第8話.アイスクリーム


「すまん。待たせたか。」

「んや。大して待ってねえよ。」


 何故俺がこんなやつとカップルのような会話をしなければならないのか。

 少々不満もあったが・・・。


「・・・ん?なんだよ俺の顔ジロジロ見て。」

「何でもねえよ。紬ちゃんもこんにちは。」

「っす。」


 奏多への相変わらずのクールな反応。


 ガールクラッシュと言うべきか、黒いキャップに白いシャツ。そしてジョガーパンツとすらっと長い脚が相まってよりカッコ良さの目立つ服装の紬。

 一方、美鈴はシンプルに白のワンピースだがこちらも来ている人物が美少女すぎる為に神性を帯びているのではないかと思えるほどに美しい。


「オシャレ全くわからんが何かあの二人カップルみたいじゃねえか?」

「言うな。俺らが惨めになっちまうだろ。」

「よし。俺オシャレ勉強するわ。」

「やめとけ。お前の場合服装世紀末になって終わるぞ。」

「服装世紀末ってパワーワード出すのやめてもらっていい?」


 強く否定できなかった和希は、弱々しくツッコミ4人で歩き出す。

 紬と美鈴が二人で話しながら先行し、

 奏多と和希がそれを眺めながら目的地へと向かっていた。


「美鈴?ご飯は食べたか?」

「・・・ん。かな・・・おにぃに作ってもらった。」

「奏多さんに・・・。そうか。」

「・・・・・・・・・。」


 突然立ち止まる美鈴。

 嫌な予感がした奏多は、即座にポケットから財布を取り出す。がそれよりも先に紬が動く。


「何味だ?」

「・・・・・・バニラ。」

「じゃあ待ってろよ?」


 そう言って紬がアイスクリーム屋の列に並ぶ。

 おそらく並んでいれば十分はかかるであろう列だ。


「あのわがまま義妹め。」

「ぷ。めちゃくちゃ可愛いじゃねえか。」

「まぁそれは否定しねえけど、とりあえず紬ちゃんに申し訳ないから行ってくるわ。」


 和希からは『あいつがやりたくてやってる事だから良いんじゃねえの?』とは言われたが、やはり兄としては申し訳なさが先行するため奏多は紬の元へ足を運ぶ。


「ごめんな紬ちゃん。あいつわがままで。」

「・・・・・・いや、別に大丈夫っすよ。」


 高校球児のような喋り方で若干ヤンキー入ってるような気もするがめちゃくちゃ面倒みが良くて優しい紬。

 しかしなぜか奏多にだけは素っ気ないため、奏多も接し方に頭を悩ませていた。


「・・・・・・そういえば・・・紬ちゃんのおかげでまた正門前に綺麗な花咲いてたよな。」

「・・・・・・っす。」


 会話終了。


 どうする奏多。義妹の甘やかしという幾千の試練を乗り越えてきたこの俺が・・・・・・。

 あれ?もしかして俺嫌われてたりする?

 それならもう打ち解けようもない気が・・・・・・。


「次の方どうぞー?」


 無言のまま気付いたら奏多と紬は、先頭に立っており店員さんに呼ばれレジへと向かう。


「ご注文はお決まりですか?」

「・・・・・・バニラとチョコミントで。」

「あーじゃあバニラ一個とチョコミント二個、それとストロベリー一個でお願いします。」


 畏まりました。と元気よく告げられ会計は紬を制止し、奏多が払い二人で手に持ち美鈴と和希の元へと向かう。


「・・・・・・ありがとうございます。」

「こちらこそいつも妹がすまん。」

「私がやりたくてやってる事なので・・・。」


「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」


 無言になったはずの空間だったが、紬の方から奏多へと問いかけてくる。


「チョコミント・・・・・・好きなんすか?」

「ん?あぁ。大好きだな。世の中には歯磨き粉の味とか言ってる人たちも居るみたいだけどチョコミント以上に美味しいアイスクリームを俺は知らない。」

「・・・同じっす。」

「紬ちゃんもチョコミント勢か?」

「うっす。」


 何故か俯いていた紬ちゃんだったが、心做しか嬉しそうな表情を浮かべていたのは俺の見間違いだろう。


「・・・・・・遅い。」

「わがままお嬢様へのプレゼントでございます。」


 奏多は、バニラを美鈴へと手渡しし紬は和希へストロベリーを渡す。


「ん。美味しい。ありがとうつーちゃん。」

「いや・・・私じゃなくて奏多さん。」


 奏多さん・・・・・・久々に聞いたな・・・。

 前までは奏多くんとか呼んでくれてたけど・・・。


「お、じゃあ俺のアイスもお前の奢りかありがとな。」

「んや別にいいよ。」

「おにぃ。偉い。」

「なんで上からだよ。」


 不服そうに告げながらも美鈴の美味しそうに舐める表情を見て満面の笑みを浮かべる奏多。


「うわ・・・きっしょいなその笑顔。お前シスコンかよ。」

「うるせえよ。」


 ぷぷぷと笑う和希。

 イラついたのでアイスを片手に、奏多は和希の脛に軽く蹴りを入れる。


「ちょ・・・・・・・・・まてッ!いてぇッ!」

「すまん足が当たったわ。」

「・・・・・・もう美鈴。ほっぺにバニラ付いてるぞ。」

「・・・・・・ん。」


 美鈴は目を閉じて、右頬を紬に向ける。

 紬は、当たり前のようにハンカチを手に取り美鈴の頬に付いたのクリームを拭う。


「実妹だが、まぁ美少女二人・・・絵になるな。」

「お前の方がキモイんだけどな・・・・・・。」


 それから、しばらく歩き回って紬と美鈴は服屋さんへと向かった。







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