第5話 反応

山形の状況は、地震で倒壊した家屋が少しあり、けが人が少しいただけでで死者はでてないようだ。新幹線など公共交通機関も早々に復旧しているそうだ。地震に慣れているからだろうか、日本の交通機関の復旧は迅速だ。もし東京で大地震があって、自分が乗る電車止まってしまったら、しばらく復旧せずに会社も休みになればいいのになどと、不謹慎ながらも交通機関復旧のニュースを見るたびに達夫は思ってしまう。


山形県内にある、取引先の工場に電話してみる。現地のIT担当者は、ネットワークの障害も、サーバ周りも障害は起きていないので安心して欲しいと話していた。地震の瞬間は、かなり揺れて怖かったそうだ。

「いっそ、システム止まっちゃえば復旧まで休めるとか思ったんですけどね。あ、でも俺は出社しなきゃダメか。あははは。じゃ、何事なくて良かった。」

達夫と同じような事を思っているようで、改めて親近感が沸いた。何度か出張で山形の工場まで行ったことあり、行くたびに朝まで飲ませてくれる居酒屋に連れまわされるのが恒例だ。IT関連に詳しい人間が周りにいないので、達夫と飯田が行くと話が止まらなくなるのだ。工場の安全が確認でき、ほっとして電話を切る。


達夫はスマートフォンの通知が多すぎるので通知をオフにしていた。本当はアプリを開いて反応をみたい。夢にまでみた大量の”いいね”が1000は超えているだろうか。帰りの電車でじっくり味わおう。そう思い、スマートフォンをカバンの奥にしまいこんで仕事に集中した。


「吉岡さん、今日はもう帰りましょう。と、いうか部長が帰れと言ってます。今月は残業多いから、部長より上の方から怒られたらしいですよ。」

楽しげなか顔して、飯田が肩に手を掛けてきた。リースが終わるPCの返却作業も終わったし、ひと段落ついたところでもある。昨日までは、何時間残業しても構わない、あの業務も、この業務も終わらせろと言ってた部長なのに、上から言われたらあっさり帰れか。まぁ、サラリーマンは辛いよね。

「じゃ、片づけて帰ろう」

達夫はSNSの反応が気になっていた。そんなタイミングでの、定時時間で帰れ命令は非常にありがたかった。


「SNS見たすか?もうヤバですよ。」

飯田は話したくでうずうずしているようだ。

「いや、まだ見てないよ。1000”いいね”くらいは付いたかな。」

テンションは上がっているのだが、あえて大した事ない感じを装って返事をした。「1000とか余裕でしたよ。そんなレベルじゃないですって。もう大騒ぎ。ネットニュースにもなってましたよ。取材とか来ますよ。」

「いやいや、そんな訳ないだろう。」

達夫はSNSアプリを開く。自分の投稿の”いいね”を見る。20万と表示されている。リポストは3万以上だ。コメントは数えきれないほど付いてるようだ。

「す、凄い事になってるな・・・。」

達夫は正直なところ少し怖くなった。DMもたくさん来ているようだ。突然のSNS大フィーバーに困惑している自分と、嬉しい自分とで複雑な気分だ。


プライベートのメッセージアプリには、妻から連絡が入ってる。

『あの投稿、達夫さんだよね?』『帰りは何時頃になりそう?』

達夫は、今から帰る旨を送信した。


「吉岡さん、また明日詳しく預言のこと教えてくださいね、絶対ですよ!お疲れっす!」そう言って飯田は達夫とは別の路線の電車に乗っていった。

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