第5話 『未満を超えた関係』
社長に許してもらえてなんとか百合営業ができることになった。
……正直驚いてる私がいる。
『君たちってお付き合いしてるんじゃなかったの?』
確かに小さい頃から仲がいいのを知ってて、指輪をしてるのは知られていたけど、付き合ってると思われてるとは思わなかった。
「んふ〜!そっかぁ〜、そう見えてるんだ!」
私は左の薬指にはめられた指輪を見ながら、思わず口が緩んでしまう。
とはいえ、これは本当に他意はなくて純粋に私たちの芸能生活10周年の記念でつけているものだ。
そういうのは付き合ってから、そう決めている。
でも、これからどうしよう…。
悪く言えば勢い、どう考えてもタイミングがおかしい切り出し方をしたせいで私もどんなことをすればいいか分からない。
こういう時は…。
『百合営業 内容』
自分でも安直な検索をしていることが分かる言葉選び、けれどこういうのは調べることに意味がある。
…と、もっともらしい理由をつけて、出てきたページを開いてみる。
「ふむ、友達以上恋人未満くらいのプラトニックな関係かぁ」
……なんか、今も割とそんな感じじゃない?
昔からの関係だとあまり意識しないから、分からなかったけれど今までもそんな絡みしかしていない気がしてきた。
今思い返すと、恋歌が得意なお菓子作りをテレビでやった時に家でのノリで「あーん」というものをしていた。
それに街ブラロケみたいなことをした時も、階段ではエスコートみたいなこともしたし…。
「既に未満の範疇を超えてるのでは…?」
今更気づいて少しだけ顔が茹でダコみたいに赤くなる。
でも、裏を返すと特に今までと変わったことは特にしなくてもいいのではないかと思い始めた。
そもそも私たちは、小さい頃からの関係で友達という言葉では形容できない「幼なじみ」というやつなわけで…。
「なんだ、悩むこと無かったのか〜」
昔からこういう頭が柔軟なところは自分で言うのもなんだけどいいところなのかもしれない。
とにかくやることは決まったから、あとは恋歌に付きまとっているのが誰なのか…それが気になる。
恋歌は凄く人気だから、変なファン…の可能性もあるしとにかく気をつけてあげなきゃ。
「それはそうと、今日は恋歌とラジオ〜🎶」
警戒も必要だけど、恋歌といないと意味が無いからとりあえずラジオの現場に行こう。
ラジオは、私が恋歌と一緒にやってる仕事の中で1番好きだ。
私たち2人だけで他の人たちのことを気にせずできるし、何より送られてきたお便りに必死に答えてる時の顔が可愛い。
あの顔を独り占めできるのはラジオの時だけだし、もっと頻度増えてもいいのになぁ。
「急げ急げ〜!」
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