第11話.ファミレスでのひととき
時刻は既に夕暮れ時となっており、
四人はショッピングモールを後にしファミレスに来ていた。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい、えーとチーズハンバーグセットと・・・美鈴は?」
「ん。」
美鈴はドリンクバーで注いできたメロンソーダを飲みながらデミグラスハンバーグセットを指さす。
「じゃあ、デミグラスハンバーグセットも一つで。」
「かしこまりました。」
店員は、スムーズに注文を聞き終えると次は和希達の方へと視線を移す。
「お姉さんかわぃ゛ぇ゛」
紬は高速の肘打ちを和希にお見舞いし、注文を続ける。
「えーっと、私はこのドリアでこいつは唐揚げ定食でお願いします。」
「か・・・かしこまりました・・・。」
悶絶しながら机に突っ伏している和希と平然としている紬ちゃんを交互に見ながら店員さんは去っていく。いや・・・うん。これはどう考えても。
「お前がわりいだろ。」
「ここから・・・始まる恋もあったかも・・・知れねえのに・・・。」
「ねぇよ。ストーカー扱いされてお前の刑務所生活の始まりだよ。」
まだ苦しいのか、途切れ途切れに言葉を発する和希の妄想を無慈悲にも吹き飛ばす奏多。
「紬ちゃんも大変だな・・・・・・。」
「もう慣れたもんっすよ・・・。」
まともに返事が返ってきた事に安堵する奏多。
昔は仲の良かった紬ちゃんがここ最近は会ったとしてもまともに会話すらしてくれなかったので紬ちゃん嫌われた・・・と悲しんでいたのである。
「あ、そうそう。紡ちゃんに渡しておきたいものがあるんだよ・・・。」
「?私に?」
奏多は和希と2人で選び買ったキーホルダーをプレゼントする。
包装されているため、何かわからない紬は小首を傾げる。
「開けてみても良いっすか?」
「うん、あまり自信ないけどな・・・。」
「・・・・・・これ。」
包装紙を開けた紬が固まる。
「やっぱ・・・また別のやつプレゼントするわ。」
「いや!これが良いっす。これが・・・嬉しい・・・です。」
「ほらな?言ったろ?俺の考えは間違ってなかったっ!紬もアニメにハマっ」
「兄貴は黙ってろ。」
「ぐふぅっ。」
とりあえずは嬉しそうに、感謝を述べてくれたので一安心だ。と思ったのもつかの間。
何故か普段のおっとりとした目付きとは違う鋭い視線をこちらに向けて服の袖をくいっと掴んでくる義妹が一人。
「・・・・・・おにぃ。私には?」
「はぁ、お前には無しだ。紬ちゃんにはお前がいつもお世話になってて悪いから感謝のお返ししてるんだよ。」
「ずるい・・・。私もおにぃに感謝されたい
・・・。」
「いつになる事やら・・・。」
暫くそんな不毛な話をしていると、四人の前に注文した食事が届く。
「「「「いただきます。」」」」
「むぐむぐ・・・・・・。美味しい・・・。でもおにぃのご飯には敵わない・・・・・・。」
「あーほら。ほっぺにソースついてんじゃねえか。」
「・・・・・・ん。」
人前だと言うのにいつもの様に目を瞑り頬をこちらに向ける美鈴。
奏多はため息を吐きながらも持参していたポケットティッシュでソースを拭い食事を再開させる。
「よし。良いぞ。」
「ん。」
「いや、お前おかんかよ。」
二人の光景を目の当たりにした和希は、呆れたようにそうつぶやく。
「なんか・・・学校ではあんま二人の絡み見ねえから信じられなかったけどよ・・・まじで仲良すぎんだろ・・・。」
「奏多さんが完璧超人だからっすね。どこぞの兄貴とは違って・・・」
「ん?誰のこといってんだ?」
あ、本気でわかってないやつだこれ。
こいつの鋼のメンタルはこういうところから来てるんだな。
そもそも自らが言われてると考えないポジティブさ。見習いたいくらいだ。
「・・・・・・おにぃのハンバーグ・・・美味しそう。交換・・・ダメ?」
「・・・・・・ッ。」
兄というのは、義妹の上目遣いに弱い生き物である。
そして義妹というのは、それを全てわかった上での計算し尽くされた完璧義妹ムーブを繰り出してくるのだ。
「それはお前ら二人の仲良し兄妹だけだろ。」
何か思考を読まれた気もするが、それを気にせず美鈴の口元にハンバーグを運ぶ。
「はむ・・・・・・むぐむぐむぐ・・・・・・ん。美味しい。」
「俺も頂きー!」
「あ!お前まじ大きいやついきやがったな!」
「早い者勝ちという言葉があるだろう。」
「それって人のものにも適用されるのか?それなら・・・。1個もーらい。」
「兄貴、私も1個もらうわ。」
次々に減っていく和希の唐揚げ・・・。
挙句の果てには・・・
「・・・・・・唐揚げも美味しそう・・・・・・ゴクリ。」
「お前ら!俺の大事な唐揚げもう残り三個しか無いんだが!?あ、美鈴ちゃんはこれ取っていいよ。
俺のお箸当たってないとこね〜。」
「お前変なとこで紳士ぶってんのな。」
「うるせえよ!!唐揚げ返せよ!」
「もう俺らの胃袋に入ってるし無理だな。これもお前の日頃の行いが悪いからだ。」
「その通り。これからは奏多先輩見習って善人になれよ。兄貴。」
「ふぇえええ・・・・・・」
「お前の場合需要ないからそれやめろ。」
こうして皆で和気あいあいと語り、土曜日の昼を有意義に過ごした奏多だった。
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