第10話.妹ズ


「・・・・・・・・・・・・ん。」

「んー。美鈴はなんでも似合うな・・・・・・。やっぱり顔もスタイルもずば抜けて良いから・・・。羨ましいな。」

「・・・・・・そんな事ない。つーちゃんはおっぱいでかい。身長はおにぃと同じぐらい。」

「ばっ!!おっぱ・・・・・・!!」


 あまりの恥ずかしさに自らの胸を両手で隠す紬。

 美鈴は表情筋死んでるのか無表情で紬の胸を何故か恨めしそうに見るが紬は頬を朱に染めギュッと目を瞑っていた。


「おにぃ・・・・・・。おっぱい好きだった。」

「・・・・・・へ?奏多さんが?」

「ん・・・。牛女にデレデレしてた。」

「牛女・・・・・・?」

「ん。おにぃの幼なじみの・・・。」

「あ、もしかしてみやびさん?」

「そう。おっぱいでかいから牛女。」

「ひどい呼び方だな・・・・・・。それにしてもそうか・・・奏多さんは胸好きか・・・・・・。」

「・・・・・・?おにぃがどうかした?」

「ん?あ、あぁ・・・何でもない。」


 少し目を細め紬を見ていた美鈴だったが、どこからか漂ってきた美味しそうな匂いに鼻をスンスンと鳴らしてそちらを見る。


「・・・・・・クレープ。」

「はぁ・・・本当に食べるのが好きだな美鈴は。」

「ん。つーちゃん。いこ。」

「あ、ちょ、おい!」


 手を握られ美鈴に引っ張られクレープ屋へと誘導される。


「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか??」

「チョコバナナ・・・・・・。」

「あーじゃあ、チョコバナナ一つと3種のスイーツホイップでお願いします。」

「かしこまりました。」


 代金を二人で先に払い数分待つと、クレープを手渡され美鈴にチョコバナナのクレープを渡し、近くのベンチに腰を下ろす。


「いただきます・・・・・・。」


 むぐむぐむぐと、ハムスターばりの頬張りを見せる美鈴に小動物へ向ける可愛さを感じる紬。

 表情筋が死んでいるのが残念だが、それも相まって更なる可愛さを生んでいるのかもしれない。

 美鈴のほっぺについたクリームを、何も言わずに親指で拭い、ペロッと舐める紬。


「ん・・・・・・。ありがと。」

「どういたしまして。ったく。世話が焼けるな。」

「・・・・・・つーちゃん優しいから大好き。」

「んなっ!お、おま・・・。」


 頬を赤らめる紬。


「・・・・・・・・・・・・。」


 なるほどそういう事か。そう察した紬は、自分のクレープを美鈴の口元へ近づける。

 そうすると、はむっ。と小さな口で食べるのが美鈴。


「・・・・・・美味しい。でもさっきの嘘じゃない。つーちゃんは大好き。」

「ふ、ふん。騙されるわけねえだろ。食い終わったらショッピング付き合ってもらうからな。」

「ん・・・・・・。私も買う。荷物はおにぃに持ってもらう。」

「そうだな・・・・・・。流石に男手あった方が良いかもな・・・。うちの兄貴は・・・まぁ頼りにならないかもだけど奏多さんなら頼りになりそうだし。」

「ん。おにぃは凄い。」


 表情はあまり動かなかった美鈴だが、その瞬間は若干微笑んだように感じた紬。

 微笑ましいと思い『本当に奏多さんが好きなんだな。』と笑いかけ、クレープを食べ終えると美鈴の口周りをハンカチで拭い、ベンチから立ち上がる。


「じゃ・・・・・・別行動してもう一時間は経ってるし、兄貴たち呼ぶか。」

「ん・・・。」


 その数分後。

 奏多と和希は何も聞かされずに呼び出されたが、二人とも嫌な予感がしているため、怪訝な表情を浮かべる。


 何件か既に回っていた2人は手に軽い荷物を持っていたため、それを兄達へ手渡す。


「おにぃ。荷物もって。」

「はぁ。そんな事だと思ったよ。はいはい。」


 嫌な顔をしながらも、美鈴の買った荷物を手に持つ。


「バッグは持たなくて良いのか?」

「ん。自分で持つ。」

「おぉ。珍しく偉いぞ美鈴。」

「ん。」


 兄に褒められ満更でも無さそうな声で返事をする美鈴。


「兄貴これ持って。」

「はぁ?嫌だよめんどくさい!俺は今からこいつとオタショップ行くんだよ!」

「そういえば、このショッピングモールのすぐそこに公園があったな。どうする?」

「紬さぁん。嫌だなぁ。僕持ちますよ?むしろ持たせていただきます!ええ喜んで!!」

「和希・・・・・・お前土から頭だけ出す事に快感を覚えたって言ってなかったか?」

「言ってねえよ!!バカかよお前!紬の前で変なこと言ってんじゃねえよ!」

「うわぁ・・・・・・。」

「いやいや大体お前が俺の体を埋めてる張本人だからな?お前が引くのはおかしいんじゃない?兄貴の否定より兄貴の親友の虚言を信じるのは如何なものかと?」


 そんなふざけた会話をしながら美鈴と紬は二人で前を歩き、奏多と和希の二人は後ろから妹たちのあとをついて行っていた。


「はぁ。うちの兄貴も奏多さんみたいな人だったら良かったな。」

「?・・・・・・つーちゃんのお兄ちゃん面白い。」

「面白い?あれが?バカなだけだと思うぞ?」


 後ろの二人とは少し離れており更にショッピングモールということで喧騒に包まれていて聞こえないのを良いことにため息を吐く紬。


「まぁ、兄貴のおかげで・・・。」

「・・・・・・?」

「いや何でもねえ。」


 それからは、とんでもない数の買い物に付き合わされヘトヘトになった兄二人だったが、妹二人が満足そうな笑みを浮かべていたので、まぁ良かったと思う?兄バカ二人であった。

 ・・・・・・美鈴の満足そうな笑みを読み取れたのは、もちろん奏多だけであった。







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