第3話 お姉ちゃんの行方と神殺しに慄く神々

「今度はニボク様が殺されたの!?私の次くらいに強かったのに!?本来人間に神殺しなんてできないはずなのに…」

私の名前はリアン。

女神としてチート所持者を導く存在です。

氷雨理安として人間に扮し詩安ちゃんをお世話していたのも病気によって転生が控えてる事が理由でした。

彼女が病死した日、いつの間にか詩安ちゃんの事が大好きになっていた私は悲しかったけどすぐにチートを与えて転生させる目論見だから仕方ないと割り切っていた…

でも…

神核狩りの出現によってチート所持者の生命は脅かされていた。

詩安ちゃんが殺されるかもしれない。

そう思った私は転生者に与える用の神核で出来た羽をはばたかせ異世界をパトロールをしていた。

私には勝てない事を察したのか中々神核狩りに会えなかった所に神界から最悪の報せが舞い込んだ。

神核狩り達は一線を越えたのだ。

転移の神核を用い転生者が一瞬だけ訪れる神界に飛び、神を殺し譲渡用の神核を根こそぎ奪うのだ。

不意打ちによって一度神殺しを許してしまったが故に彼らは膨大な数の神核を手にしてしまった。

故にどんな神でも神核狩りに襲われれば対抗する術も無く一瞬で殺されてしまうのである。

だがただ一つの例外。

羽が神核でできた女神リアンだけは世界中の神核を集める能力を持つが故に神核狩りに対抗できる唯一の存在であった。

私が、私がこの悪夢を終わらせるんだ…

詩安ちゃんもそれを望んでるよね?


「奴隷解放軍に所属して5日が経ったようだが成果はどうだ?」

「今日は3つ程の国を行き来して奴隷市場を壊滅させて来たよ!偉そうだったチート所持者が命乞いしながら消し飛んでいったのは笑っちゃった。えへへっ…このまま弱い奴しか現れないんだったら残党も楽勝なんじゃないかなぁ?」

「元奴隷達は無事だったか?」

「治療と蘇生の神核をたっぷり渡されたからその辺はばっちりだよぉ!たくさん感謝して貰えて嬉しかったなぁ…」

「メシアちゃんすっかり馴染んだよね?もう信用していいんじゃない?」

「それはできない。絶対なんてものは無いからな。例えばお前は家族が奴隷売買の加担者だったとしたらトドメをさせるか?」

「えっ!?それは…許せなくはあるけど…殺すのはちょっと…」

「そうだ、それだ。チート所持者であるにも関わらず奴隷売買を拒絶できる人間こそイレギュラーなんだ。なら家族がチート所持者だとしたら同情したり寝返る可能性が考えられる。故に信用はしない」

「え〜、考え過ぎなんじゃな〜い?」

「お喋りがしたいならお前を慕っている後輩を呼ぶんだな。お遊びに付き合ってる暇など俺には無い」

「え〜しょうがないな〜。じゃあメシアちゃん後でね?」

「………」

「あれ?メシアちゃ〜ん!」

「…あっごめん、考え事してた、エルシィちゃんも気を付けてね?」

ノアはメシアの事が気掛かりになり…

「姉の事か?」

「えっ!?」

「…お姉ちゃんはすっごく優しい人なんです。私が無茶した時でも優しく抱きしめてくれて…だから絶対悪い事なんて…するはずがないんです!」

「絶対は無いと言ったはずだ…それに…」

「優しいからこそ悪人を糾弾できず、結果として更なる犯行を許してしまうかもしれないぞ?」

「そっそんな事ないもん!でももしノアの言う通りなら…」

メシアの悪い予感は最悪の形で的中する事となる。それでも詩安の持っていた力によって何とか仲間に引き入れる事ができたのは不幸中の幸いであった。


「生き残った神は今集まった子達だけなんだね…」

「はい…残念ながら…」

「神核を1つだけ与えるだけだからこそチート所持者に反逆の余地を与えずに異世界の治安改善に努めさせる事が出来ていたというのに…あの神核狩り共と言ったら…許せん…!」

「神殺しと神核回収を重ねられた今、もう奴らに敵うのはリアン様しかおりません…どうか私達をお助けください…!」

「言われなくてもそのつもりだよ。でも救いたいのは神だけじゃない。前世で報われなかった転生者と追放者達もだよ」

「チート付きで転生させるのは前世で報われなかった人間に限ります。それも今度こそ幸せに生きて欲しいからです!ですが…今はただチート所持者と言うだけで残酷な仕打ちを…彼らに人の心はないのですか…!?」

「持っている神核で転生者の1人を覗いてみたんだ。彼は優秀だったにも関わらずただ暗い性格だったというだけで嫌われあくまで妄想上の好みでしかないのに犯罪者呼ばわりされて来たんだ。だからこそこの世界で幸せになって欲しかった…なのに…」

「彼らは自分達の行いは正義だと語ります。ですがちゃんと罪を犯しているではありませんか!?殺しという罪を!彼らに殺されたチート所持者達が!死刑になるほどを罪を!本当に犯していたと思っているのですか!?」

「しかも転移の神核を利用して地獄に幽閉してるって噂まで流れているみたいだぞ…なんでこんな事ができるんだよ!こんなの…悪夢だ…」

「じゃあさ、終わらせようよ?明けない夜はないんだよ!」

「で、ですが神核狩りはもう手が付けられなくなってしまっており」

「違うよ?皆が敵わなくても私は…私だけは違う!」

私は全知の神核を使用した。

「【ラプラス】私達が神核狩りと戦ったとしたらどれくらいの確率で勝てるか教えて?」

【一切の例外無く仲間達全員が全力を出し切れば99.99%神核狩り共を根絶できます。ですので絶対に躊躇しないでください】

「ほらね?明けない夜なんてないんだ!私達は明日を掴み取れる。だから安心して?」

「リアン様バンザイ!リアン様に栄光あれ!」

「不甲斐ない私達を導いてくださいリアン様〜!」

「待っていろよ神核狩り共め!必ずリアン様が地獄にぶち落としてくださるからな〜?」

なお【ラプラス】の提示した勝率はあくまで今生き残っている仲間全員が全力を出し切れた際の勝率であって。神核狩りの作戦によって虐殺され続ける事でこの確率に保つ為に必要な仲間がいなくなった事で勝率が0%にまで激減して結局惨敗する事を彼らは知らない。

奇跡を起こすのはあくまでヒーローの専売特許なのだ。

悪党に奇跡を掴み取る力なんて幾ら神核を所持していようが存在しないのであった。

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