第2話.二人の姫
「って事があったらお前だったらどうする?」
「・・・・・・それがお前の妄想か?」
今二年三組の教室で面と向かって話しているのは悪友兼親友の『
小学五年の時に転校してきた和希だが、即意気投合し今もこうして仲良くしている。
「・・・・・・まぁそうかもな。」
「ぷっ!!流石にきもすぎるぜ!!お前の義妹が可愛すぎるのは俺も分かっている!四天王ならぬ『四天姫』と呼ばれているほどだからな!」
「その称号何回聞いてもださいよな。」
「ネムリ姫である美鈴たん・・・」
「たんを付けるな殺すぞ。」
「うわ。いきなり辛辣になるじゃねえか・・・。まぁ美鈴ちゃんが可愛いのは分かるけどさ。流石にその妄想は行き過ぎだっての。」
俺が話したのはいつもの美鈴の光景・・・を少し曖昧にしてぼかして伝えたのだ。
案の定妹のいる和希は、真っ先に否定を繰り出す。
まぁそれも無理はない。
こいつの妹は・・・
「有り得ねえだろ?現実の妹ってのはさ。
こいつ終わったな。とまだ早朝の誰も来ていない教室内で笑みを浮かべる俺。
我ながら性格が悪い。
「可愛げなくて乱暴でなんだって?続けてみろよ。」
「あ?だから言ってるだろ?あれが三次元の妹だ。三次元なんてクソく・・・・・・・・・。」
異常な汗を流し出す和希。
自らが命の危機にあると自覚したのだろう。
嘆願するような目でこちらを見るが俺はゆっくりと首を横に振る。
諦めろ和希。それがお前の選んだ道だ。
後ろには和希の実妹である『東堂 紬』の姿が。
この子は一学年下のヤンキーというかギャルというか、口は悪いし表には出していないはずの優しさが滲み出ており、校内のボランティアである花の手入れなどをしている乙女な可愛い親友の妹だ。
髪色は和希違いネイビーでウルフカット。
人を射貫くような鋭い目付きだが、笑うとクシャッとなる可愛い笑みも小さな頃から何度も見てきている。
ピアスも何個か付けているが、教師たちに注意されているところを見たことはない。
なぜならこの子が機嫌を損ねれば、学校中の手入れが疎かになって手が足りない教師陣も困ってしまうし、紬本人がとても良い子なので言い難いのだ。
因みにこの子も『ギャップ姫』などと言われているこの学校の四大美少女の一人だ。
スタイルもよく、男子生徒からの視線には鋭く反応し『あ?テメェ何見てんだよ?』と額に青筋をうかべ睨むが、それも一部の男子生徒からはご褒美と捉えられているという。
全くそんな危険思想を持つ男どもは・・・。
「兄貴・・・・・・お前ちょっとこっちこいよ。」
「・・・・・・な、な、な、な、な、何の事だねッ!?」
「なんでお前そんな口調なんだよ。」
「そんなこと言ってないで助けたまえよっ!!真宮くん!」
「奏多先輩。こいつ借りていきますね。」
「ん。行ってらっしゃい。」
「っす。」
何故か、毎回俺と話す時は心做しかぎこちなくなる紬だが、教室を出て即座に『ギャァァァッ』という断末魔が聞こえたような気もするが気のせいだ。
今日も穏やかな朝だな。
放課後に悪友が、花壇に頭だけ出た状態で発見されたが教師陣と生徒たちは察したらしく誰も言及しなかったという。
そんなこと気にすらしていなかった奏多は、放課後に生徒会室へと向かう。
俺は一応訳あって副会長という立ち位置なので、仕方なく向かっている。
美鈴はそれを知っているので一人で帰っているだろう。
我が義妹ながら容姿が綺麗すぎるから・・・。
大丈夫だろうか。ナンパなどにあって今頃半泣きになっていたら俺はもう・・・相手を消す覚悟は出来ている。
「やぁやぁ奏多君!お久しぶりだね!!」
「昨日もあったでしょうが。」
「いやだなぁ。つれないなぁ。そんなこと言う奏多君にはおしおきしちゃうぞ?」
やめてくれそれ以上この生徒の行き交う廊下で・・・
「まずは君の〇〇〇を〇〇〇で責め・・・」
はいアウトー。
奏多は急いで『
「え・・・。ま、まだ早いよぅ・・・そういうのは・・・付き合ってから・・・奏多・・・きゅん・・・。付き合ってから・・・突き合・・・」
「黙れよ発情魔人。」
「む!誰が発情していると!?」
「あんたしか居ねえよ。」
この黒髪ロングの超絶美少女こそ生徒会長である桜花会長である。この人とは高一からの付き合いだが、一番キャラが濃いのではっきりと記憶されている。
「全く、あの大企業『ナグモ食品』のご令嬢で文武両道才色兼備大和撫子という四文字熟語の羅列大渋滞を起こす『タカネ姫』の異名を持つ先輩がこんなだって知れたら全生徒切腹するでしょうね。」
「そこまで!? ・・・でも奏多きゅんから褒められるの・・・嬉しいな。」
「はいはい。皆が来る前に会議の準備しましょうね〜。」
「いや喋り方が子供をあやす時のそれ!」
がっかり美少女だが、ツッコミは一流なのでまぁ良しと・・・できるのか?
「はぁ・・・。初めて見た時は綺麗だしかっこいいし頼りになる先輩だな・・・って思ったんだけどな・・・。」
「え?今は違うの?ねぇ?」
「まぁ・・・・・・今も思ってますよ。」
「すごいよ奏多君。嘘をついたから黒目が泳いじゃってる。」
暫くそんなふざけた話をしていると、生徒会の皆が生徒会室へとぞろぞろ揃い出す。
「じゃあそろそろ始めようか副会長。」
「ええ。じゃあそれぞれの部活の経費について・・・」
こうして今日も生徒会としての役割を成し遂げた奏多は、正門へと足を運ぶ。
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