第5話 ゾートの過去 盗賊王は惚れた女の為に命を懸ける
オレっちの名前はゾート。
この世界で生まれ育った盗賊だ。
幼い頃捨て子だったオレっちは盗みに手を出すしかなかった。
金を持っているにも関わらず貧乏人に恵んでやる事さえしない金持ちが憎くて金持ちからしか狙わなかったオレっちは運良く巨万の富を手に入れた。
というのも…オレっちが物心付いた時から持っていた宝石のおかげだ。
その宝石には魔法の力が込められている【再生】の力はどんなに身体がボロボロになったとしても任意の時間に復活できるのだ。
はっきり言って強くはねぇ。
確かに生存力は上がるが敵に打ち勝つ方法は自分で見つけなきゃなんねぇからだ。
勝ち目がないのに再生し続けて死にたくなる危険を考えると最強の力だとは言えない。
にも関わらずオレっちが盗みを成功させ続けれたのはバカだったからに他ならねぇ。
バカには2種類いる!
人の痛みが分からず他者に迷惑をかけ続ける【厄介バカ】と!
不可能を不可能だと理解できず!できると決めつけ挑み続ける。
挙句の果てには不可能さえも可能に変えて成し遂げしまう【不屈バカ】だ!
一度くらいは聞いた事あるだろ?当たるまで続ければ100%だって!
再生の力を駆使しどれだけ倒れても再生する体とバカ故の不屈の心で盗賊家業を続けていた。
気づけばオレっちは巨万の富を手にしていた。
そのタイミングだった。
「何よ!急に黙って、冷やかしなら帰ってよ!」
雷が落ちた。
「ほ、ほほほ…」
「どうしたんです?兄貴?この奴隷市場のオーナーはこの国1番の金持ちなんですよ?早く屋敷に忍び込んで盗んじゃいましょうよ…」
「惚れた…」
「え!?」
「惚れたってそのデカい角生やした魔族女にですか?売る宛も無いのに食い扶持増やして何になるって言うんです?」
「バカ野郎!金銭的な値打ちなんざどうでもいいんだよ!とにかくオレっちは!この女に!惚れたってんだよ!」
「お嬢さん!オレっちと付き合ってくれえええ!!!」
「嫌よ(何よこの男)」
「ガーーーーーーーーーン!!!」
「あのですね?兄貴?奴隷ってのは人攫いに無理矢理攫われて売られるんですよ。ですから人間不信になって当然なんです」
「なっ何ーーーーーー!?人を…攫うだとーーーーー!!!??それはいけない事じゃないのか!?」
「そうですね盗みと同じくらいいけない事ですね。そういう事抜きにしても一目惚れで初手プロポーズなんて地雷ですよ地雷。まず相手のタイプとか聞いてみては?というか兄貴の所持金なら買えるでしょ」
「お嬢さんのタイプを教えてくれ!女が好きってんなら女になる!ていうか何にでもなってやる!!」
「えっ!?」
(確かに人間は信じられないけどこいつが嘘付いてるとは思えないし…)
「私を買ったりしない人。私は高い女なの、値段も付けれないくらいね」
「20万ゴールドですね」
「黙りなさいちんちくりん!」
「ちんっ!?じゃあいくらならいいんですか!?どうせその言い分なら10兆ゴールドでも足りないっていうんですよね!?」
「「0だ(よ)!」だろ?」
「「!?」」
「お嬢さんは悪~い盗賊様にこう言いたいんだろ?「狭い鳥籠から私を盗んでください」ってな?」
〜深夜〜
「見つけたぞ!追え!奴がワシの商品を根こそぎ盗みやがった盗賊だーーー!!!」
「惚れたから助けたいって所までは分かりますけど奴隷全員奪うなんて無茶ですよ〜〜〜!!」
「だってしょーがねぇだろ!?彼女が皆助けて欲しいって言ったんだから!!ディーヤお嬢に取っちゃそいつが宝石のプレゼントなんかよりもよっぽど刺さる贈り物なんだからなぁ!!とにかく逃げやがれ!そしたら…」
「そろそろ起爆する頃だぜ?キャッシュボム!」
「ぐわぁ!!」
「べへぇっ!!」
「大変ですオズモンド様!?金庫や財布が一斉に爆発しています!このままではオズモンド様は無一文に…」
「バッ…バカもの!!きっと奴が豪遊した際に払った金が紙幣型爆弾だったんだ!オマケに奴が手持ちの金をばら撒いたせいで不特定多数の財布に入ってしまった…今すぐ仕分けてワシの金を非難させないとクビにするぞ!」
「爆死するぐらいならクビでいい!財布捨てて逃げるぞ!」
「金持ちの癖にわざわざ拾い集めさせたのはオズモンド様じゃないですか!?」
「オズモンドの命令がなけりゃ爆弾で財布が消し飛ぶ事も無かったのにぃ!」
なお当たり前みたいに横領しているのは誰も指摘しなかった。
「じゃっ頂いてくぜ?」
「待て!貴様ァ!こんな事してタダで済むと思ってるのかね!」
「いくら欲しい?くれてやるよ」
「まっ…」
ドカーーーン!!!
この奴隷市場のオーナーであるオズモンドはキャッシュボムを投げつけられ爆死した。
「まったく…いい買い物だったぜ!」
「それ毎回言ってますけど盗んでますからね?」
次の日
「まさか本当にここまでやってくれるとは思わなかったわ!ありがとう!」
「今回は一度も死ななくてラッキーだったな」
「二度も死ねないわよ!?何言ってるの!?」
「オレっちは消し炭になっても再生できるんだよ。物心ついた頃から持っていた宝石のおかげでな」
「ちょっと!それ見せて頂戴!」
「うぉっ!どうしたんだよ急に…」
「……それは神核って言ってね、持ってると魔法みたいな能力を使う事ができるの」
「まぁ魔法みたいではあるよな、つかそんな名前だったんだな」
「貴方奴隷売買が許せないって言ってたわよね?奴隷市場って購入者がいるから成立するものなの、それでね?」
「奴隷を買う人の中で飛び切り強い人間がいる。それが神核を所持した人間、チート所持者よ。奴隷売買が違法であるにも拘らず蔓延り続けているのは彼らに誰も敵わないからよ」
「チート所持者が…そいつらがいるせいでディーヤお嬢は攫われて売られてたってのかよ…!許せねぇ…奴隷売買に関わるチート所持者を根絶やしにしてやるぜ!」
「あら?頼まなくても勝手にやる気になってくれて嬉しいわ、でも今からじゃなくていいのよ?」
「いいや今やるね!やる気で燃え上がったオレっちは無敵だからな!」
「じゃなくて、助けてくれたお礼にデートしてあげるって言ってるの」
「ごめんなさい前言撤回します!」
「兄貴有言実行を絶対視しすぎて撤回する時謝罪する癖あるんですよね」
2時間後
「ねぇ?何で私が怒ってるか分かる?」
「だって、だってぇ「助けて」って言われて見捨てれる程オレっちは賢くないからさぁ…」
「ただのデートのはずなのに大量の追手が迫ってきて死ぬかと思ったわよ!デートとして0点よ!オマケにチート所持者まで数人居たじゃない!」
「1人倒せたから神核奪えたんだよ!これ持ってれば護身用に丁度いいかも?」
「またデートを命懸けの殺し合いに変えるつもり!?反省しなさいよ!?」
「うぅ…ごめん…」
「でもまぁ、貰っといてあげる。一応宝石のプレゼントだし。あら、ダイヤモンドみたいで綺麗ね」
「お兄ちゃんは悪くないよ!私を助けてくれたんだよ?」
「それもそうね、貸し一つって事にしといてあげる。次はまともなデートにしてよね?」
尚、奴隷売買根絶後の現在、デート失敗による貸しは50個である。
(平和になった事で最近ようやく減りつつある)
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