俺の理性は弱い

 それから俺達はキッチンに行き、澪は朝ご飯を作っていた。


 今日は、野菜スープ、スクランブルエッグ、アップルパイのようだ。


 澪は俺のダボダボtシャツにズボンの服装で朝食を作っている。


 料理している時の後ろ姿を見るのは新鮮で、彼女が俺に朝ご飯を振る舞ってくれるとは夢のようだ。


 澪は綺麗な赤茶色の髪をポニーテールにして、まとめている。


 白くてスベスベなうなじに……俺は思わず、興奮した。


 昨日の夜、彼女のうなじをペロペロしたり、キスした時の甘い吐息とか、蕩けた表情……マジでエチエチだったなぁ。


 朝からそんなことを考えていると、澪が俺に気づいた。


 彼女は少し恥ずかしそうにしながらも、笑顔で俺に声をかける。


「ちょ、ちょっと恥ずかしいね。あ、もうすぐできるから楽しみにしていてね」


 その笑顔は朝日よりも眩しい……俺の脳を焼き尽くした。


 澪の可愛さにやられて、心はよりドキドキする。


「あ、うん……」


 俺はいつの間にか椅子から立ち上がり、静かに澪に近づいた。


 料理を楽しげにしている彼女からは、甘い香りが漂って、本能を刺激する。


 どうしよう……朝から俺、澪に発情しているかも。


「生地はこのくらいでいいかな。あとは……きゃっ!?」


 澪は可愛らしい声をあげた。


 俺が彼女に後ろから抱きついて、うなじに顔を埋めていたからだ。


 澪はムスッとした表情でこちらに振り向いた。


「もぉ……料理中に抱きつかないでよ、危ないでしょ」


「ごめん……澪が可愛くて、つい……」


「仕方ないなぁ……今、アップルパイの仕上げをやるから、もうちょっと待って」


「それまで、うなじの匂い嗅いでいていい?」


「な、なに考えてんの!?昨日の寝汗で変な匂いするから……」


「え、良い匂いだけど……すんすん……」


「ひゃう!?ちょ、やぁ……ぁ……んぅ……くすぐったいからぁ」


 澪は料理器具を台所において、正面を向きながら頬を赤くしていた。


 体をモジモジとさせながら、切なげに潤んだ瞳で俺を上目遣いでさりげなく見てくる。


 あ、やばい……この体勢、澪のお尻に……俺のアレが当たった。


 え、ちょ……これ、ヤバい!!


 立った状態で後ろから抱きついた場合を考えていなかった。


 ただ、彼女に抱きついて甘い匂いとか肌の温もりを楽しみたかった。


 だけど、まさか別の部分が尻に当たって変な気になってしまう……どうしよう……オスの本能が刺激されて、自分を見失う。


 男の心を乱すのは、胸だけじゃない、お尻だということだ。


 ……って、俺は何考えているんだよ!?


 澪は俺の彼女だぞ!!


 付き合いたてのカップルがいきなりこんな……トロピカルでエチエチな朝を迎えるわけないだろ!!


 とにかく、今は俺の理性が危ないのでなんとかしよう!!


 このままだと、澪に何をするかわからない。


 俺は澪から離れた。


「ご、ごめん……!!え、えっと……」


「……ねえ、青」


 澪はモジモジしながら、体をこちらに向けて、火照った顔を浮かべていた。


 腕を手で握りながら、上半身を少し揺さぶって落ち着きがない。


 あ、これヤバい……澪に気づかれた。


「何でしょう!?」


「お、お尻に……なんか硬いものが……え、な、なんで……?」


 顔を赤くしながら、俺のズボンを静かに見つめている。


 俺から伝えるしかないのか?


 けど、しかしここで俺が澪の尻で興奮したなんて言ったら……。


 どうしよう、そうなったら俺……たぶん泣くだろう。


 これは少し言葉を濁していこう。


「えっと……澪が可愛くて、……というか魅力的な尻だったから……その……つい……」


「そ、そうなんだ……えへへ……」


 澪はなぜか嬉しそうに笑った。


 普段より今日は彼女が妖艶に見える。


 表情が予想以上だったので俺は驚いた。


 え、どういうことだ……澪は俺が彼女のお尻に興奮したことを喜んでいるのか。


 ……そんなわけない。


 澪はたしかに昨日からかなり、大胆な性格がより強くなった。


 けど、いきなりここまでエッチな女の子に変わるだろうか。


 もしくは、俺のアレが……澪をエチエチな女の子に……って、高校生カップルの恋愛を既に超えているじゃないか!!


 とにかく落ち着かせよう。


「み、澪……あ、朝ご飯……」


「青、顔赤いよ?汗も凄い……大丈夫?」


「だ、大丈夫!!むしろ、澪の方こそ大丈夫か?顔とか耳……俺よりも赤いぞ!?」


「ふぇ!?そ、そんなこと……むぅ、青のせいだからね……恋を知ったばかりの女の子に……あ、あんな……モノを……」


「もうその話はいいから!!お、俺……昨日の洗濯物見てくる!!」


 あまりにも恥ずかしくて俺は洗面所まで走った。


 今の澪と話していると、さっきの柔らかい感触とか香りが思い浮かぶ。


 やばい……澪の表情、完全に蕩けていた。


 昨日の夜、彼女の首を舐めていた時に見たのと同じ表情……男の理性とか本能を刺激するものだ。


 洗濯していた、澪の浴衣を手に取り、外に干した。


 俺の着物も干しながら、外を見る。


 感情を落ち着かせるには、別のことをしたり、自然を見る方がいい。


「……そろそろ、できたかな」


 俺はキッチンへ向かった。


 すると、澪は料理をテーブルにおいて、こちらに気づいた。


「あ、青……えっと、できたよ?」


「お、おう……ありがとう、澪……その、さっきは本当にごめん」


「私の方こそ、ごめんなさい。なんだか、昨日青と恋人同士になってから色々な感情とか興奮が溢れておかしくなっていたかもね。寝たら、すぐ落ち着くかなって、思ったけど……うまくいかないね」


「そっか……俺もそうなんだ。昨日、澪と恋人同士になって、家で一緒に過ごすことになってから理性が乱れていたんだ。今だって、ドキドキしているよ」


「青……うん、わかった……お互い様ということで、いいかな?」


「ああ、もちろんだよ」


「えへへ……けど、青がもし……」


 澪は安心した表情を浮かべながらも、胸の前で手をモジモジと動かして、顔を赤くする。


 視線を逸らして、はにかむような表情をしながら、彼女にしてはかなり恥ずかしそうに話す。


「ああいうこと、したかったら……言ってね」


「あ、あああいうことって!?」


「だ、だから……お、お尻に……あ、青の逞しいアレを……当ててもいいんだよ?なんだったら、他のところも触って……」


「朝ご飯にしようかああああああああ!!」


 あまりにも澪が先程よりもトロピカルエチエチ美少女になっていたので、俺は話題をそらした。


 本当に、これからは気を付けよう。


 澪を抱くときは、前の方がいい……これを知れただけでも良かった。

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