女の子のお弁当は愛情でできている
翌日のお昼休み、俺達はいつもの屋上にいた。
購買の弁当を買おうとしたが、朝日南がお弁当を作って来たと言ったので、俺はお言葉に甘えてご相伴になることにした。
最初は驚いた。
朝日南が俺に弁当を作ってくれたこと、料理ができること……彼女らしいことをしてくれたことに。
彼女の手作り弁当は……とても美味しそうだった。
玉子焼きや唐揚げといった定番のものから、アスパラベーコンなど少し手間がかかるものまで入っている。
どれも丁寧に作られていて、見た目も色鮮やかで栄養バランスもバッチリだ。
「本当に嬉しいよ!!お、女の子に弁当を作ってもらえるなんて、ほとんどの男子が憧れるシチュエーションだからな!!」
「そ、そう……それは良かったわ。というか、そこまで大げさに反応するところなの?」
「ラノベ主人公ぽいじゃん!!」
俺は目を輝かせて彼女の手作り弁当を見る。
朝日南は恥ずかしいのか、別の方を向いたり、こちらに向いたりと落ち着かない様子だった。
「それじゃあ、いただきます」
「どうぞ召し上がれ……」
俺は玉子焼きを箸で掴み、口に入れる。
その瞬間、口の中に甘い味が広がった。
とても優しい感触……温かい。
次に唐揚げを食べると……これも美味しい!!
外はカリッと中はジューシーでしっかりと下味がつけられている。
アスパラベーコンも一口食べると、これもまた絶品だった!!
シャキッとした食感に塩コショウの加減がちょうど良い。
「うま~!!」
「ふふ、なんだか子供みたい」
「だって、本当に美味しいよ!!朝、早く起きて作ったの?」
「ええ、そうよ」
「そっか……ありがとう朝日南」
「あ……どういたしまして」
朝日南は照れながらも、自分の弁当に手をつける。
最近だが、よく顔を赤くするようになった。
普段はからかわれて俺だけが顔を赤くしていたけど……今は、彼女も顔を赤くする。
なんだか、カップルみたいだ……みたいじゃなくてカップルなんだけどね。
朝日南が作ってくれた弁当はどれも美味しくて、あっという間に完食した。
「ごちそうさまぁ……」
「お粗末さまでした」
彼女は微笑みながら、俺の頬についていたご飯粒を手で取り……そのまま口にする。
その仕草がとても可愛くて、顔、耳まで赤くなった。
「ちょ、朝日南!?」
「ふふ、ご飯粒がついていたから」
「い、言ってよ……」
「あら、私は望月君の彼女よ。これくらいのスキンシップは普通じゃない?」
ニコニコとしながら、彼女は弁当を片付ける。
スキンシップか……確かにそうかもしれないな。
け、けどね……それだけでもドキドキするんだよ。
朝日南と恋人同士になってから、何もかもが新鮮だ。
けど……最近思うことがある。
アクセサリーショップでの買い物以降、全然男らしいところを見せていない。
それに、彼女が俺を選んでくれた本当の理由を知りたい。
俺が他の男子よりも特徴的、魅力的だといったが、全然わからない。
自分をそこまで卑下することはないだろうけど……こんな普通以下の男子高校生を、彼女はなぜ選んだのか。
「あ、あのさ……」
「ん?どうしたの?」
朝日南はきょとんとした顔でこちらを見る。
恋人になってから、数週間経過しても俺達はお互いに知らないことの方が多い。
だから、もうちょっと俺から誘うべきなのだ。
「今度の休日……い、一緒に映画とか…どうかな?」
「映画?別に良いけど、どんなジャンルのやつなの」
「そ、それは……あ~その……色々」
「色々……うん、いいよ」
「本当!?」
「ええ、私も映画はそれなりにみる方だから。それに……望月君が勇気をだして誘ってくれたんだから、彼女としてそれに応えるのが当然でしょ」
「あ、ありがとう……」
なんだか、安心した。
そうだ……朝日南は俺をからかうけど、バカにすることはなかった。
いつも向き合ってくれる。
今日だって、俺にお弁当を作ってくれた。
俺は朝日南の優しさに甘えてばかりだな……。
けど、いつか朝日南の方から甘えてほしい。
今度のデート、かっこいいところ見せてやる!!
そんなことを考える昼休みだった。
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