女性になった僕は本人の従妹として生活します

 スマホのアラームが鳴る1分前に目が覚める。時刻は午前5時。

 ベッドから起き上がって、顔を洗いに洗面台に向かう。

 いつもなら、全く気にしない自分の姿。でも、今日は違った。

 見慣れた自分の姿は無く、鏡に映っていたのは少女の姿だった。

「…は?」

 これ…僕…?

 さっきまで眠かった頭が一気に覚醒する。


「…えぇ…」

 頭にあったのは驚きよりも困惑の感情。

 目の前に映る僕の姿は完全に女性のそれだった。身長や体格はあまり変わっていない、僕が元々女性寄りの体系だったからだろう。

 ただ…髪の色だとかは違うし、体格だって、服の上から見た体格だから、実際に見たら結構違うのだろう。あと声も高くなってる。

「服…脱いでみるかな?どうせ着替えるし…」

 そう思った僕は服を脱ぎ始める。胸が大きいと服を脱いだり着たりするのが難しいらしいけど、僕の場合胸が小さいからさほど気にするレベルでもないかな。

 それでも、若干ある胸には違和感を覚えるけど。

「…下着は…流石に付けてないよな」

 そんなご都合な訳もなく。服を脱いでもブラジャーだとかそういった類の下着は無かった。

 僕は女装趣味があるわけでもないし、女性用の下着なんて持ってるわけもない。

「伶衣から借りるのもなぁ…」

 流石に気が引ける。

 顔を洗った後、スマホを手に取って、伶衣に電話を掛ける。

 でも、この声で言っても伶衣からの返答って『誰?』って言われるだけだろうし…。どうしようか、電話を掛けたは良いけど…。

『もしもし彼方?どうしたの?』

「あ、伶衣…さん、はじめ、まして…」

『…え、誰?』

 うん、そう言うと思った。

 しかし…どうしたものかな、僕の携帯から電話を掛けてるから、僕の関係者であることは間違いないし…。

「…私、彼方くんの従妹の楓って言います…」

 …これ、通るかな?

『へ~、彼方って従妹ちゃん居たんだ…。楓ちゃん、よろしくね』

 通った…。通るのか、これ。

「はい…よろしくお願い、します」

『それで…どうして電話を掛けてきたのかな?』

「あ、えっと…その…彼方くんが良く…伶衣さんの話をしてくれるので…気になって…その、迷惑…でしたよね?」

『ううん、そんな事ないよ。ねぇねぇ、彼方はさ、私のことどう思ってるって言ってた?』

「え?…えっと…『結構好き』って」

『………へ…へ~、そ、そうなんだ…』

 …なんか、結構楽しいな、これ。


 それから暫く、僕は伶衣と話し続けていた。伶衣の質問に答えながら話していると、時間はあっという間に過ぎていく。

「あ、あの…伶衣さん」

『ん?どうしたの?』

「あの、今日…空いてたら…会いませんか?」

『…えっとね、ごめん、今日は彼方と会う約束なんだ』

 …うん、知ってた。今日水族館行く予定だったからね。

「そ…そうなんですね…すみません、急に…」

『ううん、じゃあ予定が空いたら彼方から伝えるように言っておくね』

「は、はい…ありがとうございます」

 っていうか、僕って今、彼方じゃないから水族館行けないじゃん。

 …どうしよ。

『それじゃあね』

「はい…彼方くん、まだ寝てるので…もうすぐしたら起きると思います…」

『うん、分かった。じゃあね』

「はい」

 …はぁ。

「…どうしよ」


――――――――

作者's つぶやき:TS書きたい欲を消化できて満足です。

さてさてさて、意外というかなんと言うか、彼方くんの適応が案外早いし最早楽しんでると言う…すごいですね。

そういえば、このTSって中身男子の少女と女子高生のラブコメ(?)なんで百合になるんですかね。

それはそうと、この状況を水香さんに見てもらえなくて残念ですね…。

まあ、次回があるなら次回くらいで水香さんに電話しそうですけれど…返答は何となく分かるんですよね…。

――――――――

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