浜にて水着の少女は埋まる
ホムラたち五人は、なぜか異世界にあったスクール水着を着てビーチを臨んでいた。青い空と海、白い砂。その中で五人が紺色の水着を身に着け、若々しい四肢を晒している。
「人目がないからギリギリ着られますね、スク水……」
ホムラは、学校の水泳の授業を思い出す。いくら疎まれようとも、ホムラのスタイルのよさは男女を問わず注目を集めてしまうものだった。
「無駄にデカくて目立ってただけだろ、目障りな贅肉め」
ともすれば自虐風自慢にも聞こえるホムラの呟きに、サイコは嫌味ったらしく反応する。
「『持つ者は持たざる者の盾となれ』。安心してください。人目があれば、持たざるサイコさんの代わりに視線を集めてあげますから。ああ、なんて健気な私」
ホムラはサイコに向けて、ずずいと胸を張った。水着によって窮屈に収められた胸は、それでも存在を強く主張している。
「『持たざる者』にしてやんよ!」
意趣返しとして突き出された目障りな贅肉を、サイコは引き千切らんと鷲掴みにした。
「いだだだだだーいッ! 目障りなんて言うからですよ! 私だって好きで大きくなったわけじゃないのに!」
ホムラは胸に食い込む手を引き剥がし、サイコの腹に拳を叩き込んだ。
「ふぐッ!」
嫌味を言うサイコも、決して小さいわけではない。ただ理想の体型には届いていないようで、より理想に近い体型のホムラを若干目の敵にしているのだ。
「目障りなのは確かだろ、視野占有率的に」
「そう言うのなら、ジンさんにも同じこと言えますか?」
さりげなく敵視を逸らそうとするホムラ。しかし実際に、サラシをしていないジンは、ホムラに負けず劣らずの大きさを誇っている。
「いや、こいつも無駄にデカいだろ」
「うむ、確かに無駄に大きくて困ることがあるな。おぬしが羨ましいよ」
ジンもホムラにならい、サイコに向けてずずずいと胸を張った。ジンの肢体は、引き締まった筋肉によってうっすらと陰影をつけている。ホムラとは違う、アスリートのような肉体美だ。
「うがあああああああッ!」
自業自得ではあるが、コンプレックスを刺激されたサイコはジンに襲い掛かる。
だがジンはするりと躱し、サイコの足を払った。無様にも顔面から砂に突っ込んだサイコを憐れむ者は、誰もいない。自業自得なので。
「なんで君たち地球人類は、脂肪の塊の大きさを比べたがるのかな。僕には理解できないよ」
呆れて傍観を決め込んでいたプロトだったが、脂肪の多寡で争う有機生命体たちの哀れさに、つい口を出してしまった。
「偽乳は黙ってろ! いや、偽ボディ!」
「口の悪い子はしまっちゃおうねー」
負の感情により、周囲を無差別に攻撃する惨めな生命体となったサイコは、プロトの手によって頭以外砂に埋められた。
「『偽ボディ』っていうか、僕の感覚からすればこれは服なんだけど」
プロトの見た目は少女そのものであるが、実際は胸部に格納された球状の機械が本体の機械生命体だ。少女を模倣した外装は、幼さとほんの少しの女性らしさを感じさせる体つきをしている。
「それより、動きやすいから小さい方がよくない? ねえ、ツツミ?」
プロトは、自分たちの部隊が誇る幼児体型少女ツツミに同意を求めた。生体兵器である彼女なら、合理性を求めるだろう、と。しかし……。
「……なにやってんの、ツツミ?」
ツツミは、その真っ平らな胸に小さな手をあて、必死に胸肉を寄せようとしていた。
「セクシーに、なりたい……かも……」
当然、谷間すらできていない。
「ツツミちゃんはロリボディのままでいいよぉおおおおおッ!」
息を荒くしてツツミの細い身体に飛びついたホムラは、プロトの手によって頭以外砂に埋められた。
「様子がおかしい子はしまっちゃおうねー」
※初出『我が焔炎にひれ伏せ世界2』メロンブックス様特典
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