甘いお誘い

 夏祭りは終わり、俺達はいつもの帰り道を歩いていた。


 けど、雨がいきなり降って来たので、急いで俺の家まで走った。


 家に帰って来たころにはお互い、かなりずぶ濡れ状態で浴衣もビショビショになっている。


 玄関前で俺達は着物の袖とか、スカートの裾など部分的な場所を絞る。


 雨水がポタポタと落ちる中、俺は澪の方を振り向いた。


「こんなに降るなんて、聞いてないよぉ……さ、さむ……い」


「ああ……そうだな」


「どうしたの、青?」


 澪は首を傾げている。


 雨に濡れて、綺麗な髪から滴が流れる澪の姿が色っぽく見えた。


 あと、浴衣が水に濡れているからか、肌に張り付いており、太腿や大きな胸が透けて見えていて……可愛いというより、なんだかエロい。


 というか、下着まで見えているんだけど!?


 彼女の着ている浴衣は全体的に白いので、より鮮明に見える。


 下着の色は淡いピンク色だった。


 ものすごく妖艶な雰囲気に、俺は見惚れて心臓がドキドキする。


「そ、その……み、見え……」


「見える?何が……って、あ……」


 澪は自分の状況をわかっていなさそうな様子で、思わず呟いた後……ボンと蒸気を発していた。


 体から一気に熱くなるのを感じた澪は頬を赤くさせてから、その場にしゃがみ込んで胸を両手で押さえる。


「うぅ……うぅ~どうしよう?し、下着透けてるぅ……しかも、青に見らてる~っ……うぅ」


「ご、ごめん!!け、けど……可愛い下着だよ。似合ってる」


「うぅ……めてもらえたのは嬉しいけど、もっと早く言ってよ!!」


「それはちょっと難しいかな。俺だって初めて……澪の下着という素晴らしい物を見れたのだから」


「~ッ!!」


 すると、澪は俺の頬を強く引っ張った。


 小さくて可愛らしい手の感触は優しくて、そこまで刺激は無かった。


 むしろ、怒っている顔が可愛くて自然と表情がニヤける。


「なに、ニヤニヤしてんのよ~!!バカ、エッチ!!青のスケベ!!」


「ご……ごめんなひゃい~!!」


 澪は俺の頬から手を離して、プイッとそっぽ向いた。


 そんな姿も可愛くて、思わず頬が緩む。


「むぅ……もう、青のバカ。エッチ」


「ご、ごめんって」


「じゃあ……私のお願い聞いてくれる?」


「え、あ、ああ……俺にできることなら」


 澪は俺の顔を見てから、少し恥ずかしそうにしながらモジモジする。


 その後、急に近づいて胸板に両手を当てて、体を寄せた。


 自他共に認めるぐらい、この美少女の積極的な姿に……再び胸を高鳴らせる。


「ど、どどどどどうしたの!?み、澪!?」


「ふぅ……すぅ……ん……あ、あの……ね、青とい、一緒に……お風呂、入りたい」


「は、はい!?」


 一瞬、何を言われたか分からなかった。


 あまりの衝撃で口をパクパクとしていると、澪は俺の胸板に顔を埋めながらもこちらに視線を向ける。


 そのまま、色っぽい声で懇願するように言った。


「おね……がい」


「ッ~!!」


 上目遣いで耳を赤くしながら頼む澪に俺の中でハートを撃ち抜かれた。雨で濡れた女の子……浴衣が透けてて、下着を見ちゃったうえに、一緒に風呂に入れる?


 ほんとどうした!?


 むちゃくちゃ魅力的だが、動揺を隠せない。


 これは彼女からのお願いだ。


 たしかに、お互い濡れているのでまずはお風呂に入らないと風邪をひく。


 じゃあ、澪だけを先に入らせて俺は部屋で普段着に着替えれば良い。


 けど、それを提案しても澪はお風呂に入らないだろう。


 だって、何がなんでも俺と一緒に入ろうとして、さっきからこちらの着物を離そうとしない。


 雨に濡れて寒いはずなのに、彼女の体は熱く感じた。


 その熱が俺にも伝わってきて、心臓のドキドキがさらに強くなる。


 もう、覚悟を決めるしかないようだ。


「わかったよ、澪……お風呂、一緒に入ろうか」


「え、いいの?」


「うん、だって……おねだりする澪が可愛すぎるから」


「えへへ、なんか照れくさいけど嬉しい……じゃあ、行こう?」


「あ、あぁ……」


 俺は澪の手を握り、浴室までゆっくりと歩いた。

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