俺の気持ち
青春はたしかに輝いている。
誰かと一緒に何かをして、素敵な思い出を作ることは、人生に影響するだろう。
それに誰かと幸せになりたいから、と考える者もいる。
そんな青春を現実でも叶えている奴がいることを知って、俺は羨ましいと思った。
特に恋愛系のライトノベルを読んでいたからか、実際の恋愛にも興味を持ち、いつか可愛い彼女と一緒に過ごしたい……けど、本当に俺はそれを叶えた後、どうなるのかが気になっていた。
ラノベの主人公だったら、複数のヒロインからメインヒロインを選び、恋人同士になって幸せな毎日を過ごす。
これまでの考え方とか、仕草、性格なども変わらずにいられる主人公……そんな存在に俺はなれないことを知っている。
恋人ができて、調子に乗るかもしれない。
もしかしたら、他の女の子にも手をつける男になって、朝日南をないがしろにするかもしれない。
それは本当の終わりを意味している。
男としても人間としても……だから、俺もさりげなく恐怖を感じていた。
けど、俺は朝日南と恋人同士になって以降、彼女のことしか考えていない。
クラスの女子とか街を歩く同い年の女の子を見ても……朝日南が一番可愛くて魅力的だと思ってしまう。
どんなことがあろうと、俺は朝日南だけを心から愛している。
俺は自分に自信を持てた。
だから、朝日南にも自分に自信を持ってほしい。
「朝日南、俺も君と同様……変わっていく自分が怖かった」
「そう……なの?」
「ああ、もちろんだよ。誰でも変わることを恐れる。初めてできた友達、部活仲間、恋人……どれも魅力的で一緒に楽しく過ごしたい、という気持ちが強い程、自分を見失う。それに比べてライトノベルの主人公は新しい人間関係を築いても、ほとんど変わらずにヒロイン達と過ごしているよね。けど、そんな心を持てる存在になれないよ。性格とか価値観も変わったり、今まで自分が大切にしていた考えを捨てることだってあるかもしれない。それでも前に進まなきゃいけない……現実って、残酷だよね」
「そう……そうなんだよ……だから私は……」
「けど、俺はそんな現実を既に乗り越えられると確信した」
「え、どういうこと?そ、そんなにうまい話あるわけ……」
「朝日南と出会い、形だけでも恋人同士になってから、俺は君のことしか考えられなかった」
「っ!?」
「君と恋人同士になれて、一緒に過ごしていく毎日は何もかもが新鮮で幸せだったよ。学校の屋上、放課後の商店街、水族館、プール……夏祭り、色々な場所で色々なことをした。朝日南が本当はあざとくて、甘えたがりで、エチエチな女の子だってことがわかって……しかも俺だけに見せてくれるんだから、ありがたい話だ」
「ちょ……恥ずかしい……ぅ……ぁ」
俺は勢いにまかせて言っていると……朝日南は茹だこのように顔を赤くして、自分の体を抱き締めている。
ますます愛おしくなった彼女に俺は優しく自分の気持ちを告げる。
「変わってしまうのは確かに怖いけど、俺が本気であることに変わりないよ」
「……望月君は……怖くないの?変わることが……私は怖くて仕方ないの」
「ああ、怖いさ。でも、俺は朝日南と一緒ならどんな色になっても、君を誰よりも何よりも大切に愛する……これからもずっとね。俺がここまで自分に自信を持てるようになったのは、全て君のおかげだよ。本当にありがとう」
「ぐす……どう……して……こんな私にそこまで……思ってくれるの?」
「だって、俺は……」
立ち上がり、目の前で泣いている一人の少女を俺は抱いた。
最後まで言う前に、体が動いた。
今までの気持ちを朝日南に伝えたくて、ただ言葉にするよりも行動で示したかった。
「きゃ!?……あ、望月君?い、いきなり……抱きついてどうしたの……力、強いよ……」
「ごめん。けど、今だけはこうさせてくれ」
俺は朝日南の肩に手を伸ばして掴み、顔だけを彼女に向ける。
今にも顔とか耳は赤くなっているだろう。
体にも熱を帯びて、倒れそうになっているかもしれない。
それでも俺は理性とか恥ずかしさを捨てて、今自分が思っている気持ちを、本気だと分かってほしくて告げた。
「俺は朝日南澪のことが、誰よりも大好きだ!!この世界で一番、朝日南のことが大好きなのは間違いなく俺だ!!俺が特別になってほしいと願う相手は朝日南だけだ!ずっと君と一緒にいたいと本気で思って、本気になっている!!それは今日だけのことじゃない……これからも変わらないからな!!今の俺の姿は、朝日南にどう映ってるかは知らない。けど、俺は君への想いが目減りすることはない。透き通った青い目、艶やかな赤茶色の髪、整った可愛い顔立ちにスベスベな肌、大きくて素敵な胸とお尻……あと、綺麗な細い脚にムチッとした太股……君の何もかもが好きだ!!恥ずかしがり屋のくせに、いつもは俺をからかってあざとい笑みを浮かべるところとか、頬を赤くするところとか……甘えたがりなところも好きだ!!」
「ま、待って!え、もしかして……抱き締めながら体の色々な部位の感想を言ってるの!?あ、あと最後のほうはわざわざ言わなくていいから!!……」」
「……あっ」
まさか心の思いが予想以上に自分の羞恥心を煽るなんて……。
けど、俺は朝日南に……涙を浮かべながらも頬をさっきよりも赤くして話を聞いてくれる少女に全てを言う!!
「と、とにかく!!お、俺は……憧れていた恋愛を叶えた後も朝日南を見捨てることはない。むしろ、君とこれからも楽しく幸せに過ごしたい!!上手く言えなくてごめん、でもこれが今の素直な気持ちだ!!」
言い切った直後……朝日南の両目から雫が溢れ、頬を伝った。
「っ……ぐす……ずるいよ、そんな言い方されたら……さっきまで悩んでいた私がバカみたいじゃない」
「朝日南……」
「あのね……望月君、私は……本当に怖かったの。君と恋人同士になって、今まで以上に君のことを想うようになって、私の知らない君にどんどん惹かれていった。けど、私は……君が思っているような女の子じゃない」
「そうかな?俺は朝日南のこと、優しい女の子だと思っているよ。今だって、俺の恥ずかしい告白を最後まで聞いてくれたじゃん。バカにせず、向き合ってくれた。時々あざとくてエチエチだけど、普段は物静かで落ち着いた女の子だよ」
「わからないよ?望月君の体目的かもしれないじゃん……本当はエチエチじゃなくて、ただの痴女かもしれないよ!?」
「俺は朝日南が思っている以上に、君に夢中なんだ。それに、変わるのが怖いなら、その恐怖……俺に分けてくれないか?」
「な……っ!?……ぐす……本当に、本当に……ずっと私と……一緒にいてくれる?」
「ああ、もちろんだ。もし朝日南が今までの自分を見失ったら、俺が思い出させて、絶対に君のことを見捨てたりしない。何があっても」
俺は朝日南の背中に手を回して、優しく抱き寄せた。
すると……彼女の温もりと心臓の鼓動が直に伝わってくる。
あと、安心したのか先程までの涙声はなくなり、今は俺の胸板に顔を埋めていた。
良かった……気持ちを言えて、良かった。
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