、不死がどのようなものか先に研究すべきでは?」
突然ある考えが思いついてきた。
少なくとも、いくつかのことを確認する必要がある。
まずは自分の体が傷ついたり障害を負ったりするかどうか、次に飢えや渇きがリスクをもたらすかどうか、そして最後に自分がこのままの姿を永遠に保つかどうかだ。
外にいたとき、高温や硫黄に満ちた空気に居ても傷つかなかったが、これは私の体が非常に強い治癒能力を持っているということだろうか?
痛みに対して麻痺しているのだから、飢えや渇きにも同様に対処できるのだろうか?
……
一連の疑問が花子を悩ませ続ける。
この世界は謎だらけであるばかりか、花子自身もまた謎に満ちている。
「飢えた状態で実験してみようか。」
大胆な考え。
「飢えは渇きや自傷行為よりも受け入れやすいから、飢えから自分の限界をテストするのも悪くない。」
思えば思うほどこの計画の現実性が十分にあると感じる。
実際、彼女は食べ物を見つける希望がほとんどないからだ。
彼女は楽観主義者ではない。水の存在が生物の存在の可能性を示唆しているとはいえ、悪い方向に考える傾向がある。
花子は歩き続け、元の円形の空間に戻った。
今回は、時計回りにすべての通路を探索することにしよう。
これは危険だが、無限の時間を持つ彼女にとってはどんな危険も問題ではない。
花子は大胆に次の通路に入り、再び冒険を始めた。
この通路は下に向かっており、両側には依然として松明が灯っている。
道中が非常にスムーズ、平らな地面と適温で、ここが「失敗した世界」であることを忘れさせるような感じがする。
底にたどり着くと、広々とした空間が広がっている。
先ほどの空間よりもさらに巨大で、天井が見えないほど高く、対岸まで歩くのにかなりの時間がかかりそうであるくらい。
地面には巨大な魔法陣のような模様があり、デザインが非常に複雑で、深い溝を掘って作られているみたい。
誰がこれを作ったのだろう?その目的は?
花子は慎重に魔法陣に足を踏み入れ、その溝を覗き込んだら。
血。
その溝には一層の固まった血があり、長い年月を経て酸化し黒ずんできた。
注意深く見なければ地面そのものの色と見間違うほどだ。
背中に寒気が走り、ここが何らかの呪術の場であることを示しているのだろうか?
花子は迷信を信じないが、この見知らぬ世界では話が違う。
少し落ち着きを取りもどした後、彼女は頭を上げて前を見ると、魔法陣の中央に石台があり、そこに人形のようなものが横たわっているのを見つけた。
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終焉まで異世界末世を旅行する花子 白松秋日 @shiromatsufuyu
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