お風呂って、いいよねぇ
今から澪とお風呂……ちょっとでも他のことを考えないと俺の理性が削られる。
まあ、タオルは巻いて、浴槽には別々で入れば良いだけのことだ。
「澪……先に風呂に入っていてくれ。その、浴衣を脱ぐ時も一緒にいたら、どうにもならないから……」
「むぅ……わ、わかった。あ、ああああとで……わ、私の裸を見たかったとか言わないでよ?」
「言わないよ。ほら、早く行きなって」
「うん……じゃあ、先に待ってるね」
澪は残念そうな顔を浮かべながら洗面所に入った。
さっきから大胆だよな。
浴衣が濡れて透け透けなのに体を寄せてお風呂に誘ったり、着替える時は別々と言ったら、残念そうな顔をしたり……最後はどう考えても、女の子の反応じゃないよね。
本物の恋人同士になってから、澪がより色っぽく見える。
今までの不安がなくなり、安心したからより大胆に自分をさらけ出してきた。
今の彼女がもしかしたら、本当の澪なのかもしれない。
これまでの彼女は教室で物静かな少女、俺と二人きりだと恥ずかしがり屋であざとい少女だった。
けど、今の澪は二人きりでも恥ずかしさ、あざとさを取り去っている。
むしろ、お風呂どころか着替える時も一緒にいたいと言ってくるのだ。
本物のエチエチ系を超えた……トロピカルエチエチ系になっている。
常に近くにいる彼女が初めて見せた本当の一面を知れたのだ。
何を言っているのかわからないって?
安心しろ、俺もさっきから自分で言っててわからない。
さて、そろそろ澪も風呂に入った頃かな。
俺は洗面所に声をかける。
「澪、いる?」
返事は聞こえない。
どうやら、浴室に入ったようだ。
さて、あとは俺が着物を脱いで浴室に向かうだけ……落ち着け、息を整えろ。
彼女だって今はおそらく、体を洗っているか、浴槽に入っているはずだ。
どちらにせよ、俺は浴室に声をかけて彼女の様子を確認すればお互いの裸が見えちゃうことはないだろう。
「……わかっていても、ドキドキするもんだな」
澪が浴室で裸……洗面所からそんなに離れていないので、余計にドキドキするのは当然だろう。
好きだった女子と形だけの関係から本物の恋人同士になれただけで幸せなのに、彼女が今、俺の家の風呂で裸でいるという……あ、やべ、鼻血溢れそう。
俺は澪用の着替え、自分の着替えを棚に入れる。
男用のTシャツと半ズボンだが、澪は特に気にしないと思う。
けど、俺がいつも履いている下着を澪に用意するのは、どう考えても付き合いたてのカップルがやるようなことじゃないだろう。
すると、彼女はノーパン状態……かなり申し訳ないです。
雨で浴衣ごと下着もビショビショだから、とりあえず洗濯を終えるまでは……あれ、余計にヤバくね?
「……余計なことを考えるな、落ち着け」
俺は頭の中を整理させて、静かに着物を脱いだ後、タオルを下に巻く。
よし…あとは浴室まで歩くだけだ。
右足、左足、右足……一歩ずつ歩くだけで、全身に熱を帯びて心臓の鼓動も激しくなる。
まるで、未知の世界に飛び込むような……これって、今はやりの異世界転生!?
あ、もう最近じゃないか。
と、とにかく……ただ歩くだけだ。
思春期だからといって、それは言い訳にならない。
健全な付き合いからゆっくりと進んで、お互いをより深く知ってから……大人の世界に踏み込むのだ。
俺は浴室の前に立ち、声をかけた。
「……み、澪~!!」
「は~い」
澪の声がドアの向こう側から聞こえる。
どこかのんびりした声で、おそらく体は洗い終え、浴槽に浸かっているのだろう。
一応、確認する。
「体、洗い終わったか~!!」
「うん、終わったよ。今は湯船に浸かって、今日の疲れを癒しているとこ~……ああ、この温度、気持ち良い~」
「湯加減は良さそうで安心したよ。じゃあ、入るけど……本当に今、湯船に入っているんだな!?」
「うん、大丈夫だよ~!!バッチコ~イ!!」
元気な声が外から聞こえ、思わず赤面する。
テンション上がりすぎだろう。
心臓が再び高鳴って前屈みになるが、覚悟を決めてドアを開いた。
シャワーヘッド、鏡、椅子、洗い場が視界に入り、そこには澪がいなかった。
よし、体は洗い終えたようだ。
浴槽は左側にあるので、なるべく左を見ないように俺は椅子に座る。
「み、澪……なるべくそっちは見ないから安心してくれ」
「ええ、なんでよぉ~。湯船に浸かっているから、色々見えないから安心して」
「わかってる……けどね、すぐ近くで澪が裸で入っているというだけで、既に俺の理性はほとんど削られている。後はわかるね?」
「なるほど、だったら早く洗って、今すぐ私と一緒に湯船に入るべきだね」
「……なぜ、そうなる」
「だって、これから私達は本物の恋人同士として今まで以上にラブラブなスキンシップをするわけだから今のうちに慣れた方が良いと思う」
「スキンシップでここまで過激なものは無いと思う!!俺が読んでいるラノベでもヒロインと一緒にお風呂に入る主人公なんて、ほとんどいないぞ!!むしろ、いたらびっくりだね」
「むぅ、言いたいことはわかった。けど、私は青と色々なことしたい。デートもいいけど、今みたいな……ちょっと刺激的なこと」
澪は浴槽に腕を置いて、湯気が立ち昇る中でこちらを見ている。
そういう照れた表情で見ないでください。
これじゃあ、体を洗おうにも洗えないでしょう。
彼女に見られている……湯気はたっていて、下にはタオルを巻いているから大事な部分は見えていないはずだ。
それでも、風呂に入っている恋人に見られながら体を洗うなんて……刺激が強すぎて俺の理性が保てない。
プールの時もそうだったが、澪の体型は本当に整っていて、魅力的だ。
綺麗で可愛いだけじゃなく、素晴らしいものをお持ちだ。
だから、一緒に入ったら俺の心臓が持たないだろう。
「と、とりあえず!!洗い終わったら、俺すぐに出て行くから安心して、お風呂でゆっくりしてくれ」
俺は急いで、髪を洗い、洗顔をした後、体を洗い終えた。
「よし、終わったぞ~!!じゃあ、俺はお先に……」
「もぉ……待って」
椅子から立ち上がり、浴室を後にしようとした瞬間、後ろから澪に手を握られる。
「え、み、澪?ど、どうかした?」
「どうかしたじゃない。可愛い彼女が一緒にお風呂に入りたいと言っているのに、私を置いて逃げないでよ」
「逃げてはいないよ?ただ俺はちょっと先に出て着替えようかなぁ~……って思っただけだよ?」
「嘘だぁ、私に興奮しているのが丸わかりだよぉ~」
「そ、そそそ、そんなことありません!!お、俺は澪が可愛いから一緒に入りたいなんて、そんなこと思っていませんよ」
「……え」
「あ……」
俺は本音を言ってしまい、澪は顔を赤めた。
言っていることと本音がいつも同じ人なんていない。
澪が可愛いから一緒にお風呂に入りたいというのは、本音だ。
けど、それ以前に恥ずかしくて、どうすればよいかわからない。
恋愛経験が皆無だった俺にとって、今日までの澪との恋人生活はすべてが新鮮なのだ。
澪は顔を赤くしながら、俺の背中にもたれかかる。
彼女の柔らかい肌の感触と温もり……あと、柔らかくて大きい胸が押し付けられているんですけど。
え、裸じゃないけど大丈夫なの!?
タオルを巻いているとはいえ、それは見えないようにしているだけだから……それ以外は誤魔化せない。
「青……えへへ、やっぱり一緒に入りたいんだ~?」
「ちょ、み、澪……あ、当たってる!!柔らかくて大きい何かが当たっています!!」
「え~、そうかなぁ?気のせいじゃない?もし当たっていると思うなら、振り向いてみたら?」
「ッ!?」
「ふふ……青の顔、赤くなってるね」
澪はわざとらしい笑みを浮かべていた。
もはや、恥ずかしさなど感じていないのだろう。
むしろ、この状況を楽しんでいる。
どうしよう、振り向いたらどうなるか目に見えている。
彼女のあられもない姿を見て、鼻血どころか倒れるかもしれない。
プールの時だって、紐水着が刺激的すぎて頭がクラクラした。
こういった天然な誘惑をされたら……俺が理性を完全に失った生き物になるのもそう遠くないかもしれない。
今、この状況に一番最適な方法……あ、そうだ。
俺は頬をバカみたい赤くしながら、唇を震わせて澪に提案した。
「う、後ろ向きに入るのはどうかな?」
「後ろ向き?どういうこと?」
「今、澪が俺の背中に胸を押し付けているでしょ?この状態でゆっくりと湯船に浸かれば、お互い裸を見ることなく入れるじゃん」
「同じ方向にお互い前を向けば、向き合うことなく座れるってことだね」
「ああ、その通り!!いいアイデアだろ?」
「別に青になら……見られてもいいのに」
澪は甘い声で囁く。
どこか期待していたかのような、お互いの全てを見せ合うことを望んでいるようにも聞こえた。
すまない、澪……けど、今だってかなり危ない状況なんだ。
彼女と前に向き合って湯船に入ったら、男としての本能が刺激されて自分を見失う。
それは今日までの純愛な俺達の関係を別物にするからだ。
高校1年生なんだから、ゆっくり澪とラブラブしていくなかで、ある程度のスキンシップには慣れてくるだろう。
その後に、大人の世界に踏み込むのだ。
ライトノベルだけじゃなく、現実の恋愛も最初は、お互いを深く知ってからベッドインするのだ。
「澪、そのまま俺に後ろから抱きついた状態で浴槽まで歩いてくれるか?」
「わかった。じゃあ、動くよ~」
澪は後ろから俺に抱きついた状態でゆっくりと浴槽まで移動する。
俺は彼女の足に合わせて動いた。
胸が背中にムニュムニュと当たる感触で、余計にドキドキする。
その後、俺はゆっくりと澪に背中を向けるようにして、彼女と一緒に浴槽に入った。
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