ヤキモチ彼女

 黒髪ロングの清楚系な子、もう一人は金髪ショートでギャルっぽい子だった。


 二人はどこか気まずそうな表情でこちらを見ている。


 というか、二人とも朝日南に負けないぐらいの大きな胸に、しなやかな体の線が美しくわかるぐらい綺麗な体つきをしている。


 金髪ショートの女の子は慌てて、頭を下げた。


「私達……その……邪魔しちゃったみたいで……ごめんなさい!!」


「あ、いえ……大丈夫ですよ。それよりも、どうかしましたか?」


「実はプールで遊んでいる時にハート型のネックレスを落としたんです。この子は赤、私は黄色のペアで……」


「ネックレス……えっと、どのエリアで落としましたか?」


「ここから少し離れた、ウォータースライダーで滑った後、急に見失って……一応、スタッフの方にお願いして水中を探してもらったんですけど、なくて……」


 ウォータースライダーのエリアには無かった。


 ここはウォータースライダーのエリアと繋がっているから、水も一緒に流れているはずだ。


 俺は周囲を見渡す。


 今は客が別のエリアに散開しているので、ここは一番探しやすい。


 堕としてからそんなに時間は経っていないから、まだ近くにあるはずだ。


「……あれ、何か光ってる?」


 俺は手前に流れるプールサイドから、二つの光るものを見つけた。


 赤い……あと、黄色。


「見つけた!!」


「も、望月君!?」


「ちょっと、もぐってくる!!」


 俺はそう言って、急いでダッシュした。


 プールにダイブして、水中の中を潜ってその光る物体を見付ける。


 やはり、二人が言っていたネックレスだ。


 俺はそれを取り、水中から顔を出す。


 その後、朝日南達のところへ帰った。


「見つけたよ。これでいいかな?」


「あ、ありがとうございます!!」


「良かったぁ……お兄さん、ありがとうね。あ、彼女さんとの時間を邪魔してごめんね。おわびに、これあげる」


 黒髪ロングの子は俺に小さい手紙を渡した。


「「じゃあね~!!」」


 二人は元気よく挨拶した後、立ち去っていた。


 俺は手を軽く振って、渡された手紙を見ると、二人の電話番号が書かれていた。


 え、こんなの渡される奴って、かなりのイケメンじゃないと難しいよね。


「なんだか、照れるなぁ……まあ、いいか。朝日南、俺達も遊びに……」


「むぅ……」


 朝日南はプくっとした顔になっていた。


 あれ、どうしたんだろう……めちゃくちゃ可愛い。


「あ、朝日南さん?何か俺、変なことしたかな?」


「さっきの女子……胸おっきかったね?」


「え、まあ……」


「……えへへ、手紙……見せて」


 朝日南は俺の手首をぎゅっと握り、ニコリと笑みを浮かべる。


 ……静かに怒っていることに気づく。


 これは……ラノベによくある、主人公が他の女子と仲良くしていると嫉妬するやつだ。


 え、けど……こんなに朝日南は可愛かったっけ?


 以前の朝日南であれば、このくらいからかってくるだけだった。


 だというのに、水族館でのデート以降、朝日南は積極的になった気がする。


 俺はそんな朝日南も可愛いと思う。


 本当にヤキモチかどうか見てみよう。


「はい、どうぞ……」


「……電話番号かぁ。さっきの子達、わざとネックレスを落としたのかな」


「それはないだろうけど……え、どうしてそう思ったの?」


「望月君のこと狙っていたかもしれないじゃん」


「あはは……まさかぁ」


「とりあえず、この手紙は捨てるね?」


「え?」


「捨てるね?」


 朝日南の表情は笑っているようで笑っていない。


 ちょっと怖かった。


「お、おう……」


 俺は冷や汗をかいて、頷いた。


 すると、朝日南は嬉しそうに笑みを浮かべながら手でくしゃくしゃにした後、近くのゴミ箱に捨てた。


「えへへ、望月君行こう!!」


 彼女は俺の腕に強く抱きついて、指を絡めるように手を繋いできた。


 しかも……恋人繋ぎだったのだ。


 やばい……まさかこんないきなり……めちゃくちゃ嬉しいけど……力が強い!!


 恋人繋ぎって、こんなに力強いものだっけ?


 あと、胸が凄い腕に密着して……肌の感触とかも伝わってくるから超刺激的だ。


 え、でか……え、柔らか!!


「あ、あ……あああ朝日南!?そ、そんなにムギュっとされると……いろいろヤバいような」


「え、恋人同士だったらこのくらい普通でしょ?」


「そ、そうなのかもしれないけど……恋人繋ぎもされて、なんだか俺頭がおかしくなりそう……」


「変な女の子がいるかもしれないから、このくらい体を密着させた方がナンパとかの心配も無いでしょ?」


「たしかに……じゃあ、今日はずっとこのくらい体を近づけて……」


「そうだよ。ふふ、早く行こう」


 朝日南は俺の腕に抱きついた状態で、プールサイドを歩いていく。


 熱を帯びている体同士が触れると……無性にその感触に癒される。


 このままだと正直言って幸せだ。


 ただ、彼女がいつも以上に力強く手とか腕をしっかりと掴んでいるので、夕方頃には手の痕が残っているだろう。


 けど、彼女なりの好意かな?


 だとしたら、俺は本当に幸せだ。

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