第7話.忘れていた予定


「はぁ。今日も疲れたわぁ。」


 奏多は、自室のゲーミングチェアに座り気持ちよさそうに背伸びをすると、メガネをかけてPCと睨めっこを始める。


「やっぱ帰ってきたらこれだよなぁ。」


 最近配信開始されたMMORPGである、『ロストマジックファンタジー』通称『LMF』をすることが最近の日課になっている奏多。

 ギルドにも入りローマ字でハイム・・・?と呼ばれる人と仲良くなり最近はチャット欄で会話しながら二人でモンスターを狩っている。

 ボイチャなどは、あちらが出来ないためしていないがゲーム内では常に二人で行動をしていると言っても過言ではない。


「えーっと『今日は何を狩りに行く?』っと。」

『レッドドラゴン狩りに行こうぜ。武器素材で必要だったんだけど足りなくてさ〜。』

「レッドドラゴンか。まぁ二人で行けば五分で終わるしな。」


 結局その日はハイムと二人で結局深夜三時までやり込み、睡魔が襲ってきたところでベッドに入り就寝した。









「・・・・・・ん。今日は・・・・・・休みか。」

「・・・・・・・・・んぅ。」


 仰向けで寝ていた体の上に何やら少し重みを感じた奏多は、布団を捲る。


「またか。美鈴。」


 そこには、自室で寝ているはずの可愛い義妹の姿が。

 髪は寝癖が凄いことになっていたが、それでも奏多の胸の中で寝ている美鈴の寝顔は破壊力が凄まじい。


「・・・ん。か、かにゃたおはよう。」


 噛んだ。可愛い。ていうかもう毎度の事だけどな。


「ん。おはよう。よく眠れたか?」

「・・・・・・奏多の体ポカポカだったから気持ちよかった。」


 寝癖がたっているまま、奏多の上で体を起こす美鈴はまだ眠たいのか目を擦り欠伸をする。


 時計を見れば今は午前十時である。

 土日は二人ともこの時間までゆっくりと寝てそれからぐーたらすることが多い。が


「あ、今日十二時から和希と予定あるんだったわ。

 完全に忘れてた。」


 いやまぁ、あいつとの約束事を忘れる程度どうってことない気もするが思い出した以上行かなければなるまい。めんど。


「・・・・・・行く。」

「ん?」

「私も行く。休みなのにおに・・・か、かにゃたと一緒に居られないの嫌。」


 俺にはこんなに可愛い義妹が居るのにあいつは、俺と美鈴の中を引き裂こうってのか。

 人でなしめ。許せない。後で一発殴らせてもらおう。


「まぁ、別に一人でこいって言われてないし良いんじゃないのか?そうとなったら飯を食って準備するか。」

「・・・・・・うんっ。」


 心做しか嬉しそうな返事を俺は聴き逃しませんでした。ね?俺の妹可愛いでしょ。


「じゃあ、言っとくか。『美鈴も着いてくるって言ってるけど良いか?』」

『もちろん!!!!!!!!!!!!!!』

「こいつ・・・・・・いつもこんなに返事早くねえくせに。現金なヤツめ。」

『あ。あと紬のやつもなんか来たいって言ってたけど、そういえば美鈴ちゃんと紬って仲良いのか?』


 ・・・・・・確かに。

 あまり交友関係についての事は話したことは無かったが・・・。

 成績に問題は無いが、学校でも寝てるダウナー義妹に果たして友達なんて居るのだろうか?

 対して紬ちゃんは校内のボランティアなどに大忙し。

 あまり交流がないかもしれないな。


「美鈴ー。」

「ん、なに。」

「紬ちゃんって知ってるか?」

「・・・・・・つーちゃん友達。」


 へぇ。意外だな。


「いつも移動教室の時おんぶしてくれる。あと食べるの面倒臭い時あーんしてくれる。あと体操服の着替え手伝ってくれる。あと・・・・・・」

「あ、うんもういい。大体分かった。美鈴。甘やかしてる俺の言えたことじゃないけどな・・・自分で出来ることは自分でやるんだぞ?」

「・・・・・・・・・ん。」


 スル〜〜ッとあっていた目が逸らされる。

 こいつ・・・・・・反省する気ゼロだ。


「はぁ。まぁ今日は紬ちゃんも来るみたいだから。迷惑はかけるんじゃないぞ。」

「ん。」


 あ、すんごい無表情だけど少し眉毛ピクって上がった。

 嬉しいんだな美鈴。


『紬に聞いたけど仲は良いみたいだな。』

『いや・・・仲良いって言うか世話焼いてもらってるみたいで・・・すまんな。』

『良いんじゃねえの?紬もやりたくてやってるみたいだし。』

『俺が甘やかしているばかりに・・・。』

『まぁ、とりあえず十二時にあのショッピングモール前に集合な。』

『了解。』


 奏多は返信を終えるとスマホを手放し、美鈴と共に支度を始める。

 二人は基本的に寝起きは簡易的な食事で済ませるためサラダとパンと目玉焼きを食べる。

 奏多は、既に食べ終わったが美鈴はマイペースにまだモグモグと食べていた。


「おーい。美鈴ー。」

「むぐむぐむぐ・・・・・・・・・ん。」

「そろそろ着替えないと間に合わなくなるぞ。」

「むぐむぐむぐ。・・・・・・ご馳走様でした。」


 そう言うと美鈴は、食器を片付け洗面台へと歩く。


「かにゃ・・・かなた歯磨き粉取って。」

「たく。自分で取れよ。」


 なんだかんだ言って手渡しする奏多。


「ん。ありがとう。」






 全てを終えた奏多は、着替え終わった美鈴と共に玄関を出る。

 髪をハーフアップにして、清楚めの服を着こなしたあまりの美鈴の美しさに一瞬気を失いそうになった奏多だったが、何とか立ち止まりショッピングモールへと向かう。








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