一四章 なにが起こったの⁉
あたしは兄さまを
世界最強のモチテーマパーク。
そこはまさに乙女の楽園、人類の夢の舞台。
おかげで、ビルのなかはもう、どこもかしこもおいしい匂いでいっぱい。その匂いを
「さあ、行くわよ、兄さま! おモチのテーマパーク完全制覇よ!」
右手にトング、左手にトレイ、胸の奥には原始の炎! あたしはテーマパークのなかに突進する。
ああ、どれもおいしそう。いや、絶対、おいしい! どれを食べていいのかわからない。
右を見ればつきたてホカホカのおモチがあたしをまっている。
左を見ればツヤツヤのあんこにくるまったあんころモチがあたしを誘っている。
正面を見れば、山とつまれた月見モチが『食べて、食べて』と言っている!
そして、
しかも、その吹きあがり方にはいくつものパターンがあって――数えてみたところ、一二パターンあった――
そして、滝となって降りかかるお
これぞまさに乙女の夢、欲望の楽園!
こんがり焼いたおモチを滝となって流れるお
ああ、こんな
あたしは確信した。モチ王国がすべてのお城と
――なんとしても、モチ王国をそそのかして、パン王国と
あたしは固くかたく、そう決意した。
その決意をつらぬくためにはモチ王国のことをもっと、もっと、知らなきゃならない。つまりは、モチ王国の
あたしはモチテーマパークのすべてを知るべく、トングとトレイを伝説の剣と盾のごとくにかまえてパーク内を駆けまわった。
なんで、パン王国にはこれに匹敵するような
あたしは知らなかった。知らなかったのだ。あたしのこのうかつな行動が、ある恐ろしい
コツン、と、おモチに向かって突撃していたあたしは七、八歳の女の子にぶつかってしまった。
「あ、ごめんな……」
さい、と、そう言おうとして、あたしの口は途中で固まった。それを見てしまったからだ。あたしのぶつかった女の子、その隣に立っている若いお母さんらしい女の人、そして、ふたりを取り囲む無数の人、人、人! その全員が目を大きく見開き、
それはまさに、そう言うにふさわしい光景だった。誰も動かない。身じろぎひとつしない。
えっ? えっ? なに? なんなの? なにが起こったって言うの?
小さなおモチ。
どうやら、あたしがぶつかったせいで、女の子がトングにはさんでいたおモチを落としてしまったらしい。でも、それがなに? ここまで凍りつくほどのこと?
「……落とした」
ポツリ、と、誰かが呟いた。決して大きくない、むしろ低くおさええた、いや、かすれて小さくしかならないと言った様子の声。それでも、この静まり返った空間では、この世の終わりを告げる大天使のラッパの音のように鳴り響いた。
そこからはもう、一気だった。
「モチを床に落としたぞおっー!」
その声が
なになに? いったい、なにが起こったって言うのよおっ!
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