終焉まで異世界末世を旅行する花子

白松秋日

第1話 始まり

 「……」


 花子はなこの目の前の光景は、この言葉にふさわしいものだ。


 大地は何か巨大な力で引き裂かれたかのようで、開いた裂け目は地球で「世界一」の名を冠されても問題がない。


 その裂け目には、水ではなく、煮えたぎる溶岩が流れ、時折炎を吹き上げている。


 足元にあるのは柔らかい土ではなく、固い黒い岩である。


 むしろ土というものは存在していないかのようだった。


 濃厚な大気が空を覆い、見えるのは真っ赤な光景だけだ。


 あちこちに巨大な竜巻が立ち上がり、まるで天柱のように赤い天穹を支えている。


 花子は隆起した絶壁の上に立ち、淡い青色の長い髪が肩に垂れている。


 澄んだ青い目に映ったのは逆に黒と赤である。


 白いワンピースと温かな白い肌、小さな足が粗い岩の上に立っている。


 まるで小さな天使が苦難の世に降り立ったかのようだった。


 しかし、その実態は罪であった。


 そう、花子は「罪」を背負ってここに来たのだ。


 死後、天国に昇るのは当然のことだ。


 だが、花子は天国で罪を犯してしまった。


 花園の「生命の果実」を盗み食いした彼女は、不死の力を得たが、その代償として深い罪を背負うことになった。


 その罪の名は「存在の罪」、これは今の天国の住人が犯せる唯一の罪である。


 魂が不死の天国では、魂に苦痛を与えることができないため、罪と刑罰は存在しなかった。


 しかし、これは花子が罪を犯す前の話である。


 不死の肉体を持つ花子にとって、失敗した世界に流されることが罰となれた。肉体には刑罰が与えられるからだ。


 人間と天国をつなぐ断罪者は断罪書を下し、花子はここに投げ込まれた。


 しかし、ある意味では抜け道があったかも。肉体は絶え間ない苦痛に晒されていると麻痺してしまうため、花子は痛みの中で気を失い、長い間昏睡していた後、生き返った。


 「誰かいるのか?」花子は手をメガホンのようにして前方に叫んだ。


 「失敗の世界」には様々な種類があり、ここに分類されるのは、創造主が世界に様々な変数を加えたり調整した結果、生命が大幅に減少したり消滅したりした世界である。


 したがって、見る限りではここは既に生き物が滅びた状態を超えているように見えるといっても、花子がいる世界は必ずしも無人の世界だとは限らない。


 「誰かいるのか?」今度は花子は別の方向に叫んだ。


 花子はなぜそうしたのか自分でも分からないが、恐怖を感じていたので、誰かを求めたくなったのかも。


 もちろん、彼女に応えるのは無限の溶岩の噴出音と風のうなり声だけだった。


 花子はここがどこなのか、なぜこうなっているのかを知りたい。


 苦痛の中で昏睡している間、花子の頭には様々な理由で滅びた世界のイメージが浮かんでいた。


 戦争?自然災害?滅世の魔法?


 「失敗の世界」となる理由は様々である。


 花子は少なくとも探索したいと思っている。未来の無限の時間に対する恐怖を感じていたので、少なくとも現在のいくつかの課題を設定し、自分の注意をそらすためだ。


 何度か試みた後、花子は叫んで人を見つける方法を諦めた。


 彼女は周囲を見渡し、自分が立っている場所が高台であり、四方が絶壁であることに気付いた。


 これは彼女が高台から離れることがほとんど不可能であることを意味している。溶岩を渡る冒険をしない限り。


 彼女は既に高温の痛みや汚れた空気に耐えていたが、溶岩は明らかに異なる。


 なぜなら、彼女は溶岩が彼女の皮膚を焼くかどうかを確信できないからだ。「生命の果実」の効果は彼女に不死の肉体を与えただけだった。


 しかし、その肉体が不具になる可能性は排除できない。


 この肉体は既に非常に厳しい試練に耐えていたので、明らかに強化されているが、未知の要因はまだ多すぎる。


 花子は崖の端を慎重に歩きながら、見えない向こう側に他の場所に通じる道があるかどうかを確認しようとした。


 まだ足の裏が痛みに慣れていないのか、道に散らばる小石や岩の突起が花子の神経を刺激している。


 花子の内心の感覚では、約30分ほどで一周を見終えたようだった。


 どこにも出入り口はなかった。


 花子は絶望感を覚えてきた。道のない高台に直面するだけでなく、口渇感があることにも気付いた。


 天国ではこんな感覚はない。


 「終わりだ、私は体力が尽きて昏睡し続けるだけだろう。」花子は心の中でそう思った。


 「そうならば、この肉体を持つことに意味がないのではないか?」


 後悔の感情がまた湧き上がってきた。もし「生命の果実」を盗み食いしなければ、こんなことにはならなかったのに。


 自暴自棄の気持ちで、花子は高台の中心へと歩き出した。


 高台の真ん中に到着すると、四角い穴があることに気付いた。明らかに人造物だ。


 しかも中には下へ降りる階段があり、壁には奇妙な松明が刺さっている。かなりの時間が経っているはずなのにまだ燃えている。


 彼女は階段を下りていき、温度がどんどん下がっていくのを感じた。


 冷たささえ感じるほどになってきた。


 彼女は両肩を抱きながら、さらに下へと進んでいる。


 最下部に到着すると、掘り出された広々とした円形の空間があった。花子はこの空間が異常に発達していることに気付いた。周囲にはどこへ続くのか分からない通路がいくつかある。


 彼女は石を拾い、自分が来た通路の壁に印をつけ、迷わないようにするためだ。


 そして、一つ一つの通路を覗いている。


 「シャーシャー」一つの通路から水の流れる音が聞こえてきた。


 「え?」花子は思わず声を上げた。


 こんな世界に水があるとは思わなかったので、彼女は急いで印を付け、音のする方へ進む。


 その通路の終わりに到着すると、そこには地下水流がある。


 彼女はその水が清潔かどうかを気にせず、手で水をすくい上げて口に運ぶ。


 花子はこんな異世界で水を見つけることがこれほど幸せなことだとは思わなかった。


 彼女は再び生きる希望を燃やした。


 突然、 花子は水をすくう動作を止め、何かを見つけたかのように見つめた。


 彼女はそれを取り出してよく見ると、それは白い骨だと気づいた。何の生物のものかは分からない。


 彼女は再び地下水流を見返すと、河底には骨がたくさんある。河底が白いのはそのためだったのだ!


 吐き気を覚えてきた。自分が飲んでいたのは、骨に浸かった水だ!


 彼女は嫌悪感をこらえ、水の中を探り続け、たくさんの白骨を見つけた。彼女はそれが何の生物の骨なのか知りたかったのだ。


 その中には人間の頭骨らしきものもあった。


 これは、この世界には人類に似た生物が存在していたことを示している。しかし、彼らが知性を持っていたかどうかは分からない。


 彼女はさらに探り続け、文字が刻まれた亀甲のようなものを見つけた。


 前の発見と合わせて、ここには確かに知性を持つ生命が存在していたことが分かる。


 花子は河の中を探索し続け、まるで金を探す採掘者のようだった。しかし、花子は「骨掘り者」と呼ばれるべきだろう。


 最後に、彼女は文字が刻まれた亀甲を7、8枚、人間の頭骨を十数個見つけた。


 最も役立ったのはワニの皮のような水袋で、花子はそれを内外ともに洗い、満水にして腰に紐で結びつけた。


 「骨に浸かった水でも、飲めないわけではない。」花子はそう思う。


 結局、花子はもうこの地球の礼儀を守る必要はなかっただろうね。


 「クォリナハ、フィーエルヤ、ル・イスト・ハルフデム」奇妙な声が突然響き、何かの言語のようだ。少なくとも無意味な音ではない。


 花子は一瞬で恐怖を感じた。





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