第6話 始まりの日へ ノアとゾート
(デートのつもりが助けを求める奴隷を見捨てられずなし崩し的に)奴隷市場を襲撃し続けたゾート達。
彼らの拠点には元奴隷と奴隷解放を望む人間が集まり、いつしかここは奴隷国家アルヴィニアと呼ばれるようになっていた。
「オレっちとディーヤが出会って1年!だからパーティを開いたぜ!」
「開いたぜー!」
「ケーキってなんでこんなにおいしいのかなぁ…もぐもぐ」
飾り付けと大量のご馳走の準備は昨日から始まっておりバレバレであった。
「5年くらいかかった気がするけどまだ1年しか経ってないのね。ありがと、楽しませてもらうわ」
「誕生日もわからないし絶対1周年記念日はお祝いしたかったんだよな!奴隷奪還活動がギリギリの内はできる気しなかったけど軌道に乗ってきたから問題なく開催できたぜ!」
「にしても最近の神核狩りって余裕で終わるわよね、チート所持者の癖に完封できるし」
「とりあえず護身用に仲間全員に百個ずつ持たせても余裕で余るくらい集まったし、神核狩りすらしてないチート所持者なんて楽勝なんだよ!【再生】の神核もパワーアップしたしさ!」
最近再生する際任意の姿で再生する事ができるようになった為潜入や不意打ちなどに活用でき任務に役立ててきた。
(ねぇねぇ…そろそろプレゼント持ってこようよ〜?)
(それもそうだな、ちょっと待っててくれ)
「ディーヤお嬢が欲しがった洋服をたっぷりと買ってきたんだ!きっと喜ぶぞ〜…ん!?」
ゾートは高い危険察知能力を持っているが故に助けを求める人間が周囲にいると違和感を感じる事ができる。
(助けを求めてる奴がここに訪れてる気がする…すぐいかねぇと…)
そこにいたのは…兄を殺し神核を奪った5年前の血塗れ少女。ノアであった
〜〜〜(回想として1話の文章が続きます、ご注意ください)
「おいおいどうしたってんだ!?かわいい盛りの子供が生首引っ提げて血まみれなんてよぉ…!」
「奴隷を買おうとした兄を殺して神核を奪いました。子供の俺には奴隷全員を救うには力不足で家族の元にも戻れない俺はこのままじゃ生きられません。だから元奴隷と奴隷解放者だけが暮らすこの国に住まわせてください…でももし奴隷売買加担者の家族が許せないと言うならここで殺してく…」
「バカかお前!?殺してなんて殺しても言うんじゃねぇ!」
「!?だったら…受け入れてくれるんですか?」
「当然だろ!見殺しにしようもんならヨメさんに怒られちまう。なんせ…約束したんだもんなぁ!」
「お前さん、名前なんて言うんだ?」
「俺は…俺の名前は…」
「ノア…8歳です…苗字は今捨てました」
「だったらオレっちの苗字をくれてやるオレっちはゾート=エデン!だからお前さんは今日からノア=エデンを名乗れ!」
「ノア=エデンですか…ふふっ…丁度いいですね…どっちも誰かを救うものの言葉だ」
ノアの方舟…海に沈む世界からあらゆる種族の番を乗せて旅立つ船。
そしてエデンとは理想郷を意味する言葉だ。
「お前はその救うものの名が導くが如く数え切れない程の命を救うだろう…だから死んでも殺して欲しいなんて言うんじゃねぇぞ?」
「あははっ!ゾートさんは人を元気付けるのが上手ですね?」
「何年義賊やってると思ってんだ!得意技だそんなもの!そういやお前さんの兄が利用した奴隷市場はまだ潰せてねぇんだろ?オレっちに場所教えろよ!バカ共の有り金も商品にされた子達も全部奪い取ってくるからよぉ!」
「そんな軽いノリで…危なくないんですか?」
「所がどっこい!裏技があるんだよな!神核取ったって言ってたろ?そいつ貸してくれ!」
「これですか?1個だけですよ?チート所持者が利用する市場を安全に潰せるとは…」
「違う違う…」
ゾートは袋から大量の神核を鷲掴みした。
「この奪った神核共を…重ねがけするんだよ…」
〜〜〜
「なっ何故薄す汚ねぇ盗賊如きに俺様の最強のチートスキル【プロメテウス】の炎魔法が効かねぇんだ!?俺様はSSSランクの最強魔導師なんだぞ!?」
「補助スキルを軽視しすぎだぜ?【オールウィーク】追加しといてやる。今のアンタは前世の平凡だった頃より弱いんじゃねぇか?」
「俺様が…弱いだと!?違う!俺様は最強なんだ!前世にしても優秀だったのに俺様の実力に気づく奴が居なかっただけだ!最強の戦士は窮地に陥った時更なる力に目覚めるんだよおおおおおお!!!!!」ヤケクソで火の玉を放出するが…
「【ブーストミラー】」
ゾートが炎の先に鏡を出現させると鏡の中で小さな火の玉は巨大になり奴隷市場利用者に向けて発射される。
たちまち燃え広がり地獄絵図となった。
「デケェ火の玉が飛んで…ひぐっ!!」
「お父さん助けがぼげっ!?」
「はっ!?」
「確かに強いな。バフ有りきだがな」
「ああ…俺様の魔法で仲間を焼き殺しやがった!?」
「生かしといてもロクな事なんねぇからな。お前のせいで人が大勢死んだ感想は?」
「クソっ…クソおおおおおおおおお!グヘェッ!!?」
「叫んでる間に両手削がせて貰ったぜ?じゃっお楽しみと行きますか!」
「グッやめろぉ!!やめろよぉ!金ならいくらでも払う!」
「500万ゴールドで手を打ってやる」
「!?それだけでいいならすぐにでも…」
「知り合いの暗殺者が500万出しゃ請けてくれるからな。クズしか狙わねぇって評判で相当凄腕でオレっちの何倍も強いぞ?」
「許す気なんてねぇじゃねぇかああああああああああ!!!!」
チート所持者を慣れた手付きで蹂躙する様にノアは驚きを隠せなかった。
「凄い…これが盗賊王ゾートの仕事なんですね?」
「弱い方だ。打たれ強いけど戦闘力で言ったら仲間内だと最低クラス。だからオレっちくらい簡単に越えてくれないとな!」
(ゾートさんの望みには報いたいとは思う。だけど本当に俺何かがゾートさんを越えられるのだろうか…)
数分後
「この吾輩を殺してただですぴょぇえええ!!?」
「こいつで最後だな?討ち漏らしもいねぇな」
「ゾートさん!助けてくれてありがとう!ノアちゃんも助けを呼んでくれて嬉しかったよ!」
「さてと、奴隷市場壊滅させて神核狩りも終わったし帰るか」
「所で俺も…ついて行って良いんですか?」
「当たり前だろ!つーか遠慮なんてすんな!帰ったらご馳走たらふく食わせてやるから覚悟しろよ?」
「はい!楽しみにしています!」
アルヴィニアに帰ったゾートは…
「いくらなんでも記念日ブッチはダメでしょ?だからお仕置きね?」
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
プレゼントを取りに行ったはずが奴隷市場を殲滅しに行ったゾートをディーヤが許す訳がなかった。
ゾートはキツい制裁を受けていた。
「あわ…あわわわ…」
「神核狩りの時でもここまでしないのに…これは今日中に終わりそうにないね」
「えっ?あれ死なないですか!?助けた方が…」
「再生するから心配しなくていいよ」
「ゾートお兄ちゃんは1年前から何にも変わってないね」
「日常茶飯事なのか…かわいそうに…」
お仕置きを受ける様を見て、あのゾートが弱いというのもあながち間違ってないんだなぁと思うノアなのであった。
「誰でもいいから助けてくれええええええ!!!」
「えっと…お見舞いのつもりで会いに来たんですけど…ホントに治ってるんですね」
次の日、お見舞いの果物を携えてゾートの元を訪れたノアは驚いた。
「すぐ治るから軽視されてるけどできれば助けて欲しかったんだよなー。ディーヤは毎度の事手厳しいぜ…」
「でもゾートさんはディーヤさんの事大好きですよね?見れば分かります」
「それは当然だろ。惚れた弱みってのは首輪より協力な主従契約なんだよ」
「オレっちは…俺はディーヤを愛してる。溺愛してると言っても良い。ツンツンしてる所が好きだ!でも時折見せる優しい所も好きだ!怒ってる所も笑ってる所も好きだ!でも泣いて欲しくないと思ってる!綺麗な髪が好きだ!宝石のような瞳が好きだ!ディーヤの全部が好きだ!でなきゃ命なんて懸けられないだろ?」
そう言い終わった辺りで誰かがこの部屋に入ってきた。ディーヤである。
「ゾート…」
「ディーヤ!」
「あっ、あのね?ゾート?昨日の事だけど許してあげてもいいわよ?」
「本当か!?」
「でも!でもね?代わりによ?一度デートしなさい!ちゃんとしたデートよ!?途中で殺し合いに発展したりしないでよね?」
「…おう!分かったぜ!」
「ちょっと返事が遅い、さては守れる気がないわね?」
「そんな訳ないだろディーヤお嬢!もし破ったらディーヤ専用の豪邸でもなんでもプレゼントするぜ!」
「そうね、今回くらいは信じてあげる。私の優しさに感謝する事ね」
次の日ディーヤは豪邸を手に入れ、約束を破ったゾートはボコボコにされるのであった。
「たまには約束守ればいいのにね?」
「人助けって難しいんですね」
ちなみにノアは素だと敬語で話す。
警戒モードの時だけ口調が変わるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます