彼女は俺を貪り、俺は彼女に酔う

 浴衣に着替えた後、俺達は手を繋いで浴場に向かった。


 木造建築なので、夏は涼しく、冬は寒い。


 浴衣を着ていても肌寒いのは、夏が終わって冬が近いからだ。


 季節の変わりは、予想以上に早い。


 俺と澪はより、お互いを知って今はトロピカルイチャイチャラブラブカップルだ。


 ……自分で言っていて、なんだか恥ずかしい。


 普通にラブラブカップルと言ったらいいのに……俺は、トロピカルとか、イチャイチャとより強く言う。


 それだけ澪との生活が幸せだからかもしれない。


 隣に歩いている、澪はいつもより色っぽい……というか、エチエチに見える。


 温泉浴衣は祭りの浴衣と違って、あまり何枚も着ないのだ。


 澪の体肌が、チラチラ見える。


 もし、この浴衣の帯を少しでも緩めたら……彼女の胸だけじゃない、彼女の鎖骨から腰、お尻から脚……って、俺は何を考えているんだ!!


 これから混浴温泉なんだぞ……少しは落ち着け。


「どうしたの、青?」


 澪は俺の様子がおかしかったのか、顔を窺うようにキョトンと首を傾げる。


 既に火照った顔を浮かべているので、俺の本能を刺激していた。


「あ、えっと……温泉、どんなものかなぁ、て」


「そうなんだ。私も楽しみ……青との混浴」


 澪は胸を押し付けるように、ムギュっと抱きついている。


 彼女の熱くて甘い体臭が漂ってきたので、落ち着いていた体は再び理性を失いそうになっていた。


 ……わざとに見えない。


 天然なのかな……今の彼女はどこか頭がぽわぽわしているに見える。


 幼い色気……透明感のあるアイスクリームでも舐めているのか……現実、夢の境界を彼女は歩いているみたいだ。


「澪、ちょっと休む?顔、すごく……蕩けているよ?」


「えぇ……そうかなぁ……私はいつも通り……えへへ……」


「そ、そっか……」


「ねえ、そんなことよりもさぁ……もうちょっとだけムギュっと抱きついていい?」


「あ、ああ……いいけど」


「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて……むぎゅ~」


 澪はより強く俺の腕に抱きついて、ムギュっとしてくる。


 旅館に向かう途中もイチャイチャラブラブしていたのに……先程よりもねっとりと甘えてきた。


 温泉まで後少し……俺は全身に熱を帯びながら澪と一緒に歩いく。


 本当に理性を失わないか、心配だ。


 脱衣所に着くと、俺達は男女別に分かれて、浴衣を脱ぎ、タオルを巻いた。


 俺は先に浴場の方で、彼女を待つことにした。


 いろいろ、心の準備をしたかったからだ。


 これから、タオルを巻いた澪が来る……。


 心臓の鼓動は落ち着かない。


 ドキドキして、汗もかいている……体もどこか震えている。


「……温泉……澪と一緒に混浴……」


「ふふ……だ~れだ?」


 いきなり後ろから俺の目を手で覆った。


 細くて柔らかい感触……甘い匂いも漂っている。


 可愛らしくて、どこか優しい声……澪だな。


 というか、この旅館は俺達だけが貸し切りなので、お風呂場にいるのは澪しかいない。


 まあ、そんなこと言っら可哀想なので、わざとらしく話を合わせた。


「誰かなぁ……この甘い匂いとか柔らかい感触……どこかの誰かさんに似ているなぁ」


「へぇ、そうなんだぁ……じゃあ、これだったらわかる?」


 澪はいきなり、俺の背中に柔らかくて大きい胸を押し付けてきた。


 タオル越しとはいえ、ムニュっとした感触は伝わる。


 え、これ……ちょ……ヤバいよね。


 タオルを巻いているのに、タオルの感触がない。


 胸の柔らかさ、大きさがわかる。


 すげぇ……俺の彼女、本当に凄いよね。


「えっと……あ、わかった!!澪でしょ?」


「じゃあ、答え合わせしよっか。この状態で、温泉に向かって歩くよ」


「わ、わかった……背伸びしながら歩ける?俺の方が身長高いから、目を手で覆うのも大変でしょ?かなり腕を伸ばしているんじゃない?」


「むぅ……いいから、歩いて」


「可愛い……」


 俺は澪のプくっとした表情が目に浮かび、可愛すぎて自然と笑みが溢れた。


 それから前に歩いた。


 澪が後ろから俺を導くように、体を後ろから密着させながら支えてくれる。


 歩くたびに、彼女の甘い吐息、柔らかい胸の感触が背中に伝わってきて……よけいに落ち着かなかった。


「じゃあ、ここで脚をゆっくりと上げて……お湯に入れて」


「あ、温かい……」


「腰を下げて、温泉に体全体を浸けて……」


「……あったけぇ……というか、熱い!!」


「ふふ、じゃあ手……離すね」


 俺が温泉に入ると、澪は俺の目から手を離す。


 すると、静かに後ろで温泉に入る音がして、澪も温泉に浸かったことに気づいた。


「え、ちょ……う、後ろにいるのって、澪だよね!?」


「……ゆっくり、顔だけ後ろに向けて」


 澪は後ろから俺を抱きながら耳に囁く。


 耳から伝わる、彼女の息遣いが俺の体を震わせ、心の底が燃やされるような感覚を覚えた。


 顔を更に熱くさせている……色んな意味で俺もヤバイな。


 静かに俺は後ろを向いた。


 すると、そこにはこの世の全てを魅了させる美少女が温泉に入っていた。


 透き通るような青い目は、いつもより潤んでおり視線はトロッと熱を帯びている。


 桜色に彩られた綺麗な唇、秋の夕暮れのような赤い頬、耳も全体的に濡れていた。


「み、澪……」


「えへへ……最初からわかっていたでしょ?」


「それはもちろん、君の声、温もり、感触を間違えることなんてないよ……ただ、その……髪型、変えたんだ」


「あ、お団子でしょ?青って、この髪型好きだったよね?ほら、うなじが見えるよ?」


「澪、ありがとう。凄く可愛いよ……けど、俺が既に興奮していること知っていて、お団子ヘアにするのはズルいと思う」


「前にも言ったでしょ?女の子はずるい生き物だって……青って、今……興奮しているの?」


「……そうだよ?今だって、かなり理性を削られているからね……」


「そっかぁ……じゃあ、青のことめちゃくちゃにしようかな……」


「え、なにを言って……」


「こっちに、体も向けて……」


「そ、それはマズいって!!み、澪………」


「いいから……向けて」


 澪は先程よりも甘くて可愛い声で囁く。


 その声は理性をくすぐり、本能を刺激する。


 いつの間にか俺は、体を自然と後ろに向けていた。


 すると、俺の視界には白いタオルを綺麗に巻いて、こちらに体を向けている澪がいる。


 白くてスベスベな肌、綺麗な赤茶色の髪にわずかな水滴がついており、雫が垂れていた。


 華奢な体型にもかかわらず、大きい胸がタオル越しでもわかるぐらい強調されている。


 透明な水滴が鎖骨から谷間に向かって落ちていく。


 目線は胸だけにいくが、細い腰のくびれ、大きいお尻もタオルを巻いているはずなのに、はっきりと見えた。


 タオルの下からムチッとした太腿、綺麗な脚が見えている。


 夢のような美しい光景を目の当たりにして、俺の理性はあっさり陥落した。


「み、澪……」


「青、私の体……どう?」


「すげぇ……キレイです」


「ふふ、良かった……けど、他にはないの?」


「え、エチエチです」


「もぉ……エッチだなぁ。けど、ありがとう。ようやく、私の体見てくれたね。タオル巻いているから、裸じゃないけど………」


「全然大丈夫です!!というか、今タオル取ったら、俺……自分を見失うかもしれない」


「えへへ……タオルとってもいいのに……」


「大丈夫って、言ったよね!?」


「冗談だよ……けど、今からそんなことも言っていられないくらい、青のことめちゃくちゃにしてあげるね」


「な、何をするんだ……」


「ほら、背もたれあるから、そこに座って」


「あ、ここだな」


 温泉の外周付近に背中を預けた。


 すると、いきなり澪は俺の太腿に跨り、首に腕を回してくる。


「な、ななななななな何をしているんだ!?ちょ、落ち着けって澪……」


「青……私、今日の朝から……興奮していたんだよ?」


「え?」


「一緒に混浴温泉……青と一緒に二人きりの温泉で蕩けることをしたいな……って、考えていたんだ」


「マジか」


「けど、青は全然キスしたり、腰に手を回してくれなかった……着替える時も別々だった」


「あ、あれは……心の準備……というか」


「私、もう……待てない……早く青と……ちゅうしたい」


「澪……ご、ごめん。わかった……君に寂しい想いをさせたお詫びに……今日はその……いつもより長くキスしよう」


「え、本当!?息がむずかしくなるぐらい、青とねっとりキスしていいの!?」


「そ、そこまでは言って……むぐっ!?」


 澪はいきなり顔を近づけて、俺の唇を奪った。


 彼女の舌が俺の舌に絡みつき、蕩けるような甘いキスをする。


 ムギュっと抱きついて、体を密着させた。


 澪の柔らかい体の感触、甘い味、甘い匂い……俺の理性は乱されて、自然と彼女の腰に手を回している。


「はむ……れろ、んちゅ……んんっ……」


「んぁ……み、澪……お、落ち着いて……むぐっ!?」


 澪は容赦なく舌を絡めながら、吸い付いたり、さりげなく甘く噛んでくる。


 貪るように味わうような……甘くて蕩けるようなキスによって、俺の理性は失っていく。


「あ、あぅ……っ……ッ……」


「れろ……んっ……あお……好き……ちゅ……んぷっ……」


 澪は柔らかい胸を擦らせてきた。


 胸板にムニュっと、彼女の柔らかさ、温かさなど伝わって……頭が……おかしくなっていく。


 こんなに大胆なことをされるのは、今日が初めてだった。


 腕に抱きついたり、膝枕をしながら前屈みになって、胸を頭とか顔に押し当てたりとかはあったけど……今のはどれよりも刺激が強い。


 強引で俺を欲しがるように、舌も体も絡ませてくる。


 どんどん理性は蕩けていき……全身が澪の熱によって帯びていく。


 そろそろ、本当に……息が……これ、かなりヤバいかも……。


 なんとか澪のキスを振り切り、離れた。


「ぷはぁ……あ、青……なんで、唇を離すの?」


「だ、だって……ぁ……はぁ……はぁ……こんなに舌を貪られたら……のぼせちゃうよ」


「そんなの知らない……私、青のこと好き……青の味……匂い……全部知りたいの」


「俺も澪の事を愛している。だけど……少しは休憩……」


「私をこんなにエチエチな女の子にしたのは、青なんだからね?青があまりもかっこいいこと言うから……前よりも男らしくなったから……今だって、腹筋すごく割れてる……こんなの見たら、雌になっても仕方ないよ」


「言い方……雌って……」


「だから、もうちょっと私を抱いて……旅行が終わっても……私を愛して……」


「わ、わかった……わかったから……と、とりあえず、体でも洗って……」


「それは後でもいいでしょ?ほら、舌を出して」


「お、俺はもうちょっと休憩……ん"っ!?」


 澪は俺の口に舌を入れてきた……先程よりも強く吸い付いて、甘く噛んできた。


 舌の表面から裏、横……余すことなく味わい尽くされる。


 彼女のタオルはめくれそうになって、胸が見え……って、今はそんなことも考える余裕が無い。


 澪に貪られる感覚に落ちていく。


 体もどこか痙攣して頭がポカポカする。


 この状況に幸せを覚えて、体を澪に委ねていた。


 温泉に行くまでのドキドキとか、心の準備とか……そういったものは既に消えて、今は彼女の甘い蜜、舌の感覚、匂いに酔っていく。


 すると、澪は唇を離して俺の頭を撫でながら、ニコっと笑みを浮かべる。


「ふふ、青……可愛がってあげるからね」


 彼女の吐息が耳をくすぐる。


 その囁きは温泉の湯気と共に、俺の耳の中に入っていき、思考能力が終わりを迎えた。


 先程まで何を考えていたのか、それすらも忘れて……静かに蕩けている。


 澪は俺の顔を見て、舌なめずりをしながら先程よりも蕩けるようなキスをしてきた。


 温泉は女の子の本能を刺激する……そんな場所だったことを、もう少し早く気づくべきだったかな。


 けど、本当の澪が見れたようで、なんだか安心した。


 温泉に誘って、良かったな……。


 それから俺は澪という甘い快楽に酔っていくのだった。

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