第2話 初めての感情日記

翌朝、あきらは目を覚ますと、昨日の出来事がまるで夢のように感じられた。しかし、机の上に置かれたノートとペンが、現実のものだと教えてくれた。昨日、宮田さんに勧められて始めた感情日記。彼はそのノートを手に取り、昨日の続きを書こうと決心した。


ペンを握る手は少し震えていたが、あきらは深呼吸をして心を落ち着かせた。そして、最初に何を書くかを考えた。宮田さんに会ったこと、彼女の優しい笑顔と励ましの言葉。それらが彼の頭に浮かび、自然とペンが動き始めた。


「昨日、訪問ヘルパーの宮田さんが来てくれた。最初は緊張していたけれど、彼女の温かさに触れて少し安心した。感情日記というものを勧められ、試してみることにした。今まで誰にも言えなかったことを少しずつ書いてみようと思う。」


書き始めると、不思議と次々に言葉が浮かんできた。あきらは自分の感情や過去の出来事を素直に書き綴った。書くことで少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。


その後も、あきらは毎日少しずつ日記を書き続けた。最初は短い文章だったが、次第に詳細な感情や経験を記録するようになった。日記を書くことが彼の日常の一部になり、心の整理をする重要な時間となった。


ある日、宮田さんが再び訪れた。あきらは彼女に感情日記の進捗を見せると、宮田さんは喜んで読んでくれた。


「すごいですね、あきらさん。本当に頑張っていますね。これだけのことを書き出せるのは大きな一歩ですよ。」


宮田さんの言葉に、あきらは少し照れながらも嬉しさを感じた。


「実は、これを公開してみたいと思ってるんです。誰かに読んでもらえたら、何か変わるかもしれないって思って。」


あきらの決意を聞いた宮田さんは、にっこりと微笑んだ。


「それは素晴らしい考えですね。公開することで、新たな繋がりや共感を得られるかもしれません。まずは小さな一歩から始めてみましょう。」


そのアドバイスに従い、あきらはインターネット上でブログを開設し、自分の感情日記を投稿することにした。初めての投稿は、自己紹介と感情日記を始めた経緯だった。投稿ボタンを押す瞬間、緊張と期待が入り混じった感情が彼を包んだ。


「よし、これでいいんだ。」あきらは自分にそう言い聞かせながら、投稿を公開した。


その夜、彼はパソコンの前でコメントを待ちながらドキドキしていた。数時間後、初めてのコメントが届いた。それは、同じような経験を持つ人からの温かいメッセージだった。


「あなたの日記を読んで、私も救われました。ありがとう。」


その言葉に、あきらは胸が熱くなった。自分の経験や感情が誰かに届き、共感を得ることができた。これが彼にとっての大きな励みとなり、これからも感情日記を書き続ける決意を新たにした。


あきらの新たな一歩は、確実に前進していた。宮田さんとの出会いをきっかけに始まった感情日記が、彼を少しずつ外の世界へと繋げていく。その道のりはまだ始まったばかりだが、あきらの心には確かな希望が芽生えていた。

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